エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1240
2023.01.09 更新
文:編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
ゲーム系のベンチマークが一段落したところで消費電力を確認していこう。アイドル時は起動直後10分間放置した際の最低値を、高負荷時は「CINEBENCH R23:10 minutes」実行時の値を採用している。
Ryzen 7000シリーズの3モデルはいずれもPackage Powerが90W前後になるよう調整されており、消費電力は170W弱で横並び、「X」型番と比較するとRyzen 9 7900は約半分、Ryzen 7 7700は約90W、Ryzen 5 7600でも約50Wも削減されている。
ちなみにCore i7-13700の無制限設定では、Package Powerは最大300W超え、消費電力は最大400W弱まで上昇する。PL1を規定の65Wにすると消費電力は130W前後まで低下するが、CINEBENCH R23のスコアも約6割強の20,000pts前後まで落ち込んでしまう。Ryzen 9 7900と比較しても約8割前後の性能に留まることから、Ryzen 9 7900のワットパフォーマンスはかなり優秀だ。
またRyzen 5 7600とCore i5-13400を比較するとRyzen 5 7600のほうが約18W高くなっているが、今回検証に使用したマザーボードはRyzen 7000シリーズがフラッグシップのASRock「X670E Taichi」、第13世代Intel CoreプロセッサはミドルレンジのMSI「MAG B760M MORTAR WIFI」で、搭載している機能には大きな差がある。Ryzen 7000シリーズのマザーボードをミドルレンジクラスにすればその差はもっと小さくなるだろう。
最後にCPUの温度を確認しておこう。アイドル時は起動直後10分間放置した際の最低値を、高負荷時は「CINEBENCH R23:10 minutes」実行時の値を採用し、それぞれのCPUに付属するリテールクーラーを搭載した状態でも計測を行った。
Ryzen 9 7900/Ryzen 7 7700に付属する「AMD Wraith Prism」 | Ryzen 5 7600には一回り小さい「AMD Wraith Stealth」が付属する |
360mmラジエーターを使用するCORSAIR「iCUE H150i RGB PRO XT」では、冷却性能に余力があるためCPU温度は3モデルとも60℃前後で頭打ち。リテールクーラーでの動作でも「AMD Wraith Prism」が付属するRyzen 9 7900とRyzen 7 7700はそれぞれ68.9℃と78.4℃で、最高許容温度である95℃まではまだ余力が残されている。なおRyzen 9 7900より、Ryzen 7 7700の温度が高いのは、Ryzen 7 7700のCCDが1基のため熱が集中してしまうためだと思われる。
一方「AMD Wraith Stealth」が付属するRyzen 5 7600の温度は最高95.6℃まで上昇しており、やや不安が残る結果になった。すべてのCPUコアがフルロードする作業を頻繁に行う場合にはCPUクーラーのアップグレードを検討したほうがいいだろう。
従来モデルからクロックを控えめにすることで、TDPを65Wに抑えた「無印」型番のRyzen 7000シリーズ。実際のテストでも「X」型番から消費電力、発熱とも大幅に低下しているのが確認できた。特にRyzen 5 7600はRyzen 5 7600Xとの性能差が小さく、ライバルとなるCore i5-13400との比較でも安価ながらゲームパフォーマンスは優秀。マルチスレッド処理ではEコアが無いため後塵を拝するシーンもあるが、ミドルレンジクラスのゲーミングPCを組み立てるなら現状最適解と言える存在だ。
そして消費電力を抑えつつマルチスレッド性能が欲しいならRyzen 9 7900がオススメ。ブースト機能を有効にした場合の絶対性能こそCore i7-13700に敵わないものの、ワットパフォーマンスでは圧倒。さらに標準で付属する「AMD Wraith Prism」の冷却性能にも余裕があり、スリムPCやMini-ITXベースの小型PCでも導入に苦労することはないだろう。
たしかにコスト面では、DDR4メモリやIntel 600シリーズのマザーボードが流用できる第13世代Intel Coreプロセッサのほうが未だ有利なのは事実。しかし、以前に比べれば低価格なSocket AM5のマザーボードも増え、DDR5メモリの価格もこなれてきている。加えて「無印」型番のRyzen 7000シリーズの登場によってトータルコストはさらに抑えることができるようになった。
これまでそのパフォーマンスや最新インターフェイスは気になりつつも、価格面でRyzen 7000シリーズ導入をためらっていたなら、「無印」型番に合わせて最新プラットフォームへの移行をぜひ検討してみるといいだろう。
協力:日本AMD株式会社