エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1112
2022.03.02 更新
文:編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
MSIのIntel 600シリーズマザーボードでは、「Click BIOS 5」に実装されている「CPU Cooler Tuning」の機能を使うことで、簡単にPL1/PL2のリミット値を変更することができる。これにより、本来オーバークロック非対応のNon-KモデルでもCPUの性能を最大限に引き出すことができるようになる。そこで今回はIntelの標準設定となる「Boxed Cooler」と事実上無制限になる「Water Cooler」を選択して、どのように動作が変わるのか確認してみることにした。なおストレステストには「CINEBENCH R23:Minimum Test Duration:30 minutes」を使用した。
「CPU Cooler Tuning」を変更するだけで簡単にリミット値を変更可能。PL1が無制限になることで、マザーボードの電源回路や冷却性能に問題がなければブースト状態を維持できるようになる |
「Boxed Cooler」を選択するとPL1=65W、PL2=202Wに設定 | 「Water Cooler」を選択するとPL1=PL2=4,096Wになり、事実上の無制限になる |
Intel標準設定の「Boxed Cooler」を選択すると、テスト開始直後こそPackage Powerが約145W、動作クロックもPコアが約4.50GHz、Eコアが約3.40GHzまで上昇するものの、すぐにPackage Powerは65Wに、動作クロックはPコアが約3.30GHz、Eコアが2.70GHzへと低下してしまう。しかし、事実上の無制限となる「Water Cooler」では、「MAG H670 TOMAHAWK WIFI DDR4」の強力な電源回路と優れた冷却システムのおかげもあり、Package Power、動作クロックとも全く低下することなく、ブースト時の最高状態を常に維持することができるようになる。
「CPU Cooler Tuning」の効果を確認したところで、各種ベンチマークテストを使いパフォーマンスにどのような影響があるのか確認していこう。
まず「CINEBENCH R15」の結果を確認すると、シングルコアテストでは「Boxed Cooler」の設定でもリミット値を超えることがないためスコア全く同じ。そしてマルチコアテストでも処理が軽く、PL2設定が維持される時間内にテストが完了してしまうためスコアに差は出なかった。
「CINEBENCH R20」では、シングルコアテストについては、やはりリミット値を超えることがないためスコアに差は出なかった。しかしマルチコアテストでは、途中でPackage Powerが65Wに制限され、動作クロックが大幅に低下してしまうため約24%と大きな差がついた。
「CINEBENCH R23」でもスコアの傾向は「CINEBENCH R20」とほぼ同じ。Non-KのCPUではオーバークロックはできないものの、「MAG H670 TOMAHAWK WIFI DDR4」なら「CPU Cooler Tuning」機能を使うことで、比較的簡単にマルチスレッド性能を引き上げることができる。
「ファイナルファンタジーXIV︓暁月のフィナーレ」のベンチマークでも、テスト中はほぼ1つのコアに負荷が集中するため「Water Cooler」を選択してもスコアに有意な差は見られなかった。ここまでの結果を見る限り、シングルスレッド処理が中心のアプリケーションやゲームではリミット値の変更による影響はほとんどない。一方で、動画のエンコードや3DCGレンダリングのようなマルチスレッドに最適化された処理では最高で25%近くもパフォーマンスが向上し、その効果は非常に大きいことがわかる。
ちなみに各テスト時の消費電力を確認すると、アイドル時やシングルスレッド処理になる「ファイナルファンタジーXIV︓暁月のフィナーレ」では変化なし。ただし、マルチコアテストの「CINEBENCH R23」ではシステム全体で約100Wと大きな差が付いた。「MAG H670 TOMAHAWK WIFI DDR4」で、「Water Cooler」を選択する場合は、CPUの冷却はもちろん、電源ユニットもある程度余裕を持った製品を用意しておいたほうがいいだろう。