「エルミタ的速攻撮って出しレビュー」
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エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.76 ファン換装でPCをチューンしよう Cooler Master「Turbin Masterシリーズ」検証
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通常フレームと「Turbine Masterシリーズ」の風量比較
このチャプターからは、実際に「Turbine Masterシリーズ」を動かし、そのポテンシャルをチェックしていく。
イントロダクションでも触れた通り、「Turbine Masterシリーズ」は通常のファンと比較し、「セミフレームレス設計」を採用するという特徴を持っている。まずはメーカー側が公表しているフレーム違いによる風量(CFM)比較表をご紹介しておこう。
この結果から、それぞれ「MACH 1.8」で13CFM、「MACH 1.2」で11.77CFM、「MACH 0.8」で5.25CFMの風量増が示されている。
決められた120mmという口径サイズから生み出される風量は回転数に大きく依存することは言うまでも無い。ただし風量を稼ぐために回転数を上げる事で、騒音値は上昇してしまう。近ごろのPCケースは、多くのファン搭載スペースが用意されている。必要箇所に必要風量のファンを上手に選びたい。
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「Turbine Master」単体での騒音値/回転数を実測
次に「Turbine Masterシリーズ」3モデルをPCケースに組み込まない状態で個別に稼働させ、騒音値および回転数をチェックしてみよう。
計測方法は室内騒音値29.8dBA環境で、ファンのみに通電。デジタル騒音計を用い、ファンの吸気側から30cmの位置でそれぞれを計測してみる。なお比較用としてCooler Master
「A12025-20RB-3BN-F1」
(120×120×25mm)を用意。これを「標準タイプ」とし、その違いにも注目してみたい。
デジタル騒音計によるファン単体騒音値テスト(ファンからの距離は30cm)
測定機材:TM-102(国際規格IEC651 TYPE2適合)
デジタル騒音計による騒音値テスト結果
公称値:
MACH 0.8
:13.83dBA、
MACH 1.2
:21.2dBA、
MACH 1.8
:30.5dBA
実際に稼働させてみた結果、
「MACH 0.8」35.7dBA(公称値13.83dBA)
、
「MACH 1.2」38.2dBA(公称値21.2dBA)
、
「MACH 1.8」44.8dBA(公称値30.5dBA)
と、公称値とは大きな違いがある事がわかった。なぜこのような結果がでるのか?それは測定方法にある事は言うまでも無い。
一般的にファンの騒音値測定には、「JIS B8330」という国際規格があり(注意※すべてのPC用ファンがそれに準拠しているわけではない)、本来であれば、風の吸い込み口から1mの地点で計測を行った値が公表されている。市販の汎用ファンに表示されている騒音値については、詳細の測定方法までは開示されていないため、実際のところ基準はバラバラという可能性が高い。
今回吸い込み口から30cmの距離で計測してみたのは、編集部のデジタル騒音計が28dBA以下の正確な数値が出せない事、さらに暗騒音室のような状態が作れないためで、生活騒音の中で稼働させるPCファンのより現実的な音の数値を把握しておこうと考えたからだ。(実際に1mはかなりの距離になる)
もう一度計測結果について触れておくと、3モデル共に公称値よりも10dBA以上の高い数値だが、実際に耳で感じる音は静かな部類。回転音も非常に滑らかな印象で、一般的なファンとは明らかに違う。ただし最大回転モデル「MACH 1.8」は、生み出される風量(80.3CFM±10%)が多い反面それなりに風切り音は発生しているのは致し方ない。
次に回転数をチェックしよう。「Turbine Master」にはパルスセンサーケーブルがあるため、BIOSを初めとする各種モニタツールで計測できるが、より正確な数値を得るためにデジタル回転計を使用した。
デジタル回転計による回転数テスト結果
公称値:
MACH 0.8
:800rpm、
MACH 1.2
:1,200rpm、
MACH 1.8
:1,800rpm
回転数の公称値は±10%で表記されているため、それぞれ交差の範囲内に収まっている。また比較用標準タイプ「A12025-20RB-3BN-F1」は、バルク状態で借り受けたため素性がまったく分からなかったが、計測結果から恐らく公称値1800rpmの120mmファンらしい事が分かった。
