エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1074
2021.11.14 更新
文:編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
電源回路がこれまで以上に重要な要素になるIntel Z690マザーボード。はたして13フェーズ電源回路を搭載する「Z690 Steel Legend WiFi 6E」は、第12世代Intel Coreプロセッサの負荷に耐えられるのだろうか。ここでは電源回路を冷却するヒートシンクのポテンシャルを確かめるため、負荷の高い「CINEBENCH R23:Minimum Test Duration:30 minutes」を動作させた際の挙動を見ていこう。
なお、今回はCPUの冷却にオールインワン型水冷ユニットを使用しており、ヒートシンク周囲は無風の状態で検証を行っている。
アイドル時のサーモグラフィー | 高負荷時のサーモグラフィー |
30分間CPUのフルロード状態が続く高負荷なテストながら、無風状態でも電源モジュールの温度は最大60℃程度。動作クロックもマルチスレッド処理時の最大クロックである約4.5GHzを維持し続けており、CPUの性能を十分に引き出せている。
また、サーモグラフィー画像でもヒートシンク全体に熱が行き渡っていることから、効率よく放熱ができているようだ。ヘビーな負荷がかかるシチュエーションでも、長く安定した動作が期待できる。
「Z690 Steel Legend WiFi 6E」には、高速ながら高発熱なNVMe SSDの性能を引き出すため、PCI-Express4.0(x4)対応スロットに「フルカバーM.2 ヒートシンク」を標準装備している。テストセッションの締めくくりは、その冷却性能をチェックしてみよう。
検証にあたっては、PCI-Express4.0(x4)に対応するCFD「PG3VNF」シリーズの1TBモデル「CSSD-M2B1TPG3VNF」を用意。「CrystalDiskMark 8.0.4」をデータサイズ64GiB、テスト回数9回に設定し、3階連続で動作させた際の転送速度と温度を確認する。なお、定番のモニタリングソフト「HWiNFO」にてSSDのログが取得できなかったことから、温度は「CrystalDiskInfo 8.12.12」で計測された数値を採用している。
ヒートシンクあり | ヒートシンクなし |
さすがに超巨大な64GiBのデータサイズによるテストとあって、ヒートシンク装着時でも公称スペックに比べれば若干スコアを落としている。しかし書込性能を中心に十分なスコアをマークしており、サーマルスロットリングが発生している様子はない。その一方でヒートシンクなしの状態では、大幅にスコアが低下してしまっている。
そこでSSD温度をチェックしてみると、ヒートシンク装着時は最大でも63℃に留まっており、高負荷時でも熱処理がうまくいっているようだ。しかしヒートシンクなしではたちまち80℃に達してサーマルスロットリングが発生。転送速度を落とすことで温度上昇を抑えていることが分かる。
ヒートシンクあり(アイドル時) | ヒートシンクあり(高負荷時) |
ヒートシンクなし(アイドル時) | ヒートシンクなし(高負荷時) |
サーモグラフィーでもその様子は明らかで、そもそもヒートシンクなしの状態ではアイドル時の段階で表面温度が高め。ヒートシンクを装着した状態では、高負荷時でもそれほど表面温度に違いが出ていない。「Z690 Steel Legend WiFi 6E」が装備するM.2専用ヒートシンクは、十分な冷却性能を備えているようだ。
Core i5で前世代のCore i9を超えるなど、“Alder Lake-S”こと第12世代Intel Coreプロセッサの大幅な進化は解禁前の下馬評を上回るものだ。電源制御が見直されたことで“大食らい”になったことは否めないが、何よりその優れたパフォーマンスは魅力的。しばらく雌伏を余儀なくされてきたIntel党のみならず、Alder Lakeで一式組みたいと考えている自作ユーザーは少なくないだろう。
その動きにブレーキをかけているのが、あまりにも品薄なDDR5メモリであることは間違いない。その点でDDR4メモリ対応のマザーボードであればメモリの選択肢に困ることはなく、“DDR5メモリ難民”を横目に今すぐAlder Lakeベースのマシンを組むことができる。そもそもDDR4メモリ版のマザーボードは、DDR5版に比べて格段に安価。現環境のメモリを使い回せるなら、さらにコスト勝ちできるというわけだ。
そうしたDDR4版のIntel Z690マザーボードの中でも、長期運用を見据えた高耐久仕様の「Z690 Steel Legend WiFi 6E」は、長時間ピーク性能が続くAlder Lake環境のベースに相応しい。CPUの性能をフルに引き出せる十分な電源回路があり、冷却対策も好印象。最大5,000MHz動作の高クロックメモリをサポートしていることも考慮すれば、DDR5版との差は思った以上に少ないかもしれない。
現状まだ対応製品のないPCI-Express5.0規格のM.2スロットをカットしたり、拡張スロットのPCI-Express5.0化も1スロットに留めるなど、シリーズならではの割り切り仕様も特徴。しかしIntelの最新プラットフォームでコスト勝ちを狙おうという層には、そもそも不要な機能という話もある。あくまで現実路線を追求してお買い得にAlder Lakeマシンを組むなら、かなり頼もしい存在になってくれるはずだ。
協力:ASRock Incorporation