エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1368
2023.12.10 更新
文:編集部 池西 樹
DDR4やDDR5といった規格に関係なく、これまでメモリ1枚あたりの容量は4GB、8GB、16GB、32GBと倍々に増加してきたのはご存知の通り。さらにデュアルチャネルで動作させるには2枚1組での増設が基本になるため、必要とする容量に合わせた細かい調整が難しいという欠点があった。
この状況を解消するために登場したのが、ノンバイナリ仕様のDDR5メモリだ。ノンバイナリ仕様のDDR5メモリでは、これまでにない1枚あたり24GBや48GBといった容量のメモリが用意され、ユーザーは用途やコストに合わせて柔軟なメモリ容量を選択できるようになった。
メインストリーム向けプラットフォームIntel LGA1700/AMD Socket AM5のメモリスロットはいずれも最大4本で、デュアルチャネルに対応するため基本的には2本1組で増設する |
実際、筆者はレビュー記事を作成する際に複数のWebサイトやPDF、PowerPointの資料を開きつつ、Adobe Photoshopで画像処理を行うこともあるが、消費メモリは最大34GB前後まで上昇する。そのためメモリ容量は64GBに増設しているが、当時ノンバイナリメモリが存在していれば24GB×2の48GBを選択していただろう。
筆者の作業では、メモリ使用量は画像処理をしなければ20GB~25GB前後、画像処理をする場合でも34GB前後で頭打ちになる。本来なら40GB前後あれば十分だが、ノンバイナリメモリがなかったため32GB×2の64GBにしている |
またメモリの最大容量も128GB(32GB×4)から192GB(48GB×4)へと拡張されている。一般的な用途でこれほど大容量のメモリを使用することはあまりないが、最近ではCPUやグラフィックスカード性能の向上によって、メインストリーム向けのシステムをワークステーションとして使うシーンも増えている。大規模な演算処理や、大量の画像・動画を処理する場合には、メモリの最大容量が拡張されたことも大きなメリットになるだろう。
そしてこのノンバイナリメモリにいち早く対応したのがMSIだ。今年2月10日には、第1弾としてIntel LGA1700プラットフォームの対応がアナウンスされ、その後AMD Socket AM5プラットフォーム向けのマザーボードにも順次対応BIOSが提供されている。
MSI「MAG Z790 TOMAHAWK MAX WIFI」 市場想定売価56,980円(2023年11月10日発売) 製品情報(MSI) |
続いて、今回検証に使用するマザーボード「MAG Z790 TOMAHAWK MAX WIFI」について、メモリ周りのスペックを中心に簡単に紹介していこう。第14世代Intel Coreプロセッサに合わせてリリースされた「Z790 MAX」シリーズに属するエントリーゲーミングマザーボードで、メモリスロットはデュアルチャネルに対応するDDR5×4本を搭載し、当然ながら最大192GBまで増設することができる。
さらにデータ信号のロスを抑制する表面実装技術「SMTプロセス」と、配線の改良によりノイズを大幅に低減したMSI独自のメモリ回路設計「Memory Boost」を組み合わせることで、高クロック動作時の安定性も向上している。
これにより、64bitのブロック1つで構成されている1Rank(1R)メモリをチャネルあたり1枚実装する1DPC(DIMM per Channel)/1R構成なら最大7,800MHz、大容量メモリに多い64bitのブロックが2つで構成されている2Rank(2R)メモリをチャネルあたり2枚実装する2DPC/2R構成でも最大5,600MHzでの動作に対応し、大容量メモリ環境を構築する場合でも高い動作クロックを維持することができる。
「MAG Z790 TOMAHAWK MAX WIFI」では、1DPC/1Rの構成なら最大7,800MHz、メモリスロットとRankをフルに使用する2DPC/2Rの構成でも最大5,600MHzの動作が可能 |
MSIのマザーボードは、メモリスロットの設計にこだわっていることもあり、先々代の「MAG Z690 TOMAHAWK WIFI」でもBIOSをアップデートすることで、2DPC/2Rの5,600MHz動作に対応している |
メモリプロファイルはIntel XMP 3.0に加えて、AMD EXPOプロファイルからIntel向けの設定を導き出す「iEXPO」機能を搭載しており、現行のオーバークロックメモリであれば、プロファイルを選択するだけで最適なメモリタイミングでの動作が可能。また「Memory Try It!」を使えば、メモリのオーバークロックも比較的簡単に行うことができる。
「Click BIOS 5」の「Memory Try It!」には、あらかじめ主要なクロック、タイミング、電圧が設定されたプリセットが用意され、簡単にメモリのオーバークロックが可能 |
なお「MAG Z790 TOMAHAWK MAX WIFI」の詳細スペックや、その他の機能については以下のレビューに詳しいので合わせて参照頂きたい。