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「Turbine Masterシリーズ」を実際に組み込んでみる
では実際に「Turbine Masterシリーズ」を動かしてみよう。ここでは実際にPCを組み込み、同シリーズ3種類それぞれの実稼働時騒音値およびケース内温度をモニタしたいと思う。なおテストで使用した機材構成は以下にまとめた通り。
テスト機材構成
CPU
Intel「Core i5-2500K」
(Sandy Bridge/LGA1155/3.30GHz/TDP95W)
マザーボード
ASUSTeK「P8P67 DELUXE」
(Intel P67 Express)
グラフィックスカード
SAPPHIRE「SAPPHIRE HD6970 2G GDDR5」
(型番:21179-00-40R)
メモリ
CORSAIR「CMZ8GX3M2A1600C8」
8GB(4GB×2枚)PC3-12800(DDR3-1600MHz
HDD
Western Digital「WD10EARS」
電源ユニット
Cooler Master「Silent Pro Gold 800W」(RS-800-80GA-D3)
(80PLUS GOLD/ATX12V Ver.2.3/EPS12V Ver.2.92)
CPUクーラー
Cooler Master「Vortex Plus」(RR-VTPS-28PK-R1)
(W116×D100×H58.5mm/ファン92×92×25mm/800〜2800rpm.15.7〜54.8CFM/17〜35dBA)
OS
Windows 7 Professional 64bit
Elite 430 Black(RC-430-KWN1)
製品情報(Cooler Master)
カラー:ブラック(内部共)
サイズ:W190×H424×D490mm
重量:約4.7kg
対応フォームファクタ:ATX/MicroATX
5.25インチ:3段/3.5インチ:2段
3.5インチシャドウベイ:5段
フロントI/O:USB2.0×2/ヘッドフォン×1/マイク×1
拡張スロット:7
ファン:前面120mm×1(BlueLED/140mm換装可能)/リア120/90mm×1(オプション)、トップ120mm×2(オプション)、底面120/90/80mm×1(オプション)、左側面140/1200mm×1(オプション)
PCケースには
Cooler Master「Elite 430 Black」(型番:RC-430-KWN1)
をチョイスした。執筆時点での実勢価格は税込7,000円前後で、2010年7月16日にリリースされている。内外装共にオールブラック塗装が施され、サイドパネルは面積の広いアクリル窓仕様。電源ユニットボトムレイアウトを採用し、ファン搭載スペースも合計6箇所と、エントリークラスながらスペック上のポテンシャルは非常に高い。
なおリア排気ファンに前出のCooler Master「A12025-20RB-3BN-F1」(120×120×25mm)を装着し、フロント(標準搭載)およびリア各1基の標準的構成時と、リア排気「Turbine Master」装着時、それぞれの数値を計測してみる事にした。
【関連記事】
[新製品] エントリークラスのオールブラックミドルタワー、CoolerMaster「Elite 430 Black」発売(2010/7/8)
http://www.gdm.or.jp/pressrelease/201007/08_01.html
「Turbine Master」を装着してみたところ。CPUクーラーには同じくCooler Masterブランドの「Vortex Plus」(RR-VTPS-28PK-R1)を使用した
「取り付け用ゴムネジ」で「Turbine Master」を固定。防振効果が期待でき、工具無しで簡単に装着ができる
比較用に用意した標準タイプ120×120×25mmファンは、「A12025-20RB-3BN-F1」(DV12V/0.37A/3pin)だ
「Turbine Master」(上)とテスト用標準ファンのブレード比較。こうして並べてみると、まったく違ったタイプのファンである事がよく分かる
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高負荷時でのケース内部温度計測
温度21.3℃/湿度33%の室内でPCに高負荷状態を作り、それぞれのケース内部温度を計測した。計測には一般的なデジタル温度計を使用。センサーは5.25インチドライブベイ最上段とCPUクーラーの中間点とした。
室内温度:21.3℃ 湿度33%
