エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1209
2022.10.24 更新
文:編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
ここからは実際のゲームプレイにより近い負荷を再現するため、長時間のループ実行に対応した「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ」の公式ベンチマークテストをチョイス。グラフィックス設定は“最高品質”、解像度は3,840×2,160ドットにセットし、最大限の負荷がかかるように設定して30分間連続で動作させている。
ベンチマークテスト中における消費電力は最大615W。3D描画メインの負荷テストだった「3DMark」に近く、「Hydro PTM PRO ATX3.0」にとっては約60%ほどの負荷で動作していた。
これまでのテストに比べれば、アグレッシブにグラフの波形が動いている。これはベンチマークテストの負荷が常時継続しているわけではなく、セッション間の読込発生時にほぼアイドル状態に戻るためだ。セッション中も不規則な負荷がかかる影響で、それに応じて電圧も若干の変動を見せている。
しかしATXとCPUについてはほぼ共通で、12V基準での変動幅は最大0.5%ほど。主要シーンでの推移も12.03~12.04Vで安定しており、実はこれまでのテストとほぼ変わっていない。最も大きく変動しているように見えるPCI Expressもまた、12V基準の±変動値を合計しても1%に満たず、常に限られた一定の範囲で動作しているのが分かるだろう。
最後は同じくループ実行に対応したゲーム系ベンチマークテストとして、より負荷の大きな「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」の公式ベンチマークを動かすことにした。描画品質は“カスタム”から最も負荷が大きくなるよう項目を選択、解像度は最大の3,840×2,160ドットにセット。これまで同様に30分間連続で動作させている。
なお消費電力は最大652Wと、「3DMark」時と同じ。1000Wモデルの「Hydro PTM PRO ATX3.0」にとって約65%であり、まだまだマージンを残している。
ATXはこれまで同様に12.03~12.04Vで推移しており、「Hydro PTM PRO ATX3.0」の安定性を象徴するような良好な結果だ。CPUの方もテスト序盤を除けば、ほぼ12.02~12.03Vで推移する安定動作。ゲーム中においてもブレなく安定した電圧を出力できている。
そしてPCI Expressも主要なシーンでは概ね11.97~11.98Vで推移。12V基準での合計変動値も1%未満に収まっており、製品の電圧レギュレーションを逸脱することは一度もなかった。
グラフィックスカード向けの補助電源コネクタが12VHPWRへと移行を始めたことで、今後ATX 3.0世代の電源ユニットの需要も増していくものと思われる。多くのケーブルを接続する必要がある8pinからの変換に比べ、最大600Wまでケーブル1本で給電できる12VHPWRはスマートで扱いやすい。分岐ケーブルを使って無理な変換をしてしまい、カードの動作が不安定になる心配も無用。最新世代のグラフィックスカードを不安なく運用したい向きには、12VHPWRコネクタの有無が電源選びの有力な基準になりそうだ。
そうした潮流を受けて、現在様々なメーカーから12VHPWR搭載のATX 3.0世代電源ユニットがリリースされている。今回検証を行った「Hydro PTM PRO ATX3.0」もその一つなわけだが、さすがは老舗電源メーカーのPLATINUM認証モデル。強力な負荷がかかったシチュエーションにおける安定性は特筆もので、ハイエンドマシンの心臓に相応しいブレのない挙動を見せてくれた。ベースになった「Hydro PTM PRO」シリーズの素性の良さをそのままに、うまくATX 3.0世代への進化を果たした格好だ。
高温多湿な日本の環境にもマッチした「OFF-WETテクノロジー」など、独自の高耐久設計により、長期間に渡る運用にも不安はない。常時冷却志向のユーザーに歓迎されるであろう、セミファンレスのON/OFF機能も実用的。派手さや目立つギミックこそないものの、シンプルに信頼性の高さを追求する向きには、注目すべきATX 3.0電源ユニットと言える。
協力:FSP GROUP Inc.
株式会社アユート