エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1439
2024.07.19 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
ある意味ここまでは「マニュアル通りの解説」をお届けしたわけだが、ここからは実際に組み込み作業を行う。Fractalらしく外観デザインに振ったMoodだが、一方で優れたメンテナンス性も謳われている。製品のキーワードである”詰め込み系Mini-ITXケース”の注目作、Moodの正体を暴いていこう。
組み込みセッションの始まりはマザーボードの搭載作業だ。MoodはMini-ITX規格のみの対応で、バックパネルを底面に向けて固定する。なお検証にはASRock「B760M-ITX/D4 WiFi」を使用。近頃では少数派になりつつある、独立タイプのバックパネルをボトム部開口部にはめ込んでみよう。
ボトム部開口部へバックパネルを装着。マザーボードの向きがよく分かる |
出荷時より装着済みのスタンドオフ4本に、付属のMounting Screw (UNC 6-32)でネジ留めを行う。なおマニュアルによると、空冷クーラーをチョイスする場合、マザーボードを固定する前に取り付け作業を終えておく事が推奨されている。内部容積が狭さが理由と考えるのが普通だが、実が別の所にその理由がある。後ほど解説しよう。
Mini-ITXマザーボードを搭載した状態。正面に加え左右も開放されているため、外観から想像するほど組み込みのしづらさは感じなかった |
バックパネルをボトム側から眺めたところ。ケーブル類はすべて底面から後方へ抜けるレイアウトが採用されている事が分かる |
通常のPCケースレビュー同様、CPUクーラー有効スペースを計測する。今回は外装カバーの形状からレーザー距離計ではなく、左右フレームに赤いリボンを貼り付け、CPUに載せた曲尺で距離を測ると約115mmだった。
赤いリボンをパネル内側に見立て、曲尺で”アナログ計測” |
ちなみにCPUクーラー有効スペースは「tower cooler config」が110mm、「low-profile cooler config」が77mmまでとされる。前者はサイドフロー型、後者はトップフロー型の解釈で間違いないようで、冷却ファンの吸気スペースの確保を想定しての2タイプ表記のようだ。なお注意書きには、サイドフロー型CPUクーラー(tower cooler config)の場合、エアフロー方向は上向きが推奨されている。言うまでもまく、トップにマウントされる180mmファンが外部排気による「煙突構造」であるためだ。次にCPUクーラーメンテナンスホールの様子をご覧いただこう。
ミドルタワーPCケースのそれとはやや異なるものの、大開口部もCPUクーラーメンテナンスホールと呼ぶことにした |
カットアウトサイズは実測で幅約140mm、高さ約150mm。170mm四方のMini-ITXマザーボードから見れば大部分が露出している事になる。しかしCPUソケット周辺のCPUクーラーマウントホールを確認すると、標準装備のライザーケーブルが覆い被さる格好で露出できていない。試しに2本のネジで固定されたライザーケーブルを外してみると、やはりフレームの一部がマウントホールの3分の1ほどを削る格好となり、完全に露出はできなかった。
マザーボード固定前にCPUクーラーを装着する推奨手順は、”内部容積が狭く作業がしにくい”ではなく、CPUクーラーマウントホールの問題である事が分かった。つまり空冷に限らず、バックプレートを使うオールインワン型水冷ユニット等も同様、事前に台座の組み上げをしておく必要がある。