2017.12.11 00:00 更新
2017.12.10 取材
ROSSO(赤)とNERO(黒)を纏ったスタイリッシュなケーブルを作る、エスエスエーサービスとはオレたちのこと。密かにサプライ業界の天下を狙うアキバのケーブル屋さんが、ケーブルの魅力を解説する「はじめてのケーブル道」。ケーブルに欠かせない「USB(Universal Serial Bus)」のすべてを振り返る「USB全史」の第4回は、「USB 3.1」規格化に前後して登場した電力拡張規格の「USB Power Delivery(USB PD)」を取り上げます。
どうもこんにちは、ROSSO(赤)とNERO(黒)のカッコいいケーブルでアキバでもお馴染み、エスエスエーサービスの担当Tと申します。「USB全史」と題してUSBのアレコレを総ざらいする連載も4回目、前回は革新的なコネクタとして登場した「Type-C」を紹介しましたね。「USB 3.1」の規格化に際しては、大きな刷新や新しい機能の付与がいくつもありましたが、「Type-C」はその象徴のようなものでした。今回はその「Type-C」とも関係が深い、電力拡張規格の「USB Power Delivery(USB PD)」を取り上げようと思います。実は前回にもチラリと触れているのですが、あらためて深く掘り下げてみようというワケですね。
USB規格をざっくり解説する「USB全史」、第4回は電力拡張規格の「USB PD」を特集する。最大100Wという大電力をケーブル1本で供給、ノートPCへの給電も可能になった |
USBの電力拡張規格といえば、従来のUSB規格では「USB Battery Charge(USB BC)」がありました。「USB BC」の出力は最大で7.5Wまで、その名の通り主にバッテリーへの給電を想定した規格です。それが徐々に要求が拡大して、もっと大きな電力を使って色んな機器をUSBで動かそう、という流れが出てくると、さすがに力不足になってきます。
そこで颯爽と登場したのが、「USB BC」を発展させた最新の拡張規格「USB PD」です。供給可能な電力はなんと最大100W!ノートPCやディスプレイもケーブル1本で駆動させられる、給電ケーブルとしてのUSBの概念を変える規格になりました。
手持ちの「USB PD」対応USB充電器「PowerPort+5」(アンカー製)をチェック、刻印から「USB PD 2.0」のオプションパワールール準拠であることが分かる。試しに「Nintendo Switch」に給電、電圧は15Vまで出ているようだ |
それでいったいどんな風に給電を行っているかというと・・・策定されたものの普及までは至らなかった「USB PD 1.0」では、「5V/2A、12V/1.5A、12V/3A、12V/5A、20V/3A、20V/5A」の6つのプロファイルに分かれていました。それが「USB PD 2.0 ver1.2」以降については、「15W:5V1.5A、5V/3A」「27W:9V/3A」「45W:15V/3A」「60W~100W:20V/3A~5A」を基準とした「パワールール」に改められます。これまでのUSB電圧は5Vに固定だったところ、対応機器に応じて4種類もの電圧を使うようになったというワケですね。(オプションでルール以外の電圧/電流も設定できます)
さらに現行の「USB PD 3.0」では、新たにケーブルに機器認証の規定が盛り込まれました。大電力を扱う関係上、規格外のケーブルが使われた場合には供給電力を制限して安全性を確保しよう、という狙いですね。
「USB PD」が採用する規格コネクタは「Type-C」。ちなみに残念ながら、エスエスエーでは現状PD対応ケーブルのラインナップはなし |
ちなみに「USB PD 1.0」が策定された当初は、まだUSB A/Bコネクタの使用が想定されていました。ところが「USB PD」として初めて正式に制定された「USB PD 2.0」が、USB新規格の「USB 3.1」に盛り込まれたことで、規格コネクタには「Type-C」が採用されます。つまり「USB PD」では給電可能な対象が大幅に拡大しつつ、それらに共通の「Type-C」で接続できるようになったんですよ。電力供給は「パワールール」によって規格化されていますから、しばらくすれば機器ごとにバラバラだったコネクタ、電源・充電器も共通化できるのかもしれません。
「USB PD」では、どのデバイスがホストをとるか選択できる「ロールスワップ」に対応している。試しにモバイルバッテリーの電源を起動させてからPC(GPD Pocket)に接続すると、相互通信でホストを判断。バッテリー→PCの向きに給電が開始されている |
それと「Type-C」は従来のType-A/Bと違って、ホストとデバイスでコネクタが共用になったのはご存知の通り。そこへきて「USB PD」には、どの機器がホストを取るかをソフトウェアで制御できる「ロールスワップ」という機能があるんですよ。電力の向きを機器側で選択できるので、スマホを使って別のスマホを充電するなんて使い方も可能なんです。
さらに「USB BC」では通信線をショートさせて急速充電を行っていましたが、結線に余裕がある「Type-C」を使う「USB PD」には、専用の通信線(CC)が用意されています。最大100Wの大電力を供給できるのに、ちゃんとデータ通信も維持できる。「USB PD」と「Type-C」を飲み込んだ「USB 3.1」って、あらためてスゴいUSB規格なんだなぁと実感しますね。
まだUSB PD対応製品がないエスエスエーだが、なんとType-Cもない時代にmicroUSBオス-オスのホストケーブルを発売していた。Type-Cのように双方向ではなく、内部結線でどちらがホストをとるか強制的に決定させている | それで対応製品はいつ出るの?実はちょうどいま仕込み中なんです。エスエスエーのUSB PD対応製品第1弾は、新年一発目のプロダクトとして投入予定 |
さて、最新の電力拡張規格「USB PD」について特集した「USB全史」の第4回はここまで。次回の「はじめてのケーブル道」では、そんな「USB 3.1」体制下における別の充電規格について、アレコレお話しましょう。
文: エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一
株式会社エスエスエーサービス: http://ssa.main.jp/