エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1125
2022.04.09 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
最終セッションでは、Torrent Nanoをベースに構成パーツを取り付け、PCを組み上げてみる。搭載手順を実践で総点検しながら、組み込み作業における注意点、組み込み後の周辺クリアランスなどを中心に解説する。
まずはマザーボードを搭載してみよう。テストに用意したのはMSI「MEG Z690I UNIFY」。170mm四方のMini-ITX規格で、国内市場では2022年1月より販売が開始されているハイエンド志向のマザーボードで知られている。シリーズ中、もっとも作業スペースが狭く感じるのは当たり前だが、だからといって軸の長いドライバーが必要になることもなく、スムーズに固定できるだろう。
固定については解説不要。予め装着済みのスタンドオフに、付属のMounting Screw (6-32)で4箇所をネジ留めするだけ。なお搭載後の周辺クリアランスを計測してみたところ、右手の180mmファンまでが約125mm、下手のボトム面までが約55mmだった。下部の空きスペースは、Mini-DTX対応を感じさせる。
マザーボード右手の縦スリットは、リザーバー固定用。積極的ではないにせよ、本格水冷マシン構築も設計には盛り込まれている事が分かる |
CPUソケット周りのクリアランスを2箇所計測しておこう。CPUクーラーの有効スペースは最大で高さ165mmまで。例によってCPUの上にレーザー距離計を置き、内側にマーカーを貼り付けた強化ガラス製サイドパネルまでの距離を測ると170mmを指した。複数回計測し直してもほぼ同じ結果だけに、数値は合っている。とは言え、実際にCPUクーラーを選択する際は、公称値の165mmに収めた方が無難だろう。
次にマザーボードトレイ背面に回り、CPUクーラーメンテナンスホールの様子を見ておく。ちなみにカットされた開口部には、2.5インチSSD専用トレイが覆い被さるように固定されている。多少の段差があるためバックプレートが干渉する心配はない。なおカットサイズが幅約135mm、高さ約150mmの縦長長方形。見る限り、四隅のCPUクーラー用ホールまでは距離があり、大柄なバックプレートを装着しても干渉する事無く露出できるだろう。さらにMEG Z690I UNIFYには、背面にM.2 2280スロットも用意されているが、こちらも完全に露出ができている。
次にCPUクーラーを搭載してみよう。本稿では以前詳細検証を行った空冷CPUクーラーのNoctua「NH-U12S redux」を用意した。CPUクーラーの有効スペースは公称165mm。NH-U12S reduxは全高158mmだから、チョイスに間違いはない。
実際に作業を行ったところ、電源ユニット搭載スペースの床面とヒートシンク側面がかなり接近しているため、ワイヤークリップで冷却ファンを固定する作業は、若干やりにくさを感じた。さらに冷却ファンに近い場所にマザーボードのファンコネクタがあるため、多少挿しにくい。とは言え、Mini-ITX規格対応のPCケースなら共通の事象であり、当然Torrent Nano特有にマイナスポイントにはならない。なお同梱マニュアルによると、CPUクーラーはマザーボードをトレイに固定する前に作業を完了させるとある。これに習うのが正解だろう。
搭載後の周辺クリアランスは計測するまでもなく、ご覧の通り。サイドパネルも干渉することなく閉まる事は確認できている。前方に180mmファンを備え、前後の直線的なエアフローレイアウトが特徴のTorrent Nano。コンパクトな設計も手伝って、前後の狭い間隔はサイドフロー型CPUクーラーに直接的な風を当てる効果があり、内部容積を感じさせない冷却性能が期待できる。有効スペース165mmは一部140mmファン搭載クーラーも選択肢に入るため、コンパクトな空冷PCを構築できるベース筐体としての資質は、十分に満たしていると言えるだろう。
なお今回は選択から外したオールインワン型水冷ユニットについても触れておこう。占有スロット数に関わらず、グラフィックスカードを搭載した場合はボトム部にラジエター&冷却ファンを搭載する事はほぼ不可能。選択肢はフロント部の1ヵ所に絞られる。ここには180mmファンがあって、付属のフロントファンブラケットを使うことで240mmサイズラジエターが搭載できる。
一般的なラジエターは27mm厚が多く、冷却ファンは25mm厚なのでフロントパネルから内側に52mm以上のスペースが必要になる。240mmサイズラジエターはフロント部の上下スペースを占有するため、グラフィックスカードの有効スペースが公称267mm(通常335mm)に削られてしまう。もし水冷構成で組み込む場合、グラフィックスカード選びには注意が必要というワケだ。