エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1455
2024.09.12 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
高さ180mm超えの広大なCPUクーラー有効スペースに、敢えて小振りなウォーターブロックを備えるオールインワン型水冷ユニットを搭載してみる。
搭載テストには360mmサイズラジエーターを採用するAntec「Vortex 360 ARGB」をチョイスした。詳細な数値を確認すると、ラジエーターは幅120mm、奥行き397mm、厚さ27mmで、Fusion 120mm ARGBファン(AH12012FM1)は25mm厚。”SUSPENDED SPIRAL PUMP HEAD DESIGN”が特徴のウォーターブロックは直径67mm、高さ48.5mmとされる。
ラジエーターはトップパネルに固定。スリットタイプのネジ穴を使い、360mmサイズラジエーターをネジ留めした |
近頃のオールインワン型水冷ユニットは熟成されているだけに、スペースさえ確保できていれば搭載作業における特筆すべき注意点はあまりない。実際にVortex 360 ARGBも手順通りの組み込み作業でキレイに収まり、ラジエーターに搭載される3基の120mmファン(Fusion 120 ARGB fan)のケーブルは、上段のスルーホールから背面に引き回すことで露出は最小限に留めることができる。
工程を振り返ると、作業のしやすさはフロントパネルが開放状態にできることに尽きるだろう。特に長尺ラジエーターを扱う場合、横一方向だけでなく、縦方向にもスペースに余裕があるだけで、どこかにぶつけてフィンが潰れるといったトラブルを減らす事ができる。オールインワン型水冷ユニットに限らず、やはり構成パーツを固定する組み込み作業に限っては、内部容積の広さも圧倒的に有利だ。
次にグラフィックスカードを搭載してみよう。グラフィックスカードの有効スペースは最大で公称450mm。ここに搭載テストとしてNVIDIA「GeForce RTX 4090 Founders Edition」を用意した。外形寸法はメーカー公称値で幅137mm、長さ304mm、厚さ61mm(3スロット占有)とされる。ここは内部容積の広さを存分に活用する事にしよう。
オールインワン型水冷ユニット同様、重量級でハイエンド志向のGeForce RTX 4090 F/Eも難なく搭載する事ができた。固定方法は最もシンプルで、3スロットを占有する拡張スロット金具を外し、グラフィックスカードを装着。インチネジで固定をすればいい。VGAホルダーの類いは装備されていないため、必要と思えば別途用意するだけだ。なお12VHPWRケーブルは、ボトムカバー付け根のスルーホールを経由している。
次にグラフィックスカードの垂直レイアウトを試してみよう。マウント方法は2つのパターンから選択できる。ひとつ目は出荷時に水平マウントで固定されている拡張スロットのユニットを90°回転させ、垂直マウント用に付け替える方法。最もシンプルな考え方だが、ユニットを正方形に設計する事で、ネジ穴はそのまま利用できる。なおライザーケーブルは別途用意する必要がある。
拡張スロットはユニットを正方形で設計することで、90°回転してのスタイル変更を容易にしている |
重量級グラフィックスカードの垂直マウントはやや心許ないため、ここではGeForce RTX 4070 F/Eに付け替えている |
ふたつ目は、Antecから販売されている垂直マウント用オールインワンキット「AT-ARCVB」(型番:AT-ARCVB-BK200-PCIE4)の利用だ。
ブラケットとライザーケーブルのセット品で、拡張スロットがブリッジレスのPCケースに対応。手順は拡張スロット金具を全て取り外し、AT-ARCVBのブラケットユニットをネジ留め。ライザーケーブルを接続し、グラフィックスカードを垂直にマウントすればいい。なおホワイト(型番:AT-ARCVB-W200-PCIE4)も用意されているので、カラーに合わせて選択できる。
国内市場では2023年12月より販売がスタートしている「AT-ARCVB」(型番:AT-ARCVB-BK200-PCIE4)。ライザーケーブルの長さは200mmで、取り回しもしやすそう。Antecブランドのオプションだけにブラケットの相性も良好。売価は約1万円 |
※評価サンプルでは国内未発売でライザーケーブル長が190mmの型番:AT-ARCVB-BK190-PCIE4-RTX40を使用 |
ここまで歴代Constellationシリーズに触れてきたが、C7 ARGBは上位機種たる存在感があった。見た目は市場に多く出回るピラーレスデザインPCケースのそれと思うかもしれない。しかし細部に触れ、工具を片手に組み込み作業を行うと、Antecらしい精度の高さや設計意図が読み取れる箇所が複数あった。特に思うのは剛性の高さ。ピラーレスである事を感じさせない歪みのないフレームは、フロントに1本柱がないことを忘れさせる安心感がある。ここはC7 ARGBの○な部分だ。
そして単なるエピソードだが、C7 ARGBのマニュアルは非常に簡素化されており、人によっては素っ気ないと感じるレベルだ。実際に全てが網羅されておらず、どのネジを使えばいいのか分からない部分もあった。これを知る手掛かりはふたつで、ひとつは同梱数。ネジの個数と搭載できるパーツ(冷却ファンやドライブ)の数が合致すれば、それが正解といった具合だ。
もうひとつは、ゴムブッシュの使い方が分からなかったところ、出荷時より開閉ドアの右側「FLIP DOOR STORAGE」にHDDとSSD各1台分のゴムブッシュが装着されている。つまり、ボトム部前方のドライブトレイではなく「ここで使うのだ」というAntecからのメッセージであり、これを読み取ることで使い方が分かる。そんな合理的な考え方もAntecらしい。
これらは決して×な部分ではないが、自作PC経験の浅いライトユーザーには不親切に映るだろう。そこは本稿を読めば解決するといった仕組みだ。
提供:Antec
株式会社リンクスインターナショナル