エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1427
2024.05.31 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
CPUクーラーの有効高は160mmまで。空冷式CPUクーラーの選択肢は多いが、ここはオールインワン型水冷ユニットをチョイスしたい。せっかくのピラーレスデザインかつ270° FULL-VIEWを存分に楽しむには、ARGB LEDファンを備えた長尺ラジエーターと、イルミネーションを内蔵するポンプ一体型ウォーターブロックで筐体内部を煌びやかに装飾しようというワケだ。
搭載テストにはオールインワン型水冷ユニット、Antec「Vortex 360 ARGB」を用意した。ラジエーターサイズは通称360mmサイズながら、幅120mm、奥行き397mm、厚さ27mm。25mm厚/120mmファンを含め、厚さは52mmとされる。なお搭載方法は多くのAIO水冷同様。近頃では対応ソケットの台座ネジさえ見極めができれば、マニュアル無しでも十分に作業できる。
フロントパネルの開放状態も手伝って、作業はスムーズに進行。有効高160mmに対し、直径67mmのポンプ一体型ウォーターブロックは全高48.5mm。当然なんら問題無く、比較的柔軟性が確保された「EPDM高密度チューブ」により、取り回しにも問題が無かった。
着脱可能なフロントパネルは、側面からアクセスができるだけに組み込みのし易さを倍増させている。ここもピラーレスデザインPCケースのメリットと言えるだろう |
C3の拡張カード有効スペースは、公称で長さ415mmと広い。ここに長さ243mmのNVIDIA GeForce RTX 4070 Founders Editionを用意し、搭載を試みた。C3の兄貴分、C8検証時でも使用している事が選択の理由だが、数字上では余裕をもって搭載できる計算。ともあれ作業を進めよう。
なお搭載にあたり、Antecから発売中のGPUサポートステイ「AT-IGPUH-BK」を用意した。重量級グラフィックスカードの垂れ下がりを防ぐ支柱は実にシンプル。ボルト式の高さ調節は、クルクルと回すだけで80mmから130mmに伸びる仕掛け。範囲内は無段階調整可能で、直径は13mmの小型ボディも扱い易い。
国内市場では2023年12月16日より販売が開始された「AT-IGPUH-BK」。使い方はいたってシンプル。市場想定売価は税込1,980円 |
搭載方法はシンプルで、背面の拡張カードスロット右手にあるカバーの固定ネジを緩めてスライド。拡張スロット2本を取り外し、ここへGeForce RTX 4070 Founders Editionを装着。インチネジで2スロット分をしっかり固定し、最後にカバーを元の位置にスライドさせ、ハンドスクリューを締め付ける。作業を妨げるものがなく、重量級グラフィックスカードを慎重に扱いながらも難なく搭載できている。
拡張スロット右手のカバーを緩め、しっかり固定した後に元の位置へ戻す。C3のような筐体外部固定の場合、化粧カバーの装着はほぼ必須。見映えを損ねることを嫌った対策であろう |
搭載後のクリアランスは、フロントパネルの強化ガラス部(最も張り出した部分)まで約90mm、シャーシ末端まで約60mmを残している。ちなみに右手のサイドファンにラジエーター(120/240mm)サイズを搭載する場合は、グラフィックスカードが物理的に干渉を起こすため、カード長は約270mmまでに制限される。多くのユーザーはトップパネルにラジエーターを固定すると思われるが、念のため頭に入れておこう。
最後にGPUサポートステイ「AT-IGPUH-BK」の使用感だ。目的が同じ対策品のうち、最もシンプルな部類だけあって”手軽かつ確実な効果”が得られた。本体下部には磁石が内蔵され、スチール製のボトムカバー天板には自立が可能。ボルト式の調整部にはゴムクッションが装着され、GeForce RTX 4070 Founders Editionを確実に下支えできている。高さ調整のボルト式は便利で、経年動作による緩みが生じた場合でもすぐに修正が可能。決して見映えも悪く無い。
いわゆる”つっかえ棒”タイプのサポートステイ。組み込み後の追加導入も簡単だけに、今稼働中のPCにも導入を検討したい |
“歌詞が先か、メロディが先か”に似た感覚かもしれない。PCケースにおける”デザインが先か、内部構造の設計が先か”は重要で、両者がバランスよく進行すれば理想に近い製品が完成する(または確率が高くなる)。しかし現在PCケースの圧倒的キーワードである「ピラーレス」は、どう考えてもデザイン優先であり、その軸ありきで内部構造が決まっていく。フロントと左サイドに加工がほぼできないガラス板が占有することで、こと内部構造に関しては似通った製品を見る事が多い。外観が個性的なピラーレスデザインPCケースだが、内部構造についてはまだ工夫の余地があるように思う。C3はどうか。
Constellationシリーズは、パノラマビューの外観に合わせて設計されたエアフローの強化がアピールされている。標準装備のサイドファン3基と「High Airflow Mode」時のボトムファン(オプション)は、フレッシュな外気を常時取り込む重要なポジションにある。そしてトップとリアから一気に内部の熱を排出する構造は、前面が使えないピラーレスデザインPCケースの弱点を補い、ユーザーの不安を打ち消してくれた。無闇にスケールをアップして140mmファン対応にしなかったのは、C5やC8との兼ね合いだろう。Constellationシリーズは明確な棲み分けにより、選択肢を用意してくれている。
ひとつ気になるのは「Multi Hard Drive Mode」から「High Airflow Mode」にすると、3.5インチHDDが搭載できなくなる。エアフローを優先するあまり、ストレージ収納力が削られるトレードオフは意見が分かれるかもしれない。
自作史に残る往年の名機「P180」が登場して来年で20年になる。仮にその時代にC3が新製品として発売されたなら、斬新すぎる外観と鮮やかなイルミネーションで大注目されただろう。一方で”3.5インチHDDは搭載不可”となれば、まったく使い物にならない。SSDの登場は自作PC業界を大きく変えたし、PCケースの設計その物の自由度を格段に向上させた。SSDが無ければ、件のトレードオフも成立していない。
協力:Antec
株式会社リンクスインターナショナル