エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1161
2022.06.28 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
冷却にはオールインワン型水冷ユニット「XPG LEVANTE 240」を用意した。製品名からも分かる通り、120mmファンを2基搭載する240mmサイズラジエーターを採用。標準でLGA1700に対応するシリーズ最新バージョンだ。
おさらいすると、XPG VALOR AIRではフロントまたはトップに240mmサイズラジエーターが搭載可能。検証ではトップパネルへの搭載を試みた。理由はCPUソケットに近いため、自然にチューブの取り回しができること。さらにフロント部を空けておけば、好みの冷却ファン(非発光やARGBファンなど)が選択できるため。付け加えると、XPG VALOR AIRがショートボディである事から、前後よりも上下のスペースを使った方が、グラフィックスカードの有効スペースもフルに活用できるといったメリットがあった。
搭載作業は比較的スムーズではあったが、やや気になる点が2箇所。1つ目は横幅が210mmのスリムな筐体だけに、ラジエーターを最も左サイドパネル側に寄せてマウントしたが、後方のラジエーターおよび120mmファンと、マザーボード左上のATX12V電源ケーブル(コネクタ)が非常にタイトな位置関係である事が分かった。具体的にはEPS 12V 4+4pinマザーボードコネクタ側付け根付近に遊びがない。当然ラジエーターは前方ギリギリまで寄せて固定しているが、通常使用に支障が出ることはない。
2つ目はやはりスリムな横幅に起因するもので、ASRock「Z690 Steel Legend WiFi/D5」の上部ヒートシンクと後方120mmファンの一部がほぼ密着状態になった。こちらも動作に支障はないものの、異形デザインのヒートシンクであったらアウトだった可能性がある。
ラジエーターのネジは8本全てが固定できる、最も前方寄りにネジ留め。なおXPG LEVANTE 240付属ネジの頭が大きいため、搭載後マグネット固定式の防塵フィルタが波打つ状態で装着するようになってしまった。見映えを考慮するなら強度の問題はあるものの、皿ネジ等にすべきだろう |
ショートボディのXPG VALOR AIRは、最大305mmまでのグラフィックスカードに対応。折悪く編集部で手頃なGeForce RTX 3000番台が出払っていたため、搭載テストには長さMSI「GeForce RTX 2060 GAMING Z 6G」を用意した。2スロット占有のVGAクーラー「TWIN FROZR 7」を搭載し、外形寸法は長さ247mm、幅129mm、厚さ52mmとされ、2.5スロットを占有。補助電源コネクタは8pinが1口と扱い易い。
搭載は拡張スロット金具の上から2番目と3番目を外し、グラフィックスカードを装着。インチネジで固定すればいい。搭載後のクリアランスを確認すると、グラフィックスカード末端からフロントパネルまでは約90mmの空きスペースが確保できている。これ以上ハイエンドなグラフィックスカードも搭載できるが、長さ250mmクラスだとゆったりと周辺の空きスペースも確保できる事が分かった。
拡張スロット金具は外部からの固定だけに、仕上げに側面をプロテクトするカバーを装着する |
昨今の円安傾向により、現在のPCパーツ市場は少々慌ただしい。これまで「価格改定」と言えば”値下げ”だったが、今はやむを得ず”値上げ”。想定よりも余計な出費を覚悟しなければならない。そんな中で、コストパフォーマンスに優れた製品は熱心な自作派から注目が集まり、税込6,000円台で購入できる「XPG VALOR AIR」も例外ではなく、リリース記事のアクセスは好調だった。
ショートボディが特徴のミドルタワーは、前回検証を行った「XPG DEFENDER PRO」にどこか通じるフロントパネルデザインを採用。派手な装飾を嫌った日本仕様のロゴ色変更など、エントリークラスながら手を抜かない姿勢は、XPG VALOR AIRにかけるメーカーの想いが伝わってくる。ちなみに製品名に”AIR”と付くだけにエアフロー重視の設計ながら、搭載ファンはゼロ。コスト削減が主たる理由としても、決して押しつけず好みの汎用ファンが選択できるというメッセージなら、素直に受け入れるべきだろう。陳列棚は多くの汎用ファンで溢れている。
XPG VENTO ARGB 120:XPG DEFENDER PROにも標準装備されているARGBファンの単体発売品。1,200rpmの固定回転で、騒音値23dBA、風量45.3CFM、静圧0.68mmH2O。XPG VALOR AIR増設用ファンにオススメ |
左サイドパネルに強化ガラスを採用するあたり、魅せるPCケースである事は言うまでもない。ひとつ指摘しておくと、XPG VALOR AIRはフロントパネルのスリットが大きく、いかにも通気性は高そう。反面、必要以上に発光ファンを取り付けると前面から輝度の高いLEDファンの光がやや眩しく感じるかもしれない。近頃のPCケースは最適なエアフロー設定はもとより、ライティングのセンスを磨く必要もありそうだ。
協力:エイデータテクノロジージャパン株式会社