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エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.76
ファン換装でPCをチューンしよう
Cooler Master「Turbine Masterシリーズ」検証 |
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2011年3月22日 18:45
TEXT:GDM編集部 松枝 清顕 |
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今回の「エルミタ的速攻撮って出しレビュー」は、当コーナー初となる汎用ファンについて掘り下げていきたい。チョイスしたのは、2月に発売されたばかりのCooler Master「Turbine Masterシリーズ」だ。ラウンド形状を採用した120mm口径ファン「Turbine Master」は、特徴的な外観もさることながら、独特のブレードとフレームデザインにより、低速回転ながら風量を稼ぐことができる。一見この相反するふたつの特徴は、どのように生み出されているのだろうか。一見して受ける印象の“額面通り”、ひと味違った趣のファンと言えるのだろうか。エルミタ流に検証を進めていきたい。 |
|静音ブームから本来の「冷却性能」重視の自作へ
数年前の自作業界は空前の静音ブームに沸き、CPUクーラーはもとより、ケースファンを含め、とにかく“静かなファン”を追い求めるユーザーが大多数を占めていた。風量よりも騒音値に注目が集まり、本来の冷却能力(=風量)を犠牲にしてまでも、表記上1dBAでも低いファンが「良」とされる風潮が長きにわたり続くことになる。
しかし、現在発売されているCPUクーラーやPCケース標準搭載ファンのほとんどが、敢えて交換する必要が無いほど低騒音値となった事で、いつしか“静音ブーム”という言葉に違和感を覚えるようになってしまった。そして正常進化による品質向上は、ファンを換装するという最も手軽な自作の楽しみが奪われてしまったとも解釈できる。
ただしそれは「静音」を軸に見るからある。ファン本来の役割に立ち返り、「冷却性能」を重視したトータルバランスによって、自分のシステムに合ったファンをチョイスし、正解を見つけていくという作業はやはり楽しいもの。CPU温度やケース内温度の結果として表れるだけに面白く、奥が深い。
今回取り上げる「Turbine Masterシリーズ」は、そんなニーズにも応えることができる“風量があって静音で稼働する”汎用ファンとしてリリースされている。この理想的なバランスを実現するファンには、いろいろなギミックが隠されていた。早速そのギミックの数々を見ていきたい。
|低回転で大風量。相反する課題に挑戦した「Turbine Master」
ここで3種類の回転数が用意された「Turbine Masterシリーズ」のネーミングについて触れておきたい。
製品シリーズ名の「タービン」とはラテン語で「回転」を意味し、それぞれの回転数には「MACH 0.8」(800rpm)、「MACH 1.2」(1,200rpm)、「MACH 1.8」(1,800rpm)と、「マッハ」という単位が用いられている。
これら「タービン」、「マッハ」というキーワードから“高速回転”を連想
する人も多いことだろう。しかしその特異な形状に目を向けると、航空機の両翼に搭載されるジェットエンジンに酷似している事が分かる。(ジェットエンジンモチーフと言えば、Cooler Masterから2003年にリリースされた「JET 7」というCPUクーラーがリリースされている)
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「Turbine Master」のブレードデザインと特に似ているのが航空機B777-200搭載の高バイパスターボファンエンジン「P&W PW4000」(ブレード枚数は22枚)。非常に密度が高く、大きな風量が得られるようにデザインされている。
(協力:ANA機体メンテナンスセンター/撮影:筆者) |
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普段利用する民間航空機のエンジンは、ナセルと呼ばれるカバーに覆われ、空気の取り入れ口(intake)となるコールドセクション前端部には巨大なファン(ナローボディの航空機で採用されるジェットエンジンのファン直径は3m前後)が搭載されており、それを燃焼室に送り込むという重要な役割を果たしている。
効率よく風量を生み出し、燃焼部にエアフローを送り込むジェットエンジン。そして120mmという口径で従来品よりも多くの風量を得ようとデザインされた「Turbine Masterシリーズ」。両者は異なりながらも、共通の目的を持っていると言えるのだ。
