エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1092
2022.01.03 更新
文:撮影・編集部 池西 樹
「Maximum Turbo Power」に加え、より話を難しくしているのがマザーボードメーカー各社の初期リミット設定だ。Intel Z690チップセットを採用するハイエンドマザーボードは、いずれも強力な電源回路や冷却機構を備えているため、多くのメーカーがCPUの性能を目いっぱい引き出すために「Maximum Turbo Power」(PL1=PL2)のリミットを解除している。
Intel Z690マザーボードの多くは、PL1=PL2=4,096Wのリミット解除状態がデフォルトで設定されている | Intelの公称設定を使う場合は、手動で設定する必要がある |
リミットが解除された状態では、あくまで安全圏内でという条件付きではあるが、CPUクーラーの冷却性能やマザーボードの電源回路が許す限り、CPUへの電力供給を高めて動作クロックが引き上げられる。そのため、360mmのオールインワン水冷ユニットや、ハイエンド空冷クーラーを搭載した場合でもCPUの温度が思うように下がらない、もしくはTjunctionである100℃まで上昇。これが「爆熱」のCPUであると認識されている根源となっている。
実際、Intelの公称設定(PL1=PL2=241W)と制限を解除した場合(PL1=PL2=4,096W)を比較すると、ベンチマークスコアの差は約1%にとどまる一方で、「Package Power」やシステム消費電力は約40Wもの差がついた。つまり、Core i9-12900KでCPUクーラーの冷却性能を正確に把握するには、単純にCPUの温度を測定するだけでなく、PL1=PL2=241Wに設定した状態での温度計測や、制限を解除した状態で「Package Power」や動作クロックがどれだけ維持できているのかを知る必要がある。
ちなみに、リミット値の設定はマザーボードメーカーによって若干名称は異なるが「Long/Short Duration Package Power Limit」「Long/Short Duration Power Limit」「Package Power Limit 1/2」などで設定が可能。さらにMSIのマザーボードではUEFIの初回起動時に「Select CPU Cooler type」画面が起動し、クーラーのタイプを選択することでリミット値をまとめて設定することができる。
MSIのIntel Z690マザーボードなら、「Select CPU Cooler type」からCPUクーラーの種類を選択するだけで、プリセットによりリミット値が設定される |
クーラーのプリセットは「CPU Cooler Tuning」から設定することも可能 | リミット値の設定はマザーボードメーカーによって項目名が若干異なるが、チューニング関連の設定にまとめられている事が多い |