エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1020
2021.07.12 更新
文:池西 樹(検証)/文・撮影:松枝 清顕(解説)
CPUクーラーの主要構成部品であるヒートパイプに注目してみよう。自作PCパーツの空冷CPUクーラーにおけるヒートパイプの採用は、Cooler Master「GALILEO」(2000年5月)がリテール版第1号とされている。当時を振り返ると、Socket 370/Socket A対応の小型CPUクーラーは、ヒートパイプの恩恵により”もの凄く冷える”印象はなかった。高価なだけに、今となってはやや期待外れの記憶のみだが、市販化の幕開けだった存在意義は決して小さくない。外見こそ大きく変わらないものの、ヒートパイプは進化を続け、現在では熱移動効率を高める重要な役割を担っている。そして「NH-P1」もヒートパイプ無しでは成立しない。
「NH-P1」は、φ6mm銅製ヒートパイプをニッケルメッキでコーティング。合計6本が受熱ベースプレートから肉厚アルミニウム放熱フィンに貫通。接合部分はロウ付けにより、熱伝導ロスを徹底的に抑える対策が施されている。
パッシブCPUクーラーにおける熱移動と拡散は最も重要なポイントであり、立派な放熱フィンを整然と並べたところで、CPUからの熱が伝導しなければ、拡散および散熱は適わない。NoctuaのCPUクーラーは美しさにも定評がある。これは単に構造体の見た目を意識しているのではなく、精巧な作りこそ高い冷却パフォーマンスが発揮できるのであって、”必然的に美しく仕上がる”と言い換えられるだろう。
真上から見たヒートパイプ6本のレイアウト。配列やピッチも緻密に計算されているという |
実測約1.5mm厚の放熱フィンはいかにも頼もしいが、受熱ベースプレートは思いの外スリムな印象。実際に計測してみると、約52mm四方に厚さは約5mmだった。
さらに興味深い点は、ヒートパイプとの接触ポイントだ。この手の高冷却志向のヒートシンクの場合、ヒートパイプは2枚の受熱ベースプレートに溝を掘り、上下から挟み込むスタイルが多い。一方「NH-P1」は、約5mm厚の受熱ベースプレート1枚のみで、φ6mmヒートパイプは外周の半分のみで接合されていた。このように細部を観察すると、製造メーカーの技術力やポリシー、放熱・散熱・受熱に対する考え方の違いが発見できる。「NH-P1」は実に興味深い散熱器だ。
フィニッシュが美しい受熱ベースプレート。出荷時より左右にはリテンションとバネ付きネジが固定されている |
真横から確認すると、思いの外スリムである事がわかる受熱ベースプレート。ヒートパイプとの接触ポイントは半円のみで賄われている |