エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1264
2023.03.12 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕/池西樹(テストセッション)
エルミタ読者であれば説明不要。Noctuaのプロフェッサー、Mr.Jacobからの「編集部直送便」にて届けられたのは、AMD Socket AM5専用に設計された空冷クーラー「NH-L9a-AM5」だ。セールスは元より、供給の安定、流通在庫の調整など、ユニバーサル対応にあるメリットに見向きもせず、AM5だけに目を向け、さらに全高37mm(またはそれ以下)である必要性にターゲットを絞った、全くもってニッチな製品だ。
Noctua「NH-L9a-AM5」 市場想定売価49.90ユーロ/44.90ドル(2023年1月24日発表) 製品情報(Noctua) |
絞りに絞った製品とあって、国内市場での売価は約7,800円とお世辞にも安価とは言えず、これだけ並べるとネガティブなプロフィールばかりが並ぶ。しかしそれを吹き飛ばしてしまうのが、Noctuaの圧倒的なブランド力だ。誤解を恐れずに言えば、高性能で高冷却が好意的に受け入れられるのは「自然」または「簡単」で、ワンメイクの高額製品(しかも小さい!)に全世界の熱心な自作PCマニアたちを振り向かせるのは、界隈を見回してもNoctuaしかいないだろう。
「なんだ、小型PC向けでAM5専用か・・・」と、ここで離脱するのは少々お待ち頂きたい。通常の検証記事とは異なり、本稿の読者のうち、何名が実際にNH-L9a-AM5を購入するかはかなり限定的かもしれない。しかしNoctuaがこれまで培った技術の粋を詰め込んだNH-L9a-AM5を知る事は、ある意味コンシューマ向け小型空冷クーラーの限界値を知る事にもなろう。
次にスペック表からNH-L9a-AM5の性格を把握しておこう。全高37mmは既にご案内の通りだが、奥行き92mm、幅114mmからもコンパクトである事が分かる。さらに重量は465gとされ、人気の「NH-U12A」の1,220gを引き合いに出すと、大雑把に計算して約3分の1ほどという事になる。
ヒートシンクの素材は放熱フィンがアルミニウム、受熱ベース部は銅製で、腐食防止と外観を考慮したニッケルめっき処理が施されている。この辺りはNoctuaの既存モデルと変わらない。
その他詳細については、まさに本稿の主たる要素につき割愛し、最後にパッケージについて触れておこう。コンパクトな本体同様、Noctuaカラーの外装パッケージも小型で、いずれも実測で幅約155mm、長さ約170mm、高さ50mmといった所。
そしてパッケージのブラウンとベージュのコーポレートカラーはNoctuaの代名詞であり、これについて以前Mr.Jacobは「市場で多く見かける鮮やかなカラーリングとは対照的に、落ち着きと静謐を連想させるために選ばれた」と、チョイスの理由を語っている。製品そのものの実力は言うに及ばずだが、ブランドイメージを強く市場に根付かせる事に成功し、揺るがない存在感と信頼性を獲得したNoctua。こういった戦略的手法の成功者として、自作PC市場ではパイオニア的存在と言えるだろう。
そして”一生あのカラーリングで行くのだろう”と思わせながら、それを覆す「chromax」シリーズがデビューしたのは2017年10月のこと。およそMr.Jacobの発案とは思えないが、既存モデルにワンポイントながら赤・青・黄・緑・白の差し色で装飾。硬派なNoctuaらしからぬ方向に世界のNoctuaファンは戸惑った事だろう。
そして現在は若干の方向修正の後、chromax.blackなる新たなパターンに落ちついている。オールブラック仕様のバリエーションは、カラフルなカラーリングに比べて受け入れやすく、NH-L9a-AM5にも兄弟モデル「NH-L9a-AM5 chromax.black」が同時にリリースされている。
ブラックベースのNH-L9a-AM5 chromax.black外装パッケージ |
ヒートシンク、冷却ファン、そして電源ケーブルとコネクタまでブラック仕立て。ご覧の通りNoctuaカラーのカケラも無いわけだが、ここまでカラーバリエーションモデルとして複数の製品がリリースされており、chromax.blackシリーズは市場に認知されているように感じる。よもやchromax.whiteは出ないだろうが、機会があればMr.Jacobに聞いてみたい。
想定売価はNH-L9a-AM5の44.90ドルに対し、NH-L9a-AM5 chromax.blackは54.90ドルと10ドル高い価格設定。国内市場では約1,500円差で販売されている |