エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1198
2022.09.30 更新
文:編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
続いては、「X670E Taichi」が搭載するM.2ヒートシンクの効果を見ていこう。さすがはハイエンドモデルとあって、「Blazing M.2」をはじめ全てのスロットにヒートシンクを標準装備。来るべきPCI Express 5.0対応SSDに備えた「Blazing M.2 Gen5 Fan Heatsink」まで付属している。
ちなみに今回は、PCI Express 4.0(x4)に対応するCFD「PG4VNZ」シリーズの1TBモデル「CSSD-M2M1TPG4VNZ」を用意。「CrystalDiskMark 8.0.4」を使用し、データサイズ16GiB、テスト回数5回に設定して3回連続でベンチマークを実行した。
SSD転送速度と温度(標準ヒートシンク) |
「CSSD-M2M1TPG4VNZ」のスペックは、シーケンシャル読込7,000MB/sec、同書込5,500MB/sec、ランダム読込350,000 IOPS、同書込700,000 IOPSというもの。データサイズの都合上、公称値には及ばないものの良好なスコアが出ており、グラフにも極端な乱れは発生していない。コントローラの温度も60℃を超えることはなく、標準装備のヒートシンクは十分な効果を発揮しているようだ。
SSD転送速度と温度(Blazing M.2 Gen5 Fan Heatsink) |
そしてせっかくなので、付属の「Blazing M.2 Gen5 Fan Heatsink」に換装した状態でもベンチマークテストを動作させてみた。すると大きめのテストデータながらスコアが改善したほか、コントローラ温度もテストを通じてほとんど30℃台というNVMe SSDとは思えない結果に。本来はPCI Express 5.0 M.2 SSDの発熱に対応するための装備とあって冷却過剰気味ながら、SSDを傷めず長く使いたいという人なら、一足早く常用してしまってもいいだろう。
標準ヒートシンクが左で「Blazing M.2 Gen5 Fan Heatsink」が右だが、サーモグラフィでもその違いは一目瞭然だ |
「Taichi」シリーズをはじめ、これまでのASRockマザーボードで「X670E Taichi」ほどの多フェーズ構成は珍しい。従来は電源フェーズ数を抑えつつ高品位コンポーネントを採用することで効果的に部品点数を減らし、耐久性を高めるというアプローチだった。ところが最新作の「X670E Taichi」では、業界最高レベルの大規模電源回路を搭載してきたように、だいぶ開発姿勢が様変わりしたように見える。
しかしメーカー担当者によれば、安定性とパフォーマンスを重視する姿勢には変わりなく、「Ryzen 7000」シリーズを最も効果的に運用するためのアプローチだという。クロックが頻繁に上下する際に必ず発生するロスを吸収するために、最適な手段としてフェーズ数を拡張。その効果はチューニングを施した際もまったく動揺しない、堅実な挙動からも見て取ることができる。
「Ryzen 7000」シリーズはそのパフォーマンスを目覚ましく向上させた一方で、TDP/PPTも拡張されるなど、マザーボード側への要求はさらに大きくなっている。AMDプラットフォームもPCI Express 5.0やDDR5といった最新規格へのステップを上り、それらのポテンシャルを引き出すためには、信頼性に優れたマザーボードが不可欠だ。
いまやすっかりハイエンドに定着して久しい「Taichi」シリーズだが、最新作もその期待を裏切らない重厚なモデルに仕上がっていた。贅沢な部材で身を固めつつ最新インターフェイスも過不足なく搭載。十分な冷却機構を組み合わせつつ、理想のRyzen 7000マシンを組み上げるベースに相応しい1枚だ。
協力:ASRock Incorporation