エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1000
2021.05.21 更新
文:池西 樹(検証)/文・撮影:松枝 清顕(解説)
Intel/AMDとも最上位モデルに対して十分な冷却性能を発揮したNoctua「NH-U12S redux」。次に、CCDが1基の構成ながらTDPが105Wに設定され、発熱が多い事で知られているRyzen 7 5800Xでも検証を進めていこう。なおテストはRyzen 9 5950Xと全く同じ条件で実施した。
CCDが1基ながらTDPが105Wに設定されているRyzen 7 5800X。Ryzen 9シリーズより温度が高くなりがちだ |
「OCCT 8.0.2」では途中何度か急激に温度が上がるものの、「シングルファン」は70℃前後、「デュアルファン」は66℃前後で推移し、やはり「デュアルファン」にすることで4℃温度を下げることができた。
一方、「CINEBENCH R23」では、いずれもCPUが許容する最大温度の90℃まで上昇。クロックを確認すると「シングルファン」より「デュアルファン」のほうが25Hz~50Hz高く、ブースト機能を調整することで、温度上昇を防いでいる状態。ブーストクロックをさらに引き上げるためには、より高い冷却性能を備えたCPUクーラーを導入する必要がありそうだ。
なおRyzen 7 5800Xは消費電力もRyzen 9 5950Xより高く、下位モデルながら発熱に関してはかなりシビアになっているのは間違いない。
「OCCT 8.0.2」実行時のファン回転数は「シングルファン」が1,550rpm前後、「デュアルファン」が1,450rpm前後、「CINEBENCH R23」はそれぞれ1,730rpm前後と1,670rpm前後で、やはり「デュアルファン」のほうがファンの回転数はやや低め。そのためノイズレベルについてはファンの数によって大きな違いは出なかった。またここまでの結果を見る限り、「NH-U12S redux」に実装されているファンの静音性は高く、フル回転時でもノイズに悩まされる心配はないだろう。
最後に非接触型デジタル温度計と、サーモグラフィを使いヒートシンクの温度を確認していこう。なお計測はCore i9-11900Kのシングルファン状態で行っている。
「CINEBENC R23」実行後のポイント別温度計測結果 |
アイドル時のサーモグラフィ結果 | 高負荷時のサーモグラフィ結果 |
ポイント別温度を確認すると、CPUに接触するベース部分の温度が一番高く、CPUから離れるに従ってヒートシンクの温度が低下する理想的な結果。またサーモグラフィの結果を確認すると、ヒートパイプ部分の温度がヒートシンクより明らかに高く、ヒートパイプを使ってCPUから発生した熱が効率よく移動している様子が伺える。
“クラシックサイドフロー”とは、もちろん旧世代の製品ということではなく、「由緒ある」「名作」といったことを意味だ。およそ8年以上前の設計にしてヒートパイプを1本外したCPUクーラーが、今でも熱をしっかりと押さえ込んでいる。ここへ来てバリエーションモデルを新製品としてリリースできるのは、Noctuaならではだろう。相変わらず非の打ち所が見当たらない。
振り返ると「redux」シリーズの新モデルとして予告されたのは、2018年の「COMPUTEX TAIPEI」だった。当時の記事を見直すと「NH-U12S」がベースとなったデュアルファン仕様の大型サイドフローが主役で、プロトタイプ「redux line NH-U12 cooler」は、かろうじて2枚の画像のみで紹介されている。
いみじくも現地で取材を担当したSTAFFが今回の検証担当だった |
そもそもreduxはNoctua往年の人気モデルを合理化し、再度販売しようというもの。冷却性能が色褪せる事はなく、多くの資産と歴史を持つNoctuaだからこそできる企画だろう。カラースキームの違う冷却ファンで仕分け、今後も新たなreduxが誕生するはずだ。頑なに空冷にこだわるNoctuaは、まだまだど真ん中にいる。
協力:Noctua