エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1296
2023.06.02 更新
文:編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
「PN64-S7303AD」にはPCI Express 4.0(x4)に対応するMicron製のSSD「Micron 2450」シリーズが組み込まれており、サーマルパッドを介して金属フレームと接することで放熱を行っている。狭小な内部スペースをフル活用するアイデア運用といったところだが、はたしてM.2 NVMe SSDの安定した動作は可能なのだろうか。
その疑問をベンチマークテストの「CrystalDiskMark 8.0.4」でチェックしよう。テストのデータサイズは1GiB、テスト回数を5回に設定し、3回連続でベンチマークを動作させている。
「Micron 2450」シリーズの256GBモデル「MTFDKBA256TFK」の仕様は、シーケンシャル読込3,500MB/s、同書込1,600MB/s、ランダム読込190,000 IOPS、同書込400,000 IOPSというもの。シーケンシャル性能はスペック以上をマークしており、コントローラ温度は60℃未満、サーマルスロットリングも発生していない。速度にも乱れはなく、標準搭載のSSDを問題なく冷却できているようだ。
ただしベアボーンキットなどで好みのSSDを使いたい場合には、搭載SSDはある程度吟味したいところ。金属フレームをヒートシンクに見立てた放熱にも限界があると思われるため、可能な限り発熱が控えめなモデルを選びたい。
動作検証の締めくくりとして、各種テスト中やアイドル時における「PN64-S7303AD」の消費電力をチェックしておこう。「CINEBENCH R23」および「3DMark Night Raid」動作時と、起動後何もせず10分間放置した際のアイドル時を比較している。
最大の消費電力は「CINEBENCH R23」の116Wで、CPUのピーク性能時には120WのACアダプタのギリギリまで電力が上がるようだ。デスクトップPCと比べれば格段に省電力ながら、少なくともCore i7-13700H搭載モデルの場合はUSB PD給電での動作は難しいだろう。その一方でアイドル時はわずか15Wに留まり、ハイエンドCPU搭載モデルながら、軽負荷ならかなりのエコ動作が期待できる。
さすがは第13世代のパフォーマンスCPUを搭載する製品とあって、「PN64-S7303AD」はサイズ感を裏切る高性能を見せてくれた。その狭小な筐体からくる冷却問題がCore i7-13700Hの足を引っ張ってはいるものの、そもそもこの手のひらサイズこそが正義なのであり、むしろ制約の多さの中でよくやっていると言える。
側面を覗き込むと、電源ボタンの光に照らし出されて内部の構造が把握できるくらい、めいっぱい排熱に気を遣った設計。性能と冷却のバランスを突き詰め、第13世代CPUを搭載しつつこのサイズ感に落とし込まれているというわけだ。
フルロード時の熱も無理のない範囲に抑え込まれていることで、動作音にも耳障りな高周波はなく、十分におとなしい。マウントキットを利用してディスプレイ裏に隠すなど、ユーザー側の工夫次第でさらなる快適運用が可能だろう。
ビジネスタスクから軽量のフルHDゲーミングまでカバーする「ASUS ExpertCenter PN64」の高性能ぶりは、ミニマムPCに対するイメージを変えてくれること間違いなし。小さいながらにイジれる要素があり強力なネットワーク機能も搭載、このパッケージに魅力を感じる人は少なくないはずだ。
協力:ASUS JAPAN株式会社