エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1308
2023.07.06 更新
文:編集部 絵踏 一/撮影:pepe
ゲーム系のパフォーマンス検証のラストには、人気のFPSタイトル「VALORANT」をチョイス。画質設定はできる限り高品質な設定(FPS制限はオフ)を選択し、解像度はこれまで同様にフルHD/WQHD/4Kの3パターンで計測を行っている。
処理が軽めのタイトルのため、Core i7-13700TとGeForce RTX 4060 Tiを組み合わせたシステムであれば、どの環境でも快適なプレイが可能だ。4K解像度でも平均270fpsをオーバーしているあたり、リフレッシュレート360Hzクラスのゲーミング液晶を組み合わせた場合でも十分に恩恵を享受できるだろう。
「Silent-Master PRO Z790/D5」はファンレスCPUクーラーを中核とする特徴的な冷却システムを採用しているが、それらは高負荷時においてどのような挙動を示していただろうか。まずはCPUの挙動を確認するため、ストレステストの「CINEBENCH R23:Minimum Test Duration:30 minutes」を実行し、その際のデータをチェックすることにした。なお検証環境の室温は27℃だった。
CPUクロックは最大4.9GHzまで上昇するものの、負荷が連続するシチュエーションではおおむね3.0GHz程度で動作していたようだ。温度も70℃前後に抑え込まれており、サーマルスロットリングはまったく発生していない。チューニングによるパフォーマンスの引き上げは、あくまでファンレスクーラーの余裕の範囲内に収められていることがよく分かる。
続いて「3DMark」に搭載されたストレステストの「3DMark Time Spy Extreme Stress Test」を実行し、グラフィックスカードの挙動をチェックする。さすが大型の3連ファンクーラーを装備していることもあり、冷却性能は非常に優秀だ。ファンの稼働率にはだいぶ余裕があるが、それはGPU温度を60℃台にキープすることを目標にしているため。確実な冷却と可能な限りの静音動作を両立させる、スマートな挙動と言える。
そして同じく「3DMark Time Spy Extreme Stress Test」を動作させた際の騒音値を、マシンから約10cmほど離れた位置に騒音計を設置して計測。その結果は高負荷時でも34.4dBという優秀なもので、アイドル時(32.4dB)に比べてもほとんど変化がない。フルロード時に冷却ファンやVGAクーラーが最大限に働いても、アイドル時とほぼ同じ騒音に収められているというのは、さすがというほかない。シリーズが追求する“究極の静音”は、ほぼ達成されていると言っていい。
最後は「Silent-Master PRO Z790/D5」の消費電力をチェックし、各種検証を締めくくろう。高負荷時の数値はストレステストの「3DMark Time Spy Extreme Stress Test」を動作させた際のもので、起動後10分間何もせず放置した際の最低値をアイドル時として、それぞれワットチェッカーによる計測を行った。
さすが低電圧版CPUを採用していることもあり、デスクトップマシンながらアイドル時は約40W程度。高負荷時でも最大220Wに留まり、標準構成で組み込まれる660Wの電源容量でもかなりの余裕がある。長く運用して多少電源ユニットがヘタることがあったとしても、動作が不安定になることはまずなさそうだ。
低電圧版CPUとファンレスクーラーのNoctua「NH-P1」を組み合わせるという難しい構成ながら、「Silent-Master PRO Z790/D5」は想像以上のパフォーマンスを発揮してくれた。それは単に高性能なパーツを詰め込むのではなく、長時間の負荷テストを繰り返しつつグラフィックスカードの影響までも洗い出し、最適なパフォーマンスを割り出すという苦心のチューニングがあってこそ。その結果が、ファンレス駆動における可能な限りの高パフォーマンスと、ほぼアイドル動作と変わらない静音性との両立というわけだ。
ファンレスクーラーのポテンシャルを最大限に引き出すためのファン配置に始まり、パーツチョイスから組み込みに至る細部まで、飽くなき静音へのこだわりが詰まったマシン。おそらくファンレス動作の都合上、通常のPCに比べて外気の影響は受けやすいはずだが、それでも“究極の静音”に恥じないレベルに収まるであろうことは容易に想像がつく。
なお、今回は耳の位置に近いデスク上にマシンを置いて検証を行っていたが、その至近距離でもアイドル時は起動していることを忘れるほどの静かさ。ベンチマーク実行中にわずかに違いが聞き取れる程度で、その最中もまったく動作音が気にならなかったことを言い添えておきたい。
協力:株式会社サイコム