エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1152
2022.06.07 更新
文:撮影・こまめ
「UL Procyon」はアドビのクリエイター向けソフトの快適さを計測するベンチマークテストだ。このテストでは重いデータや高度な処理を行なうため、ハイアマチュア/プロ向けの作品作り向きと考えられる。比較用のデータは前述の「PCMark 10」と同じく内蔵GPUタイプのタブレットPC(Intel Core i7-1185G7/16GBメモリ/256GB NVMe SSD/Iris Xe Graphics、比較機①)と、エントリーGPU搭載のスタンダードノートPC (Ryzen 7 5800H/16GBメモリ/512GB NVMe SSD/NVIDIA GTX 1650、比較機②)の2機種だ。
「Photo Editing Benchmark」は画像加工に関するテストを行なう。「Image Retouching」は「Adobe Photoshop」メインでメモリとGPUの性能が影響しやすく、「Batch Processing」は「Adobe Photoshop Lightroom Classic」メインでCPUとストレージの性能が影響しやすい。「Video Editing Benchmark」は「Adobe Premiere Pro」を使ったテストで、フルHD (H.264)および4K (H.265)動画の出力にかかった時間が計測される。こちらの結果は総合スコアのみだ。
写真加工のテストでは、PhotoshopとLightroomのどちらでも優秀なスコアが出ている。コンパクトなモバイルノートPCでありながら、エントリークラスのクリエイター向けノートPC程度のパフォーマンスを発揮できるだろう。しかしPremiereメインのテストでは、低いスコアに終わった。過去にもAMD系CPUとPremiereの相性問題があったので、ドライバやハードウェア的な相性が出ているのかもしれない。ひとまずPremiereを使った動画編集については、様子を見るほうが良さそうだ。
バッテリー駆動時間は、動画再生時で最大19時間とされている。ただしこれはあくまでも目安としての数値。実際の駆動時間は、公称値よりも短いことが多い。
そこで「PCMark 10」の「Modern Office battery life」で実利用における駆動時間を計測したところ(「MyASUS」の「カスタマイゼーション」で動作モードを「バランスモード」に、画面の明るさは40%に設定)、12時間12分でバッテリー切れとなった。公称値よりも短いものの、これだけ長時間駆動するなら十分。丸一日はバッテリー切れを心配することなく利用できるだろう。
これまでのモバイルノートPCはグラフィックス性能が低く、高いGPUパワーを必要としない文書作成やデータの整理、ビデオ会議などが主な使い道だった。どちらかと言えば、ビジネス寄りだ。
だがRDNA 2を内蔵するモバイルRyzen 6000シリーズの登場により、1kg前後の超軽量タイプでもゲームやクリエイティブワークに利用できるようになった。と言ってもディスクリートGPU搭載機ほどではなく筐体によっては熱対策が必要だが、よりパーソナルなシーンでの活用の幅が広がったと考えていい。「Zenbook S13 OLED UM5302」が4色のカラバリを用意しているのは、そのような多様化するモバイルノートPCに合わせたものに違いない。ある意味で、大きな転換期のきっかけとなる機種と考えられる。
マニアックな視点で言えば、USB4に対応していない点が残念だ。しかし一般的な用途で考えればそこまで必要はなく、十分なスペックと構成だと言える。新しいタイプのモバイルノートPCとして、ぜひ検討していただきたい。
協力:日本AMD株式会社