エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1297
2023.06.09 更新
文:編集部 池西 樹/撮影:松枝 清顕
さまざまな推論エンジンを使い、AI処理のパフォーマンスを確認する「UL Procyon AI Inference Benchmark」の結果も確認しておこう。なお精度(Precision)は「float32」と「integer」の2種類を選択している。
Radeon PRO W7800でもRadeon RX 6800からfloat32が約30%、integerが約24%上回る良好なスコア。さらにRadeon PRO W7900では、いずれもその差が約50%に広がり、AIアクセラレータの性能が大きく引き上げられているRDNA 3アーキテクチャを採用した効果が発揮されている。
一通りベンチマークテストが終了したところで、続いて消費電力を確認していこう。なお高負荷時の計測には「Blender 3.5.0」を使用している。
アイドル時は省電力機能が有効になるため、いずれも100W前後で横並び。また高負荷時の結果は、TBPが260WのRadeon PRO W7800と、TBPが250WのRadeon RX 6800はいずれも約350Wで有意な差はつかなかった。そしてRadeon PRO W7900は今回のグラフィックスカードの中では唯一消費電力が400Wを超え、公称TBPよりも差が広がっている。
テストセッションのラストは「Radeon PRO W7000」シリーズに実装されている外排気クーラーの性能をチェックしていこう。消費電力の計測と同じく、ストレステストには「Blender 3.5.0」を使用している。
まず消費電力が今回のグラフィックスカードの中で唯一400Wを超えたRadeon PRO W7900だが、2.5スロットの大型クーラーを採用していることもあり、GPU温度は最高67℃で頭打ち。Hot Spotの温度は最高89℃とやや高めだが、ファンの回転数は2,000rpm前後、回転率は最高49%までしか上がらず冷却性能については全く問題ない。
また2スロットのクーラーになるRadeon PRO W7800だが、こちらはHot Spot温度が最高77℃、CPU温度が最高64℃で、いずれもRadeon PRO W7900から温度が低下している。ファンの回転数も2,100rpm前後、回転率は最高47%で、こちらもまだまだ余力がある状態だった。
ちなみに高負荷時のノイズレベルはRadeon PRO W7900が最高40.2dBA、Radeon PRO W7800が最高41.3dBAで、コンシューマ向けのハイエンドグラフィックスカードでおなじみのトリプルファンクーラーに比べると若干ノイズは大きめ。とは言え、テスト中はCPUクーラーのオールインワン型水冷ユニットのほうがうるさく、VGAクーラーの騒音値を測定するときには、敢えてオールインワン型水冷ユニットのファン回転数を落とす必要があった。
今回は、普段あまり触れることはないプロ向けグラフィックスカード「Radeon PRO W7000」シリーズの詳細検証を行ってきた。上位モデルであるRadeon PRO W7900は、コンシューマ向け最上位であるRadeon RX 7900 XTXと同等のGPU構成ということもあり、仮想Radeon PRO W6800となるRadeon RX 6800から最低でも30%以上、テストによっては2倍以上のスコアを記録するものもあるなど圧巻のOpenGL性能を発揮する。
さらにAI性能もRDNA 2アーキテクチャから大幅に向上。ビデオメモリも48GBと大量に実装されており、大規模な演算処理も快適にこなすことができるはずだ。またレイトレーシングやラスタライズ性能にも優れていることから、様々な用途で力を発揮してくれるだろう。
一方、Radeon PRO W7800は、Radeon PRO W7900に比べてストリームプロセッサ数が7割強、メモリ帯域も6割強に制限されているためかなり性能差が大きい。処理によってはRadeon RX 6800の後塵を拝するものもあり、Radeon PRO W6800からのアップグレードパスとしてはやや心もとない。どうしてもカードサイズが2スロットである必要がなければ、上位モデルRadeon PRO W7900を強くオススメする。
協力:日本AMD株式会社