エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1299
2023.06.14 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
Terraは外観デザイン自体が”魅せる”スタイルだ。一方で両サイドパネルは通気孔のスリット仕様で、強化ガラスを使った内部を魅せる設計ではない。そこはTerraのアプローチを理解できれば、取り立てて気にならない。
左右のパネルは扉のように開閉ができるよう、上部の前後に蝶番ならぬピンを設け、これを支点に180°以上に開く仕組み。両サイドを全開にした特徴的な姿は、メルセデス・ベンツ300SLのガルウイングさながら。これが十分に魅せるPCケースとしての役割を果たしている。
正面左側のサイドパネル。左下にFractalのロゴがあしらわれている |
正面右側のサイドパネル。こちらはロゴ無し。PCケースにとって、やはりメインは左側になるようだ |
両サイドパネルの開閉機構は、上部にある左右のプラスチック製パーツが要となり、片側はピン形状の突起が固定。もう片側はレバーをスライドさせることでピン形状の突起(スプリング内蔵)が引っ込み、シャーシ側から分離できる仕掛け。開閉アクションはスムーズだが、着脱もスムーズにできており、組み込み時およびメンテナンス・拡張作業時等に都度利便性を感じる事になる。
レバーを手前にスライドさせると、右側のピンが引っ込む仕掛け。簡単にサイドパネルを取り外す事ができる。プラスチック製パーツだが決して華奢という事もなく、耐久性もそこそこ確保できていると思われる |
サイドパネル左右の下部にはボール状の突起があり、シャーシ部の受け側でロック。ツールフリーで開閉および固定ができる |
底面から見ると、両サイドパネル下部の4ヵ所には「Secure Panels for Transport」を設け、付属品のMounting Screw (6-32)で内側から各パネルを固定する事も可能 |
Terra本体背面部を観察して真っ先に気が付くのは、一般的なPCケースとは異なり、密閉されていないこと。まず左手の大きな開口部がマザーボードのバックパネル用、右手の細い開口部は拡張スロット固定枠(2スロット分)、そして下部にはACケーブルを接続する3pinインレットがある。そしてそれらの左右縦列は解放されており、ここを塞ぐという概念は無い。
これはもちろん手抜きではなく、限られた容積にハイエンドパーツを搭載する事を踏まえ、通気性を優先した。仮に左右の隙間を塞いでしまったら、内部のエアフロー状況に影響が出るだろう。TerraはミニPCケースの中でも特殊な存在であり、”特別な存在”である事を実感させられる部分でもある。
組込後の方がより分かりやすいが、この状態でも密閉される部分はなく、構成パーツを組み込んだ後でも隙間ができる事が想像できるだろう |
本体を横倒しにして、ボトムパネルの様子を見ると、前後以外は共通のスリット仕様。このサイズで軽量化は目的ではないだろうから、通気性を最優先にしたデザインである事は説明するまでもない。10.4Lは設計を難しくしているものの、デザイン面でこれ以上の大型化はTerraの設計理念からは外れる。こうしてTerraが選んだスタイルは、全体の約70%の部分が通気孔を兼ねたスリットデザインであり、これなくしてはハイエンド志向への対応は実現できなかっただろう。
ちなみにボトムパネルのスリット部はもとより、オレンジ色のプラスチック製パーツの存在が気になった人もいるだろう。これについては内部構造で詳しく解説する。