エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1078
2021.11.26 更新
文:編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
「AI Overclocking」を使えば、搭載しているCPUやクーラーを自動的に判別して、最適なチューニングが可能 |
テストセッションのラストは、1クリックで最適なオーバークロック設定を導き出すことができるインテリジェントチューニング機能「AI Overclocking」によるオーバークロックを試してみることにしよう。なおベンチマークテストには「CINEBENCH R15」「CINEBENCH R20」「CINEBENCH R23」の3種類を使用した。
シングルスレッド処理時は「Pコア」は5,400MHz、「Eコア」は4,100MHzまでクロックが上昇 | マルチスレッド処理時は「Pコア」は4,800~5,400MHz、「Eコア」は3,900~4,100MHzで大きく変動する |
「AI Overclocking」を有効にすると「Pコア」が5,400MHz、「Eコア」が4,100MHzまでクロックが上昇し、シングルコアテストはいずれもほぼ設定値通りのクロックで動作する。ただし、処理の重いマルチコアテストではCPU温度が100℃に達してしまい、「Pコア」は4,800~5,400MHz、「Eコア」は3,900~4,100MHzの間で大きく変動していた。
「CINEBENCH R15」のスコアを確認するとマルチコアテストは1%未満の微増に留まるものの、シングルコアテストは271cbから302cbへと約12%もスコアを伸ばしている。
「CINEBENCH R20」では、シングルコアテストは「CINEBENCH R15」とほぼ同じ約12%スコアが上昇した。またマルチコアテストでも5%の差が付き、「AI Overclocking」の効果がより大きくなっている。
「CINEBENCH R23」では、「CINEBENCH R15」と同様マルチコアテストではほとんど差が出ないものの、やはりシングルコアテストでは約11%スコアが上昇している。ここまでの結果を見る限り、オフィス系のアプリケーションやゲームなど、シングルスレッドのパフォーマンスを伸ばしたい場合は「AI Overclocking」は有効な手段になるだろう。
最後に消費電力を確認すると、「AI Overclocking」を有効にすると最大消費電力は約40W増加した。ただし、テスト中にCPUの温度が100℃に達してしまい、サーマルスロットリングが発生するため、テストの後半は定格とほぼ同じ360W前後で落ち着いていた。
第12世代Intel Coreプロセッサでは、性格の異なる2種類のコアを内蔵する「ハイブリッド・アーキテクチャ」や、ピーク状態を長時間維持できるようになった最新の電源管理機構を実装することで飛躍的なパフォーマンス向上を遂げている。一方で、電源回路や冷却システムへの要求も厳しくなり、これまで以上にマザーボードの良し悪しが重要になっている。
その点、今回検証した「ROG STRIX Z690-F GAMING WIFI」なら、厳選されたパーツによって構成された堅牢な電源回路と、優れた放熱性能を備える冷却システムにより、フラッグシップモデルであるCore i9-12900Kのポテンシャルを存分に引き出すことができる。
またゲームで重要なネットワークやオーディオ機能に関してもハイエンドパーツで固められ抜かりなし。さらにドライバやユーティリティのインストールを一括して行える「Armoury Crate」や、ツールレスでM.2 SSDを固定できる「M.2 Q-Latch」、グラフィックスカードをワンプッシュで取り外すことができる「PCIe Slot Q-Release」など、ユーザーの利便性を追求した機能も充実しており、初心者でも安心して使えるのも大きなメリットだ。
唯一の不安は製品自体ではなく、深刻なDDR5メモリの供給不足だろう。DDR4メモリに対応するマザーボードもあるものの、やはり第12世代Intel Coreプロセッサを使うからには、メモリにDDR5を使いたいというユーザーも少なくないはず。早期に供給不足が解消されることに期待したい。
協力:ASUS Japan株式会社