|標準ファン6基は仇になるのか?騒音値を計測してみる
本稿もいよいよ大詰め。最後に実際に動作させた場合の挙動をチェックしてみたい。とは言え、ここでの主役はPCケース。動作時のCPUの温度を計測したところで、それはCPUクーラーの実力であり、PCケースのテストとしてはやや違和感がある。そこで、ここは動作音にスポットを当ててみたい。
しつこいようだが、「GZ-LX10HB-900」には合計6基の120mmファンが標準で搭載されている。各々しっかりと役割を果たすべく、要所に配置されているワケだが、この冷却ファンの詳細スペックは開示されていない。そこでまずは各々を単体で動作させ、フロントパネルから30cmの位置にデジタル騒音計を設置し、デシベル値をみていこう。なお今回のテスト機材構成は以下通り。ちなみに冷却ファンが2基搭載されるトップ部とサイドパネル部は1セットとみなし、同時に動作させている。
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※室内騒音値29.3dBA/各々のファンから30cm地点で計測 |
結果はご覧の通り。室内騒音値29.3dBA環境で、最小は計測ポイントから最も遠いリアの33.3dBA。最大はサイドパネルの36.6dBAだった。実際耳で聞く感覚では、ややフロントファンが“がさつく”ように感じる。またサイドパネルは唯一硬質なスケルトンタイプのフレームであるため、特有の音を発するものの、耳障りではない。概ね静音の部類と言えるだろう。ちなみに回転数だが、パルスセンサー付きリアファンで計測したところ、901rpmを表示。±10%の公差を考慮して恐らく1,000rpmというスペックではないだろうか。
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十分静音と言える標準搭載の120mmファン。基本的に計6基共に同型番のモデルが採用されている |
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|冷却ファンが複数だと騒音値は大きくなるのか
これまでのレビューでも再三触れているが、PCケース全体の冷却ファン騒音値は、各々が発するデシベル値の足し算の和ではない。例えば、20dBAの冷却ファン4基を全稼働させた場合、20dBA×4=80dBAとはならず、当然ながらもっと低い数値になるワケだ。
ここでは敢えて横道に逸れ「GZ-LX10HB-900」を用い、“その法則”についてテストしてみたい。
検証は至ってシンプル。フロントファンからサイドファンまで徐々に冷却ファンを動作させていき、その合計デシベル値を計測してみる。前セクションで計測した各々の騒音値を参考に、冷却ファンを加算していく事で、どれほど数値は上昇していくのだろうか。
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※室内騒音値29.3dBA/フロントパネルから30cm地点で計測 |
フロントファン1基動作で35.6dBA、これにリアファンが加わると36.3dBA(プラス0.7dBA)、さらにトップファンを加えて37.4dBA(プラス1.1dBA)、最後にサイドファンを加えて全基動作させると37.8dBA(プラス0.4dBA)という結果だった。フロントファン1基動作と、全6基動作では僅か2.2dBAしかデシベル値の増加はみられない。このテストから、“数値上”での裏付けは取れたと見ていい。
しかしここで注意しておきたいのは、あくまで“数値上”での結果であること。フロントファン1基を動作させた場合と、全基動作させた場合では、実際に聞こえてくる音が明らかに違い、2.2dBA増加以上に感じる。
|佳作「GZ-LX10HB-900」でもうひと暴れして欲しい
今回は久し振りに普及価格帯に属するPCケースを検証してきたが、想像以上に完成度は高かった。さすがに天板厚等は2万円前後のミドルタワーPCケースには及ばないが、決して見劣りする事なく新規購入の選択肢としてお勧めできる。“帰ってきた”「倒立型」レイアウトも今や新鮮で、ひと味違う同価格帯PCケースとしての存在感は抜群だ。
余談だが「GZ-LX10HB-900」はGIGABYTEブランドのPCケースだ。GIGABYTEと言えば、誰しも疑いの余地なく自作PC業界の大手中の大手だが、国内市場で同ブランドのPCケースはあまり見かけない。マザーボードやグラフィックスカードがこれほど流通しているにも関わらず、だ。恐らく自作PCの基幹部品の押し出しが強すぎるため、PCケースのイメージが根付いていない事もその要因ではないだろうか。どこか「そば屋でラーメンを注文する」的“不粋感”に似た感覚があるように思えてならない。
「Poseidon」シリーズを国内市場でヒットさせた実績のあるGIGABYTEブランドのPCケース。なかなかの掘り出し物である「GZ-LX10HB-900」を皮切りに、PCケースカテゴリでまたひと暴れして欲しい。 |