|「Turbine Masterシリーズ」は全3モデルラインナップ
ここからは実際に「Turbine Masterシリーズ」の検証を行ってみよう。
「Turbine Master」は3モデルが用意されている。「MACH 0.8」(800rpm)、「MACH 1.2」(1,200rpm)、「MACH 1.8」(1,800rpm)と、いずれも“マッハ”(またはマック)のネーミングと、その後に付けられた数値で各回転数が判別できる数字の組み合わせになっている。ジェットエンジンを模したデザインが採用されているだけに、音速を想起させる演出ながら、決して高い騒音値で稼働するという事ではない。
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「Turbine Masterシリーズ」は、いずれもブリスターパッケージを採用。サイズは130×180×30mm(突起部除く)で、全体はブラックカラーデザイン |
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Turbine Master MACH 1.8 |
サイズ |
120mm×120mm×25mm
軸カバー取付時120mm×120mm×39mm |
回転数 |
1,800rpm±10% |
風量 |
80.3CFM±10% |
静圧 |
1.96mmH2O |
騒音値 |
30.5dBA |
軸受 |
Barometricボールベアリング |
寿命 |
100,000時間 |
動作電圧 |
直流12V |
動作電流 |
0.38A(最大0.5A) |
消費電力 |
4.6W(最大6W) |
質量 |
123.7g |
コネクタタイプ |
3ピン |
付属品 |
取り付け用ゴムネジ×4/
取り付け用金属ネジ×4
振動防止用ゴムパッド×4/3ピン→ペリフェラル4ピン電源変換ケーブル×1/軸カバー×1 |
Turbine Master MACH 1.2 |
サイズ |
120mm×120mm×25mm
軸カバー取付時120mm×120mm×39mm |
回転数 |
1,200rpm±10% |
風量 |
56.5CFM±10% |
静圧 |
0.91mmH2O |
騒音値 |
21.1dBA |
軸受 |
Barometricボールベアリング |
寿命 |
100,000時間 |
動作電圧 |
直流12V |
動作電流 |
0.19A(最大0.4A) |
消費電力 |
2.3W(最大3.6W) |
質量 |
123.7g |
コネクタタイプ |
3ピン |
付属品 |
取り付け用ゴムネジ×4/
取り付け用金属ネジ×4
振動防止用ゴムパッド×4/3ピン→ペリフェラル4ピン電源変換ケーブル×1/軸カバー×1 |
Turbine Master MACH 0.8 |
サイズ |
120mm×120mm×25mm
軸カバー取付時120mm×120mm×39mm |
回転数 |
800rpm±10% |
風量 |
35.07CFM±10% |
静圧 |
0.42mmH2O |
騒音値 |
13.83dBA |
軸受 |
Barometricボールベアリング |
寿命 |
100,000時間 |
動作電圧 |
直流12V |
動作電流 |
0.8A(最大0.2A) |
消費電力 |
0.96W(最大2.4W) |
質量 |
123.7g |
コネクタタイプ |
3ピン |
付属品 |
取り付け用ゴムネジ×4/
取り付け用金属ネジ×4
振動防止用ゴムパッド×4/3ピン→ペリフェラル4ピン電源変換ケーブル×1/軸カバー×1 |
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|ファンの周囲からも空気を取り込むセミフレームレス設計
「Turbine Masterシリーズ」は“低速回転(静音性)でより大きな風量を生み出そう”というコンセプトから、「セミフレームレス設計」が採用されている。
通常のファンはフレーム幅(厚:一般的に25mm)内にブレードが収められているが、「セミフレームレス設計」はフレームからブレードが露出するという特殊なデザインを採用(フレーム厚は実測値で15.4mm)。ブレードに対して直線的な従来のエアフローに加え、露出した側面360度方向から空気を取り込む事ができる。この結果、理論上、低速回転でより多くの風量が得られるというわけだ。これだけを見ても「Turbine Masterシリーズ」が“ただのファンではない”事は容易に想像できるだろう。
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