エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1298
2023.06.12 更新
文:編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
定番のレンダリングベンチマークソフト「CINEBENCH R23」を使用し、まずはシンプルに「FANTASY/i7-12700H/G660i」のCPUパフォーマンスを見ていこう。
マルチコアでは、デスクトップ向けの第12世代Core i5クラスに匹敵するスコアをマーク。つい最近検証を行ったCPUとしては、18000程度をマークしていたRyzen 7 7800X3Dにも近いパフォーマンスということになる。動作クロックも高いことから、シングルコアはデスクトップ版第12世代Core i7に匹敵。ゲーミング性能にも期待が持てる結果だ。
続いてはフルロード中の挙動を確認するため、10分間連続でテストを実行する「CINEBENCH R23:Minimum Test Duration:10 minutes」を動作させてみた。
連続してベンチマークを実行し続けることにより、CPU温度はほぼ100℃に張り付きになっている。その結果サーマルスロットリングが発生、動作クロックは概ね3.3GHz程度まで落ち込んでいるようだ。どうやらクーラーの接地の甘さから、オールインワン型水冷ユニットの冷却性能を活かしきれていない模様。CPUクーラーとの相性次第では、もう少し高いクロックを維持できる可能性がある。
最後に消費電力をチェックしておくと、「CINEBENCH R23」実行時は最大170Wまで上昇。アイドル時は25Wまで低下していた。もっともモバイル向けCPUであることを考えれば、省電力動作時はあと一息低く収めてほしいところだ。
手元でいじり回したのは短期間ながら、Core i7-12700Hオンボードの「FANTASY/i7-12700H/G660i」は、非常に高いポテンシャルを感じさせてくれる1枚だった。
高性能なCore i7-12700Hを標準搭載する自作向けマザーボードという珍しい仕様に加えて、Mini-ITXモデルとは思えないほどの拡張性。電源周りやネットワークなどの構成も申し分なく、とてもNUCのような小型PCでは実現できないパワフルなマシンを組み上げることができる。これでCPU込み約40,000円とは、かなりお買い得ではなかろうか。
その一方で、とても万人受けするような製品でないことは確か。かなり攻めた設計のためCPUソケット周りのクリアランスは厳しく、干渉せずなおかつ冷えるクーラーのチョイスには悩まされそう。さらにマニュアルすら付属せず(むしろこの手のメーカーの製品ではボタン電池すら付属しないことも)、トラブルや製品の扱いについても自身で解決する必要があることから、ある程度の知識や大らかさは不可欠だ。
また、趣味人の界隈ではセキュリティ面での不安が囁かれるなど、どうしても自己責任というキーワードが付きまとう。そうした要素を呑み込んで、手探り感のある自作を楽しみたい向きには、この上なく面白い存在と言えるのだが。
協力:某代理店S氏