エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.994
2021.05.07 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
実際のゲームシーンではどのように挙動が変わるのか。続いてMMORPGの人気タイトル「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ」の公式ベンチマークテストを動作させ、その際の結果を見ていくとしよう。グラフィックス設定は「最高品質」、解像度は3,840×2,160ドットを選択し、ベンチマークをループで30分間動作させている。
いまではやや軽めのベンチマークテストということもあり、4K解像度ながら消費電力は最大503Wに落ち着いた。「3DMark」ともそれほど変わりなく、電源容量の6割程度の負荷がかかっていたことになる。
テスト開始時の挙動がこれまでと異なるようで、12Vの最大値が一瞬わずかに上振れ。最小値はこれまでと変わりなく、定格を基準にした全体の変動幅も1.3%程度だった。一般的にATX電源は5%までの電圧変動が許容されていることを考えれば、その差はほんのわずかだ。
また、今回はほぼ11.986Vで動作しており、ロード中のグラフ変動は極めて少ない。ゲーム系ベンチマークではグラフにさざ波のような変動が現れることが多いところ、「Ion Gold 850W」にその傾向はない。
最後は先ほどより負荷の大きなゲーム系のベンチマークテストとして、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」の公式ベンチマークを実行。解像度を3,840×2,160ドットのカスタム設定にて、最も負荷が大きくなるよう項目を選択し、これまで同様に30分間の検証を行った。
「FFXIV」より重い処理を必要とするタイトルとあって、消費電力は最大539Wまで上昇した。もちろん850Wの「Ion Gold 850W」にとっては6割ちょっとの負荷であり、余裕は十分にある。
そしてテスト結果の方は、スタートの際にやや上振れするのは先ほどの「FFXIV」と同様。下振れの数値がこれまでより大きいものの、それでも全体の変動幅は1.7%程度に収まった。何よりロード中にほぼ11.933V張り付きで動作しているブレのなさが印象的で、その挙動は極めてフラットなグラフ波形と近似の平均値(11.928V)が証明している。強力な負荷がかかってもまったく揺るがない優れた安定動作は、「Ion Gold」の圧倒的な信頼性によるものだ。
さすが80PLUS GOLD認証モデルの中でも高価格帯の製品とあって、「Ion Gold」シリーズの安定性は1段レベルが違う印象だ。上位の80PLUS認証製品とは変換効率が異なるとは言え、ここまで挙動にブレがなく安定した電源ユニットはそう多くない。純粋に“電源ユニット本来の機能”を追求するなら、高品質な「Ion Gold」シリーズは注目の選択肢と言える。
高級モデルの「Ion+ Platinum」シリーズも同様の性質をもった製品だったが、80PLUS GOLD認証モデルの「Ion Gold」シリーズの方が、まだしも手を伸ばしやすい。PCケースを含めFractal Designで固めたいというファンにとって、「Ion Gold」シリーズのデビューは朗報だ。
ただしその一方で、ラインナップに大容量モデルが不在な点はやや気になるポイント。「Ion+ Platinum」シリーズが発売された当初はグラフィックスカードの省電力化が進んでいたこともあり、むしろ“ほどよい容量ラインナップ”がウリの一つだった。しかしTDP300W超のGPUが幅を利かせている事情もあって、昨今は大容量電源ユニットのニーズが増している。品質に関しては文句なし、より大容量モデルを求めるユーザーに向けて、ラインナップの追加があれば完璧だろうか。
協力:Fractal Design
株式会社アスク