エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1172
2022.07.20 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
次にオールインワン型水冷ユニットを搭載する。テストにはFractal Design「Lumen S24」(型番:FD-W-L1-S2401)を用意。いわゆる240mmサイズラジエーターの外形寸法は幅120mm、長さ272mm、厚さ27mm。搭載ファンは120mm「Aspect 12 PWM」で、厚さは25mmとなり、ラジエーター+冷却ファンの厚さは計52mmになる。
ラジエーターの搭載作業には、フロントパネルを取り外す必要がある。さらに標準装備のAspect 12 Black x2基も不要なので取り外し、固定位置調整ができるスリットタイプのネジ穴にラジエーターを搭載。内部側に合計52mm張り出すものの、物理的な干渉を起こすことなく固定ができた。
Lumen S24はポンプをラジエーターに内蔵する設計だけに、φ67mmウォーターブロックの高さはわずか43mmしかない。全高170mmまで割り当てられた有効スペースのうち、4分の1しか使用していない事になる。CPUソケット周辺をスマートにできるのは、オールインワン型水冷ユニットの強みであり、小型PCケースの場合ラジエーターさえ固定できれば、省スペースで空冷よりも高い冷却性能を得る事ができる。
ちなみにLumen S24のチューブ長は400mm。低浸透性ゴムとナイロン製網組スリーブ素材の柔軟性も手伝って、ストレスを掛けることなく搭載ができた。なおこの状態でグラフィックスカードに残された搭載スペースは、実測で約310mmになった。
グラフィックスカードの搭載テストには、MSI「GeForce RTX 2060 GAMING Z 6G」を使用した。カード長は幅129mm、長さ247mm、厚さ52mm(2スロット占有)で、もちろんグラフィックスカードに使える残り約310mmの空きスペースに収めることができる。
搭載手順はシンプルで、上2段分の拡張スロット金具を外し、ここにGeForce RTX 2060 GAMING Z 6Gをハンドスクリュー2本で固定。補助電源コネクタ(PCI-Express 8pin x1)に接続するPCIe電源ケーブルは、ボトムカバー付け根のスルーホールを利用して配線を行った。
コンパクトなGeForceの2000番台だけに、ミニタワー筐体では収まりがよく、フロントパネル裏側に固定したラジエーターまで約70mmの空きスペースが確保できている。スペースギリギリまで使い切るハイエンド志向も否定しないが、使用用途を冷静に考え、やり過ぎない構成パーツ選びによるスマートなPCも悪くない。
Fractal DesignのPCケースを取り上げる機会が多い。熱心な読者はもとより、自作PC市場でもひときわ人気のブランドである事が最大の理由だが、それだけ支持を得る製品群は、ずいぶんと日本国内市場にマッチしているのだなぁと思う。
そこに異論を挟む余地はないが、少し気になっているのが、ここ数年のFractal製品は”凝りに凝った仕掛けがやや多すぎるのではないか”ということ。これでもかと多くのギミックを詰め込み、詳細なマニュアルは出来のいい立派な小冊子になっている。そのいずれも良く出来ているのだが、果たして全てが必要なのかと疑問に思うことがある。プラスの積み重ねにより完成した製品は素晴らしいが、”ほどよさ”や不要なものを削る決断も必要ではないだろうか。
その昔、パーツ点数の多いプラモデルにワクワクしたものだが、それもいつしかパーツ点数ではなく、ひとつひとつの精度や組み立てやすさに感心するようになる。個人的にはこの感覚が実に言い得て妙なのだが・・・。
さてPop Mini Silent TGの総括に戻ると、ミニタワーという性格からなのか、非常に明確で分かりやすい静音志向のPCケースという印象だった。そこにはシンプルさと、合理的な設計、相変わらずの高い工作精度など、いろいろなものが相まっている。決して複雑ではなく以前筆者が長きに渡り抱いていたFractal Designらしさがあった。
協力:Fractal Design
株式会社アスク