エルミタ的業界インタビュー「オピニオン」 Vol.4 帰ってきたエルミタ的成田空港現場対談 Intel 6シリーズ不具合問題とその顛末。前編

　「エルミタ的速攻撮って出しレビュー」番外編

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2011年3月21日 14:58
TEXT：GDM編集部松枝清顕

　エルミタの隠れた人気コンテンツ、「エルミタ的成田空港現場対談」が急遽実現した。お馴染み某大手メーカーに勤務するテクニカルマネージャー・Patric Chen（陳俊晧）氏が緊急来日。慌ただしいスケジュールの合間を縫って、今回も迷惑千万な取材依頼を敢行、現場対談が実現した。
　このタイミングでの話題の中心は、なんと言ってもIntel 6シリーズチップセットの不具合問題。何か知っているはずだと真っ先に尋ねてみると、意味深に笑うPatric氏。今回も期待通り、実に濃い話をじっくり伺うことができた。

第1ターミナルで時間調整中、新塗装「鶴丸」ことB767-300（346/ER）JA654Jに遭遇。待ち時間を持て余した筆者は公私混同、第1ターミナルデッキへ。「この時間になると逆光なんだよなぁ」とぶつぶつ

｜再会の喜びそっちのけ。Intel 6シリーズ不具合問題と顛末

編集部：
　スピードの速い自作業界だけに、前回の対談から随分台湾の自作市場も様変わりしていると思います。その点をいろいろ聞きたいところですが、まずはIntel 6シリーズチップセットの不具合問題からお伺いしなくてはなりません。日本では大騒動でしたが台湾市場はいかがでしたか？

［障害情報] Intel 6シリーズチップ（Cougar Point）に不具合で出荷停止＆リコール(2011/2/1)

Patric：
　意外に冷静でしたよ。発売後1ヶ月も経たないうちに不具合が発覚したIntel 6シリーズですが、台湾の光華商場では正式発表後も一部のお店では普通に売っていました。さすがに買う人は少なかったみたいです。どの世界でもある事ですが、ネット上のアンチIntel派は春節（旧正月）前のお祭りのような状況でした（笑）。

編集部：
　日本では即日販売停止となり、せっかく盛り上がっていたIntel 6シリーズチップセット搭載のマザーボード陳列棚がたいへんな事になっていました。急遽LGA1366（X58 Express）を売ろうなんて雰囲気も。

発売後、1ヶ月を待たずして販売停止に追い込まれたIntel 6シリーズチップ搭載マザーボード。売れ行き好調だっただけに、業界内でのショックは大きかった

Patric：
　日本ではP55/H55 Expressのマザーボードから入れ替えてしまっていたんですね。台湾ではまだまだ流通していたことから騒動直後、たくさんのP55/H55 Expressマザーボードが売れましたよ。またCPUではIntel Core i5-760の人気が急上昇し、価格が一時的に高騰したんです。ショップが強気に出たんですね。それでも必要な人は買って行く。

編集部：
　それは凄いなぁ。ちょっと待てば修正版が流通する事が分かっていてもなんですね。

Patric：
　初物に手を出さない的な所も強く、さらにヘビーユーザーでもない限り、5シリーズと6シリーズのパフォーマンスによる違いはさほど大きくないと見ている人が多くいます。日本人ならば深夜でも早朝でも並んでしまう（笑）。台湾ではまずあり得ないですね。深夜販売など、かなり奇妙に見える。

編集部：
　カルチャーの違いですね。ところでB3ステッピングのマザーボードの入荷はさすがに早かったですね。と言っても日本と数日の違いでしたが。

Patric：
　初回出荷量が多かったメーカーは、交換用修正版を製造するのに時間がかかる。逆にあまり人気が無かったメーカーは、すぐに対応ができる。そういった事情があった。

編集部：
　交換対応はいかがでしたか。日本ではメーカー主導で代理店がその窓口となり、交換プログラムが当初予定よりも早くスタートしましたが。

Patric：
　台湾は代理店文化ではないので、基本的にショップも窓口となっています。ただしすぐに交換はされない事がある。ある程度交換数を把握した上で、一気に片付けてしまおうという作戦のようです。ちなみにMSIはSATA2.0増設カードを配布しましたよね？マザーボードの交換か、増設カードの提供の2択でしたが、SATA2.0増設カードが無償でもらえるという事で、かなり喜んでいる人がいましたよ。「儲かった」と（笑）。

編集部：
　別に儲かっちゃいない、、、

Patric：
　そうなんですけどね。MSIの対応を評価するユーザーは多く見受けられました。

｜Intelは不具合をかなり初期の段階から知っていた？

編集部：
　しかし過去にも同じような事がありましたがIntelのチップセットに関する不具合は、いちメーカーに留まらず、マザーボードベンダーから代理店、販売店、そしてユーザーまで、影響は計り知れないですね。

Patric：
　今回の騒動はこれまでの不具合とは違うインパクトがありました。それだけ市場の期待が大きく、大キャンペーンを打ちましたからね。ちなみに打撃を受けた人たちにPC雑誌の存在も忘れてはいけません。当然発売時期に合わせてSandy Bridge特集を大きく組んだワケですが、雑誌発売日直後に回収ですからね。あれは気の毒としか言いようがない。

編集部：
　Webメディアならばいろいろ手もありますけどね。ところで今回の不具合の発表ですが、唐突な感じはありましたか？

Patric：
　ありました。事前にあまり情報が流れなかった。

編集部：
　旧正月直前で、さぞや台湾ベンダー各社は慌てたでしょう。

Patric：
　とあるマザーボードのPM（プロダクトマネージャー）は怒ってましたよ。当然休日は返上。中には旅行を計画していた人もいて、フライトをキャンセルしてました。
　私たちの間では、あのタイミングでの発表に色々憶測が流れています。なぜ旧正月直前に発表したのか？真意は定かでは無い事をお断りしておきますが、Intelはもっと前の段階でSATA2.0ポートの不具合を認識していたのではないかと言われています。具体的な事は伏せておきますが、工場もお休みに入り、台湾国内が春節一色になるタイミングに公表する事で、騒ぎを最小限に抑える狙いがあったのではないかと。

編集部：
　ある意味、ほとぼりを冷ます、、、ということですか。

Patric：
　はい。ごく一部の担当者は休日返上ですが、実際に修正版のチップが入荷するわけでもなく、動きようが無い。ただし、ある程度のマージンをおくことで、各々準備ができると踏んだ、という説が大勢を占めています。口の悪い人は「Intelの裏ロードマップだ」と冗談を言う人もいました（笑）。

編集部：
　ではもう少し前の段階でIntelは認識していた可能性があるという事ですね。

Patric：
　計り知れないほどの大企業なので、調整の時間も必要である事は理解しなくてはいけません。ただし旧正月の直前というタイミングから、いろいろな憶測が出てしまうこと自体は、もしかすると想定外だったのかもしれない。結果論ですが、台湾にとってはいい迷惑でした（笑）。

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