エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1273
2023.04.05 更新
文:撮影・編集部 池西 樹
ゲーム系ベンチマークが一段落したところで消費電力とCPUの温度を確認しておこう。負荷テストには「CINEBENCH R23」のシングルコアテスト、マルチコアテストをそれぞれ10分間実施した場合と、「ファイナルファンタジーXIV︓暁月のフィナーレ」(解像度:フルHD)を使用している。
アイドル時の消費電力は、AMD X670Eでは2基のチップセットを搭載していることもあり、Core i9-13900Kの65.9Wに対して、Ryzenシリーズはいずれも100Wでやや高め。Socket AM5環境でアイドル時の消費電力を抑えたいならAMD B650/B650Eやまもなく発売が開始されるAMD A620など、シングルチップセットの製品を選択したい。
続いて「CINEBENCH R23」実行時の消費電力を確認すると、Ryzen 7 7800X3DのTDPは120WとRyzen 7 7700Xよりも高いにも関わらず、シングルコアテスト、マルチコアテストともRyzenシリーズの中では最も低くなった。そこでマルチスレッド時のPackage powerを確認してみたところ、Ryzen 7 7700Xは140W前後まで上昇するのに対して、Ryzen 7 7800X3Dは86W前後で頭打ちになり、実際の消費電力はかなり低いことがわかった。さらに「ファイナルファンタジーXIV︓暁月のフィナーレ」動作時の消費電力もRyzen 7 7800X3Dが最も低く、Ryzen 7 7800X3Dの省電力性能はかなり優秀だ。
続いて「CINEBENCH R23:マルチコアテスト」実行時のCPU温度を確認すると、Ryzen 7 7800X3DはRyzen 7 7700Xより12℃、Ryzen 9 7950X3Dとの比較でも4.6℃低くなった。実際にテストをするまでは、TDPが120Wと高めで、CPUの最高温度も89℃と低いことから、冷却面を心配していたが、AMDが推奨している280mm以上のオールインワン型水冷ユニットや、ハイエンドな空冷CPUクーラーを用意してやれば問題なく冷却できるだろう。
すでに発売中のRyzen 9 7900X3Dシリーズでは、従来型と3D V-Cache搭載型の2種類のCCDを組み合わせたハイブリッド構成により、3D V-Cache搭載型CCDのクロックが上げにくいというデメリットを解消していた。一方、3D V-Cache搭載型のCCDのみで構成されるRyzen 7 7800X3Dでは、純粋なCPU性能については同じ8コア/16スレッドのRyzen 7 7700Xの後塵を拝するシーンが多い。
ただし、大容量キャッシュが効くゲームでは、最大で約27%も上回るものもあるなどスコアが逆転。さらには本来なら格上のCore i9-13900Kを上回るシーンも多く、ゲームによってはAMDのコンシューマ向けフラッグシップであるRyzen 9 7950X3Dに匹敵するものもあるなど、まさに期待通りのパフォーマンスを発揮する。
そして「X」モデルに比べると消費電力が低く、発熱が控えめなのも大きなメリット。間違いなく電源回路の負担も軽減されることから、最近価格がこなれてきているAMD B650チップセットのエントリーモデルや、まもなく登場予定のAMD A620チップセットマザーボードと組み合わせた場合でも十分にその性能を引き出すことができるはずだ。
これまで、クリエイターもターゲットにした高価な2CCD構成のRyzen 9 7900X3Dシリーズと、比較的手を出しやすい価格ながら旧世代のRyzen 7 5800X3Dしか選択肢がなかった「3D V-Cache」採用CPU。その高いゲーム性能に魅力は感じつつも、導入に踏み切れなかった人にとって、最新プラットフォームに移行しながらトータルコストが抑えられるRyzen 7 7800X3Dはまさに待望のCPUと言えるだろう。
協力:日本AMD株式会社