エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.999
2021.05.19 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
FSP「HYDRO S 750W」(型番:HS-750) 実勢売価税込8,980円(2021年5月現在) 製品情報(FSP) |
本来、低価格帯で良い物を探すことは難しい。こと信頼性がシステムの安定動作に直結する電源ユニットであれば、なおさらのこと。しかしそうしたエントリー向けの製品群にあって、長く定番として売れ続けてきた電源ユニットがFSPの「RAIDER II」シリーズだった。最大容量の750Wで約1万円という値ごろ感と、確かな信頼性。そして80PLUS認証電源の製造で世界一の実績を誇る、FSPのブランドイメージがユーザーから高い評価を受けていた。
ここ数年のエントリー電源市場で屈指の存在感を放ってきた、FSPの「RAIDER II」シリーズ。しかしかつての定番モデルも終息となり、いまや市場からほぼ姿を消しつつある |
その「RAIDER II」シリーズも2017年の発売から約4年を経て、ついに流通在庫のみで終息を迎える。しかし落胆するなかれ、ちょうどタイミングを同じくして、先ごろ実質的な後継モデルとなる「Hydro S」シリーズが市場に投入された。「RAIDER II」と同じ80PLUS SILVER認証を取得した電源ユニットで、容量ラインナップも同じく750Wと650Wの2モデル展開。価格は750Wモデルで約9,000円と、ほぼ同様の立ち位置をカバーする製品だ。極めて似通ったデザインのパッケージもまた、それを強く意識したものだろう。
もっとも80PLUS GOLD認証モデルがメインストリームを張る現在においては、SILVER認証の製品にやや物足りなさを感じる向きがあるかもしれない。しかし「Hydro S」シリーズはSILVER認証基準の88%を上回る変換効率を実現しているとされ、GOLD認証モデルに迫る高効率動作が期待できる。
ちょうど「RAIDER II」シリーズの不在を埋め合わせるように、エントリークラスの新星として2020年11月から販売がスタートした「Hydro S」シリーズ |
そして優秀なのは変換効率だけではない。内部設計もFSPらしいこだわりの構成で、高信頼性電源の定番として、すべてのコンデンサに日本メーカー製の105℃品を採用。さらに特許取得の独自IC「MIA IC(Multiple Intelligence Ability IC)」を搭載する点がトピックとして挙げられる。
複数の機能を備えた制御用ICを組み込むことで、品質を落とすことなく部品点数を削減することに成功。部品数の少ないシンプルな設計が可能になり、結果的に不良や故障率を抑えることができるというわけだ。ちなみに「MIA IC」は、FSPが開発した電源専用の多機能制御ICであり、電源ユニットへの適性に特化している。他メーカーが採用する汎用ICに比べ、より無駄の少ない設計が可能であることは言うまでもない。
独自の制御用ICを採用し、信頼性とシンプルな設計を両立させている。気になる内部構造の詳細については、後ほど分解セッションにてチェックしていこう |
また、冷却機構には120mm口径のHydraulicベアリングファンを搭載。セミファンレスのようなオプション動作には対応していないものの、極めて長寿命かつ静音動作を特徴とする優秀な冷却ファンが採用されている。120mmファンを搭載しながら奥行きを140mmとショートに抑えているあたりもまた、好感度が高い。
もっとも「Hydro S」シリーズはエントリークラスの製品であることから、ケーブルタイプはクラシカルな直結式。いまや少数派と言えなくもない仕様だが、しかるべきところを盛られた一方で削られた部分もある印象だ。
かつての「RAIDER II」シリーズとよく似たデザインのパッケージは、その後継たる立ち位置を示すためのものだろうか。なお、パッケージの外形寸法は幅330mm、奥行き110mm、高さ217mmといったところ |
「MIA IC」の採用など、機能面でのトピックが記載されたパッケージ裏面。内部には直結式のケーブルがうまく収納されているが、低価格モデルらしく付属品の類はほとんどない |
FSPのエントリー向け電源ユニットは、80PLUS BRONZE認証モデルの「HEXA 85+」シリーズも展開中。「Hydro S」シリーズより、さらに安価な選択肢も用意されている |