エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1375
2023.12.28 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕/池西樹(テストセッション)
CPUに接触する受熱ベースプレートは、見た目の美しさと腐食を防止するニッケルメッキ処理が施された銅製。ここには出荷時より、Cooler Masterのロゴシルエットをデザインした六角形と、ハニカム状のスタンプによるグリスが塗布されている。
CPU全体をカバーするベースプレートは幅38mm、長さ52.2mm(公称値)の長方形。そして以外なのは厚さを最小限に抑える設計。高冷却志向のCPUクーラーの多くは”肉厚銅製プレートがCPUの熱を十分に吸い出す”といったイメージかもしれないが、MASTERAIR MA824 Stealthでは最小限に抑えたという実測約4.5mmのベースプレートにより熱伝導率を高め、CPUからの熱をヒートパイプに伝導させ、2つのヒートシンクへ素早く拡散させる考えだ。
そしてグリスを拭き取った状態の受熱ベースプレートをチェックすると、中央部から円形に研磨されている様子が分かる。なお塗布済みで出荷されるため、付け替え時のグリスは別途用意する必要がある。
厚さを最小限に抑えた受熱ベースプレートにロウ付けされたヒートパイプ。MASTERAIR MA824 Stealthには合計8本のヒートパイプで構成し、放熱フィンへ素早く熱の拡散を行う考えだ。
単に搭載本数に頼らない点も、MASTERAIR MA824 Stealthの特徴。ヒートパイプ自体の厚みに変化をつけた設計と、熱伝導効率が最適化された「超熱伝導コンポジットヒートパイプ」の採用もトピックとされる。
厚みに変化を付けたヒートパイプ。径の表記は無いが実際に使用されているのはφ6mmで、受熱ベースプレート部は幅が狭く加工されている事が分かる |
超熱伝導コンポジットヒートパイプとは、グルーブ型とパウダーウィックの複合構造。両者の利点を生かし、大型ヒートシンクへの確実な熱拡散を可能とした。水冷とは異なり、熱をダイレクトに冷やすイメージの空冷には、受熱ベースプレートとヒートパイプの接合、さらにヒートパイプと放熱フィンとの接合が大きく影響する事はご存じの通りだ。
なお左右のヒートシンクには9本のヒートパイプが貫通しているように見えるが、中央部は本体をリテンションにネジ留めを行うためのシャフトで、ヒートパイプに見せかけた単なる配管というワケだ。
ツインタワー型ヒートシンクのMASTERAIR MA824 Stealthには、2基の冷却ファンが搭載されている。このスタイルの空冷クーラーは、1つのヒートシンクに1基の冷却ファンの組み合わせがほとんどで、過去には左右のヒートシンクに挟まる格好でシングルファンによる運用を想定したモデルも存在したが、吸排気のエアフロー性能を高めるには、デュアルファンによる運用が理想だろう。
MASTERAIR MA824 Stealthでは、スタッガード状にレイアウトしたデュアルファンにより「究極のプッシュ&プル構成」が構築されている。もう少し詳しく解説すると、外側に120mm Mobiusファンと、2つのヒートシンク間に挟んだ135mm Mobiusファンを搭載する事で、吸排気の速度を上げようという考えだ。これだけでは固有の特徴とは言えないが、放熱フィンの密度と厚みを最適化し、放熱面積が拡大された2つのヒートシンクに素早い吸排気のエアフローレイアウトを構築することで静音性と冷却性能を両立させているワケだ。
次に搭載される2基の冷却ファンに注目してみよう。換気装置などで使われる「プッシュプル型」を再現すべく、両ヒートシンク間に設置されるビルトインタイプの135mm Mobiusファン(135x135x厚26mm)は、回転数0~1,550rpm±15%、騒音値(最大)24.6dBA、風量(最大)107.9mm³/h(63.6CFM)、静圧(最大)1.92mmH2O。軸受けはループダイナミックベアリング(LDB)で、MTTFは200,000時間とされる。
ビルトインタイプの135mm Mobiusファン。ユーザーによる取り外しは前提とされていない |
付属のワイヤークリップによる後付けの120mmファン(120x120x厚25mm)は、回転数0~1,950rpm±15%、騒音値(最大)22.6dBA、風量(最大)107.1mm³/h(63.1CFM)、静圧(最大)2.69mmH2O。軸受けはループダイナミックベアリング(LDB)で、MTTFは200,000時間とされる。
メモリスロット側に搭載される120mm Mobiusファン。7枚ブレードの高静圧タイプが採用される |