エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1036
2021.08.10 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
各種ベンチマークによるパフォーマンス検証が一段落したところで、「Radeon RX 6600 XT」の消費電力を確認しよう。ストレステストの「3DMark Time Spy Extreme Stress Test」を動作させ、実行中の最高値を高負荷時、起動後10分間何もせず放置した状態をアイドル時として、ワットチェッカーによる計測を行った。
CPUにはTDP105WのRyzen 9 5900Xを搭載しているが、消費電力は最大で287Wに収まった。Radeon RX 6700 XTとの差は60~80Wほどであり、GPUのTBPをそのまま反映した結果と言える。「Radeon RX 6600 XT」の省電力性能はなかなか優秀なようだ。
テストセッションの最後は、「RED DEVIL RX6600XT 8GB」が搭載するデュアルファンクーラーの挙動を確認して締めくくろう。「OC」と「SILENT」の2モードでどのような動作の違いがあったかを含め、「3DMark Time Spy Extreme Stress Test」を用いた高負荷時の挙動を以下にまとめてみた。なお、温度やファン回転数は「GPU-Z」を使用して測定している。
動作クロックでは100MHzほどの差があった2モードだが、「OC」モードはファン回転が1,200rpm強でGPU温度は60℃強。その一方で「SILENT」モードでは、動作クロックを低下させつつファン回転数を1,000rpm弱まで落とし、それでいてGPU温度は65℃前後を維持している。その分騒音も抑えられるわけで、「SILENT」はなかなかバランスの良いモードのようだ。追加のチューニングを考慮しないのであれば、「SILENT」メインで運用するのも十分アリだろう。
「Radeon RX 6600 XT」のRadeon RX 6000シリーズにおける立ち位置は、ミドルど真ん中といったところ。市場のボリュームゾーンであるミドル層のプレイ標準であるフルHDをターゲットに据え、その環境で高リフレッシュレートのディスプレイ運用を可能にするというものだ。“究極のフルHDゲーミング”という看板に偽りはなく、フルHDにおける検証では競合のGeForce RTX 3060を上回るパフォーマンスを発揮。eスポーツ系タイトルで高フレームレートを稼ぎつつ、重量級タイトルでもリッチなプレイ設定で遊べるポテンシャルを備えている。まさにフルHD向けGPUのニュースタンダードだ。
その一方で、レイトレーシング性能の方はオマケ程度。DLSS対抗の超解像技術である「FSR」を組み合わせることが想定されているようで、非対応タイトルでの運用はあまり現実的ではない。レイトレーシングによるクオリティアップよりも、フレームレートを重視するフルHDゲーマー向けに特化したGPUと言えそうだ。
なお、グローバル市場における市場想定売価は379ドルから。競合との関係ではGeForce RTX 3060(329ドル)とGeForce RTX 3060 Ti(399ドル)との間に位置し、なかなか絶妙な価格設定と言える。各メーカーから多数のバリエーションが登場することが予告されており、またミドルレンジのグラフィックスカード市場が賑やかになりそうだ。
PowerColorからは、今回評価サンプルとして届けられた「RED DEVIL RX6600XT 8GB」に加え、「Hellhound」シリーズの新モデルも発売される |
その中にあって、今回検証を行った「RED DEVIL RX6600XT 8GB」は、ブランドにおける上位シリーズの製品だけはあり、完成度の高いモデルだった。重厚なビジュアルに加え静粛かつ冷却性能豊かなデュアルファンクーラーを備え、電源周りにも高品質なコンポーネントを採用。ファクトリーオーバークロックの効果こそ控えめだったものの、補助電源が増強されていることもあり、さらなるチューニングのベースとして有望だ。よりパフォーマンスを重視するユーザーに“刺さる”一枚として、市場における存在感に期待したい。
協力:日本AMD株式会社