エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.777
2019.09.23 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
グラフィックスカードの搭載テストには、以前詳細検証をお届けしたMSI「GeForce RTX 2080 Ti LIGHTNING Z」を用意した。3スロット占有デザインのハイエンドモデルは長さ328mmで、圧巻の3連ファンVGAクーラー「TRI-FROZR」が搭載されている。
グラフィックスカードの固定には、通常とは違った手順を踏む。まず拡張スロット右手縦列にハンドスクリューで固定されている、メタル製のカバーを外す。これで拡張スロットの固定ネジが露出するので、搭載に必要なブラケットを取り外し、グラフィックスカードの拡張スロット金具をインチネジで固定。メタル製カバーを元に戻せばいい。
メタル製カバーに隠された拡張スロットのネジ固定部。グラフィックスカードは筐体外部でネジ留めする仕組み | メタル製カバーを元に戻すと、ネジ固定部を全て隠してくれるというワケだ |
MSI「GeForce RTX 2080 Ti LIGHTNING Z」搭載後のクリアランスは、フロントパネルまで約60mm強。超ハイエンドグラフィックスカードのマウントになんら問題はない |
次にグラフィックスカードをより魅せるため、垂直マウントを試した。手順はリア拡張スロット横のカバーを外し、付属品であるVertical GraphicsCard Holderの上下2箇所をネジ留め。グラフィックスカードを垂直固定し、カバーに装着されているプラスチックのフタを外して元に戻せばマウントは完了する。
なお垂直マウントは2スロットタイプまでのグラフィックスカードに限定されるため、テストにはMSI「GeForce GTX 1660 Ti GAMING X 6G」を用意。VGAクーラーの冷却ファンが強化ガラス製左サイドパネルと平行になり、カバーに内蔵されたRGB LEDのイルミネーションを楽しむことができる。必須となるライザーケーブルは別途用意する必要があるものの、魅せるPCを構築するには”ハズせない”搭載スタイルであることは間違いないだろう。
内部容積の広いPCケースだけに、本格水冷を目論む自作派も少なくないだろう。だが今回の検証では、導入のハードルが低いオールインワンタイプの簡易水冷をチョイスした。用意したのはCooler Master「MasterLiquid ML240P Mirage」(型番:MLY-D24M-A20PA-R1)だ。240mmサイズラジエターを備え、ポンプと冷却ファンにアドレサブルRGB LEDを内蔵。パッケージにはMSI Mystic Light Syncのロゴが確認できる。
このモデルには、フロントに280mmサイズまで、トップに360mmサイズまで、リアに140mmサイズまでのラジエターが搭載可能。今回は240mmサイズラジエターをトップ部に固定した。理由はCPUに近い場所で設置がしやすいこと、加えて「MPG SEKIRA 500X」には天板下にモジュラー式ラジエーターブラケットが装備されており、簡単にラジエターが搭載できる。これを使わない手はないだろう。
モジュラー式ラジエーターブラケットは左右2本のハンドスクリューで固定。スライド着脱式でラジエターのネジ留め作業が楽に行うことができる |
モジュラー式ラジエーターブラケットには冷却ファン固定用のスリットが設けられており、ラジエターの固定位置が調節可能。ウォーターチューブにストレスがかからず、周辺パーツと干渉しないポジションが選択できる。すこぶる使い勝手がいい。
360mmサイズサポートのトップ部に240mmサイズラジエターを固定。空きスペースから、「MPG SEKIRA 500X」のサイズ感がより際立つ |
搭載に関して特に注意点はなく、マニュアル通りに作業を進めれば問題はない。ただし大型PCケースだけに、バックプレートにネジ留めするウォーターブロック装着作業は多少やりづらい。誰かの手を借りるか、マザーボードをトレイにネジ留めする前に作業を終わらせるか。余計なトラブルを引き起こさないためにも、事前にシミュレーションが必要だろう。
最後にストレージの搭載テストをご紹介しよう。メインとなるボトムカバー(シュラウド)内部の3.5インチ対応シャドウベイは、レバー開閉式の専用トレイを4つ装備。ABS樹脂素材の弾力性を活用し、両端に備え付けのピンを、HDDのネジ穴にセット。ツールフリーでマウントができる。コネクタはマザーボードトレイ側に向け、専用トレイは元の位置に戻せばいい。
2.5インチSSDは、専用トレイをマザーボードトレイ背面とボトムカバー上部に用意。ブラケットはいずれもハンドスクリュー1本で固定されており、SSDのマウントは一旦取り外した状態で行う。こちらは工具(ドライバー)を必要とし、底面4本でネジ留め。3.5インチHDD共に、一般的なPCケースと同様の搭載方法が採用されている。
レバー開閉式の専用トレイ。デフォルトでは計4台の3.5インチHDDまたは2.5インチSSDが収納できる |
コネクタは右側面方向に向けて固定。裏配線スペースは実測で約40mmだった。なお電源ユニットのスペースを確保すべくシャドウベイユニットを取り外した場合、付属の金属製プレートHard Drive Coveで穴を塞ぐ事ができる |
ボトムカバー上に2.5インチSSDを固定。コネクタはスルーホールに向けてマザーボードトレイ側に固定 | CPUクーラーメンテナンスホール下は、左向きにコネクタを向けて固定。SATAケーブルへのストレスを最小限に設置できるはずだ |
「MPG SEKIRA 500X」の製品画像を眺めると、誰もが鮮やかなイルミネーションで装飾された、イマドキの魅せるゲーミングPCケースと感じるだろう。その見方は間違いではないが、実機に触れ検証を進めていくと、かなりヘビー級なフルタワーPCケースという印象が強い。
そもそも19.85kgもある重量は、構成パーツを組み込むにつれ増加。ハイエンド構成で1台を完成させれば、そう易々と移動もできなくなる。4mm厚の強化ガラスをふんだんに使ったPCケースとなれば当然のことだが、事前に設置場所は考えておいた方がいいだろう。
重量級PCケースのネガティブな部分は移動のしにくさだが、一方でどっしりと構えた存在感は圧巻。華奢で安価なPCケースが多い中、これほどまでに剛性が高く、押し出しの強いPCケースはそう多くない。作りがしっかりとしたハイエンドPCケースを手に入れるには、税込3万円台の出費は必要経費。十分に価値はある。
一見大味にも見えたが、細部をチェックしていくと、考えられたエアフロー設計や、シンプルながら収納力と使い勝手のバランスが取れたドライブベイレイアウト、MSI Mystic Light Sync対応のイルミネーションなど、見どころがたっぷりと詰め込まれていた。自作PCを熟知したベテランから、これから経験値を積み重ねていく自作派まで、幅広くカバーしてくれるのが「MPG SEKIRA 500X」なのだ。
協力:Micro-Star Int’l Co.,Ltd.