エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1286
2023.05.09 更新
文:撮影・編集部 池西 樹
パフォーマンス検証が一段落したところで、「CRAS C930/C910」の発熱をチェックしていこう。ヒートシンクはSSDに付属するオリジナルヒートシンク(以降:オリジナル)と、ASRock「Z790 Steel Legend WiFi」に付属するヒートシンク(以降:MB)を搭載した場合の2種類で検証を行い、ストレステストには「CrystalDiskMark 8.0.4」をデータサイズ64GiB、テスト回数を9回にして、3回連続で実施する非常に高い負荷をかけている。
「CRAS C930」には3つの温度センサーが内蔵されているが、「オリジナル」では最も温度の高い「温度センサー2」は1回目の読込テスト途中で106℃に達してしまう。その後はサーマルスロットリングによって温度上昇は抑えられるものの、転送速度も大幅に低下する。一方、「MB」では「温度センサー2」の最高温度は83℃で頭打ち。サーマルスロットリングと思われる速度低下も完全に解消されている。
オリジナル/アイドル時のサーモグラフィ | オリジナル/高負荷時のサーモグラフィ |
MB/アイドル時のサーモグラフィ | MB/高負荷時のサーモグラフィ |
またサーモグラフィの結果を確認すると「MB」では最も温度の高いところでも60℃以下なのに対して、「オリジナル」では最高80℃を超える箇所があり、放熱性能が不足していることがわかる。比較的短時間のアクセスであれば付属のヒートシンクで問題ないが、長時間高負荷状態が続く処理を行うなら、ハイエンドマザーボードに実装されているような大型のヒートシンクを組み合わせた方がいいだろう。
極薄タイプのヒートシンクが付属する「CRAS C910」だが、「CRAS C930」に比べると発熱は控えめで1回目のテストではサーマルスロットリングと思われる症状は発生していない。ただし、2回目以降はサーマルスロットリングによって速度が大幅に低下するシーンが見られ、長時間高負荷状態が続く処理では冷却性能が不足してしまう。一方、「MB」では最も温度の高い「温度センサー3」でも76℃までしか上がらず、サーマルスロットリングは一度も発生しなかった。
オリジナル/アイドル時のサーモグラフィ | オリジナル/高負荷時のサーモグラフィ |
MB/アイドル時のサーモグラフィ | MB/高負荷時のサーモグラフィ |
サーモグラフィの結果でも「CRAS C930」に比べると、高負荷時の「MB」の温度は全体的に低く、発熱が抑えられている事がわかる。また「オリジナル」でも最高温度は75℃前後に留まり、今回のような極端に負荷の高い処理でなければ問題になることはないだろう。なお「CRAS C910」ならオリジナルヒートシンクを貼り付けた状態でも、マザーボードのヒートシンクを搭載することができるので、一度貼り付けたあと剥がす必要はない。
テストセッションのラストは実際のゲームの起動時間やロード時間をチェックしていこう。ベンチマークテストには各シーンのロード時間を計測できる「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」ベンチマークの他、「ELDEN RING」と「ホグワーツ・レガシー」を使用した。なお「ELDEN RING」と「ホグワーツ・レガシー」では、実際にゲームの起動時間とロード時間をストップウォッチで5回計測し、最大値と最小値を除いた3回分の平均をスコアとして採用している。
「3DMark:Storage Benchmark」では「CRAS C910」が「CRAS C930」のスコアを逆転していたが、「ホグワーツ・レガシー」は起動・ロード時間ともほぼ同等。そして「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」や「ELDEN RING」では、起動・ロード時間とも「CRAS C930」の方が約4~7%前後高速になった。このあたりはゲームの作りによっても変わってくる可能性はあるが、パフォーマンスを重視するならやはりハイエンドモデル「CRAS C930」がオススメだ。
今回はInnoGrit製コントローラを使用するKLEVVブランドの最新NVMe M.2 SSD「CRAS C930/C910」の検証を進めてきた。
ハイエンドモデル「CRAS C930」については、シーケンシャル・ランダムともPCI Express 4.0(x4)インターフェイスの限界に迫るパフォーマンスを発揮。さらにデータサイズや圧縮率に関係なく常に転送速度が安定していることから、ゲームやオフィスユースだけでなく、大容量のファイルを頻繁に扱うクリエイティブな作業もストレスなく行うことができる。付属のヒートシンクは長時間高負荷状態が続く場合にはやや心もとないが、イマドキのハイエンドマザーボードに搭載されているヒートシンクを使用すれば冷却性能が不足することもない。
またメインストリーム向けの「CRAS C910」は絶対的な性能では「CRAS C930」に敵わないが、「3DMark:Storage Benchmark」では「CRAS C930」を上回るなど侮れない存在。サイズが極端に大きいデータではランダムアクセスをやや苦手にしているのものの、一般的なデータサイズでは「CRAS C930」と同じく安定したパフォーマンスを発揮する。さらに「CRAS C930」より発熱も控えめで扱いやすいことから、SSDのヒートシンクが小型なエントリークラスのマザーボードとの組み合わせにちょうどいいだろう。
協力:ESSENCORE(KLEVVブランド)