エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.978
2021.03.30 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
続いて、消費電力とCPU温度をチェックしていこう。アイドル時は起動直後10分間放置した際の最低値を、高負荷時は「CINEBENCH」系ベンチマーク実行時の最高値を採用している。
8コア/16スレッドのCore i9-11900Kだが、高負荷時の消費電力は10コア/20スレッドのCore i9-10900Kより20Wも増加。さらに8コア/16スレッドのRyzen 7 5800Xとの比較では約80Wもの差が付き、「Cypress Cove」アーキテクチャのワットパフォーマンスはかなり悪いと言わざるを得ない。
そして「Adaptive Boost Technology」を有効にすると消費電力はさらに120Wも増加。CPUの温度も360mmラジエターの水冷ユニットを使用しているのも関わらず100℃に迫る数値を記録した。一方でパフォーマンスは最大でも4%前後しか上がらないことを考えると、利用するシーンは限られるだろう。
テストセッションのラストは、「第11世代Intel Coreプロセッサ」の内蔵GPUの性能を3DMark Fire Strikeと3DMark Time Spyで確認しておこう。
Core i9-11900Kの「GPU-Z 2.38.0」の結果。未だ正確に情報を取得できていないが、内蔵GPUはIntel Xe GraphicsをベースにしたIntel UHD Graphics 750で、実行ユニット数は32基 |
Core i9-10900Kの「GPU-Z 2.38.0」の結果。内蔵GPUは実行ユニット数24基のIntel UHD Graphics 630 |
「Time Spy」では約34%、「Fire Strike」では約54%もスコアが向上し、内蔵グラフィックス機能は大幅に強化されている。ただし、デスクトップCPUでは最速のGPUを内蔵するRyzen 4000Gシリーズに比べると6割前後の性能で、過度の期待は禁物だ。
10nmプロセスの「Sunny Cove」を14nmプロセス化することで、IPCを高めつつ高クロック化を図った「第11世代Intel Coreプロセッサ」。確かに「第10世代Intel Coreプロセッサ」に比べるとシングルスレッド性能は向上しているが、Ryzen 5000シリーズと比較するとほぼ同等といったところ。Intelが有利と謳うゲームシーンでも大きな差はなく、特に高リフレッシュレートを狙う場合では従来モデルよりも落ち込んでしまうシーンもあった。
さらにマルチスレッド性能についてはコア数が減ったデメリットが大きく、軒並み性能が低下。ギリギリで追加されたブースト機能「Adaptive Boost Technology」も消費電力や発熱の割に効果は小さく、12コアや16コアモデルが用意されているRyzen 5000シリーズには全く歯が立たない。
「Intel Xe Graphics」ベースになり高性能化された内蔵GPUや、Thunderbolt 4、PCI-Express4.0、Wi-Fi 6Eといった最新インターフェイスに魅力を感じないのであれば、敢えて「第11世代Intel Coreプロセッサ」を選択するメリットはないだろう。
ここ最近苦戦が続いているIntelだが、「第11世代Intel Coreプロセッサ」を検証した限り14nmプロセスのまま戦うのは限界に来ている。この現状を打破するには、少なくとも10nmプロセスを採用する次世代CPU「Alder Lake」の登場を待つ必要がありそうだ。