エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.997
2021.05.13 更新
文:撮影・こまめ
「UL Procyon」はアドビのクリエイター向けソフトの快適さを計測するベンチマークテストだ。比較用にクリエイター向けノートPC (Intel Core i7-10870H/32GBメモリ/1TB NVMe SSD/NVIDIA GeForce RTX 3070)の結果を含めている。
「Photo Editing Benchmark」は画像加工に関するテストを行なう。「Image Retouching」は「Adobe Photoshop」メインでGPU性能が影響しやすく、「Batch Processing」は「Adobe Photoshop Lightroom Classic」メインでCPUとストレージ性能が影響しやすい。「Video Editing Benchmark」は「Adobe Premiere Pro」を使ったテストで、フルHD (H.264)および4K (H.265)動画の出力にかかった時間が計測される。こちらの結果は総合スコアのみだ。
結果を見ると、「Video Editing Benchmark」ではかなり低い結果が出ている。このテストではCPU性能だけでなくGPU性能が求められるので、内蔵GPUを使う「Summit E13 Flip Evo」では仕方がない結果だ。しかし画像中心の「Photo Editing Benchmark」の結果は悪くはない。本格的なクリエイター向けノートPCには及ばないものの、枚数の少ないRAW現像やちょっとした写真加工であれば問題なく行なえるだろう。
バッテリー駆動時間の公称値は、最大で18時間とされている。ただしこれは「JEITAバッテリ動作時間測定法 (Ver. 2.0)」と呼ばれる測定法に基づいた省電力状態における比較用の結果で、実際の利用を想定した数値ではない。そこで長時間のWebブラウジングを想定した状況で、実際の駆動時間を計測した。使用したソフトは「BBench」(10秒ごとのキー入力と60秒ごとのWeb巡回を有効)で、Windows 10の電源プランは「バランス」、電源モードは「より良いバッテリー」に設定。さらに「MSI Center for Business & Productivity」で「User Scenario」を「Balanced」に変更している。
結果は9時間39分で、公称値の18時間を大きく下回った。もっとも「最大18時間」であるため、バッテリの消費量によっては当然このような結果も起こりうる。ただし「BBench」のテストはどちらかというとバッテリ消費量が少ないため、Webブラウジングよりも負荷の高い作業を行なえば駆動時間はさらに短くなるだろう。外出先でネットの調べ物やちょっとした文書作成などを行なうのであればおそらくバッテリ切れの心配はないが、ソフトを複数使って多少負荷の高い処理を行なうのであれば念のために電源アダプターを持ち歩いたほうがいい。
「CINEBENCH R23」を最大パフォーマンス設定で10分間実行し続けた際のCPU温度を計測したところ、平均温度は91.5℃とやや高めだった。クロックについては1分間程度3.8GHz前後で推移したあと、そのあとは3.6GHzあたりを中心に上下に動いている。グラフではクロックがガクッと下がっているよう見えるが、実際の下げ幅は0.2GHz程度なのでそれほど大きな影響はないだろう。
「CINEBENCH R23」を10分間実行し続けた際のCPU温度およびCPUクロックの推移 |
消費電力についてはWindows 10の電源プランを「バランス」、電源モードを「最も高いパフォーマンス」に設定した上で、「MSI Center for Business & Productivity」で「User Scenario」を「Balanced」と「High Performance (「ファンスピード」は「Cooler Boost」)」に変えて、「CINEBENCH R23」10分間実行時のワット数を計測した。なおディスプレイの明るさは40%に設定している。
「High Performance」時はCPUの空冷ファンを最大出力で動作させているため、消費電力は平均68.4WとモバイルPCとしてはなかなか高い。特にアイドル時でも空冷ファンが動作するため、電力を無駄に消費している状態だ。それに反して「Balanced」時は高負荷時の出力はやや抑えられているものの、アイドル時の消費電力は「High Performance」時の47%程度と低い。外出時や普段は「Balanced」を選び、ちょっとパワーが欲しいときのみ「High Performance」に変更するといいだろう。
ベンチマーク結果をご覧いただくとおわかりのとおり、第11世代Coreプロセッサを搭載した「Summit E13 Flip Evo」は薄型のモバイル2-in-1でありながら高いパフォーマンスを発揮している。これは優れた冷却性能や高品質な上位パーツ、最適なチューニングによるもの。今回は下位のIntel Core i5-1135G7&16GBメモリ搭載モデルを検証したが、上位のIntel Core i7-1185G7&32GBメモリ搭載モデルであれば、さらに優秀な結果が得られるはずだ。
加えて、筐体の出来栄えが素晴らしい点も見逃せない。軽量スリムで質感が高く、高級感は抜群だ。デザイン面/パフォーマンス面でここまで高品質に仕上げられている機種はなかなかない。最強のテレワークPCとして大いに活躍するだろう。
協力:エムエスアイコンピュータージャパン株式会社