エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1044
2021.08.27 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
次はより実際のゲームプレイに近いテストとして、MMORPGの人気タイトル「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ」の公式ベンチマークを実行する。グラフィックス設定は「最高品質」、解像度は3,840×2,160ドットをチョイス、これまで同様に30分間に達するまでループでテストを動作させている。
「漆黒のヴィランズ」よりヘビーになった拡張パッケージとあって、従来の検証時より消費電力は増大。しかし今回の各種ストレステストの中では、最も控えめな451Wに収まった。稼働率にすれば52%ほどで、変換効率の面では理想的な環境と言える。
不規則な負荷がかかるゲームシーンを再現しているためか、比較的連続した変動が起きている。しかし出力変動の数値を見てみると、「AIDA64」や「OCCT」とまったく同じ動作パターン。変動の範囲は11.933~11.986Vに収まっており、平均値もパターン上限の11.986Vにかなり近い数値だ。ゲームプレイ中はシステムの安定動作が必須だが、このブレの少ない一貫した電圧変動は、その要求を十分に満たしている。
最後の負荷テストは、先ほどの「FF XIV」より負荷の大きなゲーム系ベンチである「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」の公式ベンチマークテストを実行する。解像度は3,840×2,160ドットを指定し、カスタム設定にて最も負荷が大きくなるよう項目を選択。これまで同様に30分間テストを動作させている。
テスト中の消費電力は最大536Wで、「3DMark」実行時とほぼ同じ。稼働率は60%強であり、まだまだ余裕がある。
重めの負荷が特徴とあって、グラフ波形がまったくフラットになるシーンはほとんどない。ほぼ連続して波形が動いているが、12Vの最大値および最小値は「3DMark」とピタリ同じ。さらに負荷がかかっている最中の動作パターンも11.933~11.986Vであり、これはここまでのテストを通じてまったく同じだった。異なるタイプの負荷がかかるシチュエーションであっても、挙動が変わらない安定性はさすが。「Ion+ 2 Platinum 860W」のもつ信頼性の高さが窺える。
最新作の「Ion+ 2 Platinum」シリーズは先代の「Ion+ Platinum」と同様に、80PLUS PLATINUM電源の中では高価格帯に位置する製品。もとよりFractal Designは安売りをするメーカーではなく、品質を重視するユーザーをターゲットに据えたコンセプトは不変だ。最新規格への適合や保護機能の高度化など、あまり普段使いで意識できるアップグレード要素ではないものの、より信頼性が強化された点は頼もしい。
また、複数の負荷テストでも変わらない挙動を示していたように、電源ユニットとしての完成度は極めて高い。大口径の静音ファンはフルロード時でも静粛さを保ったままで、静音志向を掲げるブランドのモットーを体現している。ON/OFFを選択できるセミファンレス機能も便利だ。そして異次元の柔軟性をもつ「UltraFlexケーブル」がダメ押しになり、圧倒的な使い勝手の良さを実現している。価格以上の価値を備えた電源ユニットとして、秀作シリーズの後継に相応しい存在と言えるだろう。
唯一気になる点を挙げるとすれば、先代からそのまま継承された容量ラインナップだろうか。「Ion+ Platinum」が登場した頃は大容量電源ユニットの存在感がやや希薄だったところ、その後TDP300W級のGPUが台頭するに至り、自作市場の電源事情も様変わりしている。シリーズのコンセプトからは外れるかもしれないが、ここはよりエンスーなユーザー向けに、さらなる大容量のバリエーションモデル追加に期待したい。
協力:株式会社アスク