エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.974
2021.03.12 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
ベンチマークのラストは、消費電力をチェックしていこう。アイドル時は起動直後10分間放置した際の最低値を、高負荷時は「CINEBENCH」系ベンチマーク実行時の最高値を採用している。
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コア数が2倍に増えている他、メモリコントローラやPCI-Express4.0のレーン数が強化されていることもあり、アイドル時の消費電力はRyzen 9 5950Xより約25W上昇。さらに高負荷時はTDPの差(175W)を超える約200Wもの差がついた。ただし、このクラスのCPUで消費電力を気にするのは野暮というもの。今回はCPUクーラーにENERMAX「LIQTECH TR4 II 360」を使用しているが、CPUの温度は65℃以下に保たれており、冷却のハードルに関しては従来のRyzen Threadripper 3000シリーズと同じと考えて良さそうだ。
Ryzen Threadripper PROの中では、ちょうど中間に位置づけられるRyzen Threadripper PRO 3975WX。それでもマルチスレッド処理では、メインストリーム最上位Ryzen 9 5950Xを6割前後上回る。さらにメモリ帯域では約3.9倍と圧倒しており、大量のデータを同時に扱うことになる高解像度レンダリングや、大規模データ解析では大いに力を発揮してくれるだろう。
またシングルスレッド性能についても、さすがにRyzen 9 5950Xには及ばないが、メインストリーム向けミドルレンジとは十分に渡り合うことができるパフォーマンスを発揮。ゲームについても、フルHDクラスの解像度でリフレッシュレートを追求するような使い方をしなければ、全く問題ないレベルだ。
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マルチスレッド性能を重視したワークステーションでは、シングルスレッド性能が振るわないのが当たり前だった。しかし、Ryzen Threadripper PROでは、ゲームやオフィスアプリケーションでも十分な性能が期待できる |
唯一残念なのが、プラットフォームが変更されたばかりのRyzen Threadripper 3000との互換性がなくなってしまったこと。たしかに8チャネルの広大なメモリ帯域は魅力だが、コアアーキテクチャやコア数には違いがないため、マザーボードを買い替えてまで購入するメリットはそれほど大きくない。
一方、Ryzen Threadripper 1000/2000や、IntelのHEDT環境を使っているなら、CPUやメモリの性能に加え、バスインターフェイスもPCI-Express4.0に対応するなど、その違いは大きい。マザーボードのコストを考えても十分魅力的な選択肢になるだろう。
協力:日本AMD株式会社