派手さは無いものの、最も選択肢が多いエントリークラスPCケース。“普及価格帯モデル”とも呼ばれ、やや影が薄いイメージがあるのは確かだが、そんな中にもきら星のごとく“買い”のモデルがある。今回の「エルミタ的速攻撮って出しレビュー」は、1万円を大幅に切る7,000円台の売価ながら、「なかなかイイじゃないか」と思わせる、GIGABYTE「GZ-LX10HB-900」をご紹介しよう。 |
|ライバルの多い激戦区に投入された「GZ-LX10HB-900」
今回の主役に選んだのは、GIGABYTEから4月にリリースされた新作「GZ-LX10HB-900」だ。グローバル市場では「LUXO X10」と呼ばれるミドルタワーPCケースで、国内正規代理店である株式会社リンクスインターナショナル(本社:東京都千代田区)からのアナウンスでは、市場想定売価が7,480円前後に設定されている。
製品の質や善し悪しを、“売価”で見極めることがままあるが、「GZ-LX10HB-900」の7,480円前後という価格について、どのような印象を持つだろうか。
PCケースは3,000円台の格安モデルから数万円もする高価なモデルまで、とにかく価格も種類も幅が広いカテゴリだけに、メディアの露出をはじめ、口コミや掲示板を参考に選定する人は少なくないだろう。そもそも好みのパーツを手軽に交換できる点が自作の醍醐味だが、PCケースともなればそうもいかない。ゼロから組み立てるよりも入れ替えは思いのほか面倒だけに、モデル選びは楽しく且つ慎重に行きたいものだ。
さて今回の主役となる「GZ-LX10HB-900」は、その売価からエントリークラスにカテゴライズされるだろう。この“普及価格帯”はかなりの激戦区で、海外市場を見ると圧倒的にこのクラスのPCケースが多く、当然全てのモデルが国内で販売されているわけではない。つまり我々の市場で流通するモデルは、国内代理店のフィルタを通過した製品となるわけだ。とは言うものの、ただ単に低価格であれば売れるワケもなく、コストパフォーマンスの良さを謳うには、それ相応のギミックが要求されることになる。さて「GZ-LX10HB-900」は国内市場に勝ち残るだけのポテンシャルを秘めているのだろうか。
|魅惑の「倒立型」設計を採用する「GZ-LX10HB-900」
製品の立ち位置を確認したところで、本題に入ろう。このモデルのセールスポイントは、大きく分けて2つだ。
ひとつは、このクラスとしては冷却ファンの搭載スペースが多い点が挙げられる。製造プロセスの微細化により、構成パーツの発熱量が減少傾向にあるとは言え、ミドルレンジ以上のCPUおよびグラフィックスカードを組み合わせれば、それなりにPCケース内部のエアフロー能力は要求されるだろう。「GZ-LX10HB-900」は標準的ATXミドルタワーPCケースサイズでありながら、6基の冷却ファン搭載スペースが用意され、さらにデフォルトで全ての箇所に冷却ファンが装着済みだ。追加投資する事無く、十分な冷却環境が整えられている点は、非常にポイントが高い。
もうひとつは、一時爆発的にヒットしたマザーボードを逆向きに搭載させる「倒立型」の採用が挙げられる。しかしなぜ今「倒立型」なのか。
数年前の自作PC市場で流行した「倒立型」が一気に消えてしまった要因には、マザーボードのチップセットや電源周りの冷却に採用されはじめたヒートパイプの存在とそのレイアウトにあった。ヒートパイプは熱を移動させる装置で、当時のヒートパイプは重力の影響を受けやすい「グルーブタイプ」と呼ばれるものが主流だった。このタイプを採用するマザーボードを倒立式で搭載させた場合、熱源とヒートパイプ内部の作動液の循環が悪く、十分な冷却ができない。マザーボードメーカーも「倒立式」に否定的な見解を示しはじめたことから、いつの間にか「倒立式」は姿を消してしまった。
しかし現在のヒートパイプは、重力の影響を受けにくい「パウダータイプ」が主流。これによりマザーボードだけでなく、CPUクーラーも設置方法の自由度が向上し、マザーボードを逆さまに搭載する「倒立型」が再び可能になったワケだ。
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ヒートパイプの進化により復活した「倒立型」マザーボードレイアウト。電源ユニットボトムレイアウトが主流のPCケース市場だが、ブーム再燃となるのだろうか |
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