結果、最大風量「MACH 1.8」(1,800rpm)が23.2℃と最も低く、その他も風量に比例した数値がきれいに表れた。特筆すべきは、わずか800rpmの「MACH 0.8」と標準ファン(1,800rpm)の温度差が0.2℃しかない点。さらに1,800rpm同士の「MACH 1.8」と標準ファンの温度差に2.3℃もの開きがある事。この結果をみるだけで、「Turbine Masterシリーズ」の冷却能力の高さがよく分かるだろう。
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実使用時を想定したケース装着時での騒音値を計測
次に「Elite 430 Black」のリア排気部に「Turbine Masterシリーズ」を装着した状態での騒音値を計測した。先ほど行った騒音値テストはケースに組み込まない状態での単体状態だった。しかし汎用ファンである以上、通常はPCの構成部品として稼働させる事になる。ここではより実使用時を想定した騒音値を計測してみたい。なお計測はアイドル状態で、PCケースから15cmの位置とした。
ちなみにPCケース構成パーツ中、駆動音を発するのは電源ユニット搭載120mmファン(自動可変)、ケース標準搭載フロント吸気120mmファン(騒音値非公開)、そしてCPUクーラー「Vortex Plus」の92mmファン(800〜2800rpm.15.7〜54.8CFM/17〜35dBA)の3つと、HDDのシーク音となる。(グラフィックスカードはファンレスタイプを使用)
室内温度:21.3℃ 湿度33%
今回のシステム構成では、背面ファンを含め5つの騒音源がありながら、先ほどの「Turbine Masterシリーズ」単体騒音値計測結果とそれほど変わらない。これには2つの要因が考えられる。
ひとつは単体計測時に比べファンがPCケース背面に位置し、距離が長くなっているためであり、さらにPCケースに収めることで、音がある程度閉じ込められているためだ(構成パーツがそれぞれ非常に静かという点も忘れてはならない)。大風量でやや騒音値が高めの印象だった「MACH 1.8」でさえ42.2dBAという結果は、十分実用レベルと言ってよいだろう。
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総評:額面通りの汎用ファン「Turbine Masterシリーズ」
「エルミタ的速攻撮って出しレビュー」では初の試みとなった汎用ケースファン検証。そもそもCPUやマザーボード、グラフィックスカード等に比べれば、影の存在である事は間違いない。しかし今回「Turbine Masterシリーズ」の検証を通し、フレームデザインをはじめインペラ形状および枚数、そして回転数などさまざまな組み合わせにより、ファンの性格が決められている事がお分かり頂けたのではないだろうか。
Cooler Master「Turbine Masterシリーズ」は、これまでに無いデザインを採用する製品だったが、標準タイプのファンとのアドバンテージもテストを通じて確認することができた。また実際に単体で稼働させただけでも汎用ケースファンとはまったく違う事は誰もが明確に感じる事ができるだろう。
メーカーが謳う独自の特徴は、“やや眉唾的”な事が多いが「Turbine Masterシリーズ」に至ってはほぼ額面通り、ひとつひとつのギミックが説得力を持っており、比較的手軽に行う事ができるエアフローチューン用アイテムとしては秀逸な製品と言って良いだろう。各々風量を必要とする箇所に適切な回転数のモデルを設置すれば、より安定した稼働や構成部品の製品寿命延長にも貢献してくれるかもしれない。
このレビューを通して、少しでも汎用ケースファンに興味を持って頂けたならば、愛用自作PCの冷却周りを見直してみてはいかがだろうか。
次にCooler Master既存のケースファンラインナップをご紹介しよう。「Turbine Masterシリーズ」との組み合わせで、エアフローチューンに挑戦してみては?
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Turbine Master MACH 0.8
(R4-TMBB-08FK-R0)
メーカー製品情報
120×120×25mm
800rpm±10%/35.07CFM±10%/13.83dBA
Turbine Master MACH 1.2
(R4-TMBB-12FK-R0)
メーカー製品情報
120×120×25mm
1,200rpm±10%/56.5CFM±10%/ 21.1dBA
Turbine Master MACH 1.8
(R4-TMBB-18FK-R0)
メーカー製品情報
120×120×25mm
1,800rpm±10%/80.3CFM±10%/30.5dBA
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