エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1093
2022.01.05 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
第12世代Intel Coreプロセッサの冷却には、オールインワン型水冷ユニットをチョイス。搭載テストには360mmサイズラジエターを搭載するbe quiet!「SILENT LOOP 2 360mm」を用意した。ラジエターには120mmファンを3基搭載。長さ394mm(厚さ52mm)の長尺ラジエターを、トップパネル部にマウントしてみよう。なお現時点、このモデルは第12世代Intel Coreプロセッサが採用するLGA1700への搭載は見送られている。ただし搭載テストにチョイスしたマザーボード、ROG MAXIMUS Z690 HEROは、LGA1200用のネジ穴も装備されているため、SILENT LOOP 2 360mmも使用できるというワケだ。
今回はウォーターチューブを右側に配管するレイアウトで、SILENT LOOP 2 360mmの長尺ラジエターをトップパネルに固定した |
いかにも内部がスッキリしている様子が分かる。トップパネルのスライド着脱式ブラケットにより、ラジエターの設置もずいぶんと楽に作業を進めることができた |
ラジエター搭載ファンのエアフローを考慮し、付属のマグネット固定式防塵フィルタに交換。コンセプトは”SILENT”だが、”AIRFLOW”重視のスタイルには簡単に変更ができる |
SILENT BASE 802 Windowにはハイエンド志向のグラフィックスカードが似合うだろう。そこで搭載テストにはASUS「ROG-STRIX-RTX3080-O10G-GAMING」を用意。432mmまでの有効スペースに、長さ318.5mmのグラフィックスカードを搭載してみよう。
長さ278mm以上のグラフィックスカードを搭載すると、フロントパネル裏2.5/3.5インチ共用ケージ下2段分が占有される。ストレージ収納力を保持したければ、カード選びには注意が必要 |
組み込みセッションの最後に、ストレージの搭載方法を箇所別に確認しておこう。SILENT BASE 802 Windowのストレージ収納スペースは計4箇所。空きスペースや空間を無駄なく利用した設計は、このモデルの個性として主張できるポイントになっている。
フロントパネル裏2.5/3.5インチ共用ケージに3.5インチHDDを固定。コネクタはマザーボードトレイ背面側にすれば、SATAケーブルの配線もしやすい |
ボトムカバー内の2.5/3.5インチ共用ケージには、2台の3.5インチHDDを固定。コネクタは右サイドパネル側に向けて固定し、ケーブルの露出は最低限に抑えたい |
マザーボードトレイ背面の2.5インチブラケットには合計3台の2.5インチSSDをマウント。コネクタは全て下方向とし、裏配線スペースを有効活用しよう |
モデル名からすれば、誰もが”静音志向を前面に掲げたPCケース”と解釈するだろう。それは決して間違いではないが、この製品を設計通りフルに活用して行くにつれ、その印象からはかけ離れていく。SILENT BASE 802 Windowは、そんな二面性を持つ、良い意味で掴み所のないPCケースだ。
執筆時点における自作PC市場のトレンドは、間違いなく第12世代Intel Coreプロセッサだが、この手のPCケースを選択するハイエンド志向のユーザーなら、長尺ラジエターを備えた水冷構成を選択するだろう。さらにグラフィックスカードにもパフォーマンスを求めるはずで、自ずとフロントは通気性の高いメタル製メッシュパネル、トップはマグネット固定式の防塵フィルタにそれぞれ付け替え、エアフロー重視のスタイルに変更することになる。気が付けばすでに”SILENT”からはかけ離れたパワフルなPCが完成している。
そんなSILENT BASE 802 Windowの二面性は、結果としての”個性の主張”であり、もはやモデル名にとらわれる必要はない。要所のギミックは、こだわりの強い自作派による全方向からの要望に応えてのものだろう。ともすればゴテゴテに感じる点もありつつ、それだけ手を抜かなかった設計者の熱意とも解釈できる。力作である事に異論はない。
ただ1点注文をつけるなら、ABS樹脂製のスタンドは要改善箇所だろう。デザインにはマッチしており、剛性も十分に確保されている。ただし一度装着すると、本体にガッチリと固定されてしまい、もはや取り外しは諦めるしかない。スチロール製の緩衝材は使い物にならず、筆者が組み込み業者だったら、輸送を考慮して採用を見送るだろう。さて、どうやって評価機を送り返そうか。
協力:be quiet!