エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1104
2022.02.09 更新
文:編集部 絵踏 一/撮影:松枝 清顕
続いては、「B660M DS3H AX DDR4」が搭載するPCI-Express4.0(x4)対応のM.2スロット用のために用意された、専用ヒートシンクの効果をチェックしておこう。2つのスロットの片方には「M.2 Thermal Guard」が装備されており、NVMe M.2 SSDをシングル構成で組み込むなら、別途ヒートシンクを調達する必要がない。
そこで標準装備のヒートシンクが十分な冷却効果を発揮しているのか、ベンチマークテストの「CrystalDiskMark 8.0.4」で確かめてみよう。検証に使用したSSDは「AORUS Gen4 SSD」シリーズの1TBモデル「GP-AG41TB」。テストはデータサイズ64GiB、テスト回数を9回という重い負荷をかけ、3回連続でベンチマークを動作させた。
CrystalDiskMark 8.0.4(ヒートシンクあり/連続3回目) |
「AORUS Gen4 SSD」シリーズの転送速度は、シーケンシャル読込5,000MB/sec、書込4,400MB/sec、ランダム読込750,000 IOPS、書込700,000 IOPSというもの。データ量の大きいテストのため公称値と差があるのは当然として、連続3回目のテストとしてはかなり健闘している。
そこで転送速度の推移と温度を見てみると、「AORUS Gen4 SSD」シリーズがサーマルスロットリングのしきい値が低め(60℃台後半から70℃程度)であるため、読込でやや乱れが出ていることが分かる。それでも最大温度は72℃までであり、選ぶSSD次第ではサーマルスロットリングを一切発生させない運用が可能だろう。
CrystalDiskMark 8.0.4(ヒートシンクなし/連続3回目) |
さらに比較のため、ヒートシンクを装着しない状態での挙動も見ておこう。「CrystalDiskMark 8.0.4」のスコアだけを見ると、一部性能に落ち込みはあるものの、こちらも全体的に健闘しているという印象。しかしその影で温度は最大80℃を超えてしまっており、グラフ波形も大きく乱れ、一貫した性能発揮が不可能になっている。必須装備と言えるヒートシンクがない状態では、安定してSSDの性能を引き出すことができないというわけだ。
ヒートシンクあり:アイドル時 | ヒートシンクあり:高負荷時 |
ヒートシンクなし:アイドル時 | ヒートシンクなし:高負荷時 |
また、動作中の様子をサーモグラフィで確認してみると、その違いは明らか。装着時はコントローラの発熱がバランス良く伝えられ、ヒートシンク全体で効率よく冷却できている。その一方で未装着時は全体的に発熱が高いのはもちろん、コントローラ付近のスポット温度も抜きん出て高い。SSDの寿命を考慮した場合でも、ヒートシンクを装着することでSSDへの負担は大きく軽減できるだろう。
1万円台の低価格マザーボードには、コスト追求による割り切り仕様なモデルが少なくない。もちろんこの「B660M DS3H AX DDR4」もまた、様々な部分を割り切ってパッケージングした製品だが、全体的にバランス良く妥協できているという印象だ。ミドルレンジの環境を構築する際に最適なパートナーになるであろうCore i5の性能もまた、無理のない範囲で引き出せている。
同価格帯のモデルとしても相応と言える電源周りの冷却は、バランス良い初期設定のまま運用するのであれば、大きな問題にはならない。より安定した動作を目指すのであれば、電源モジュールに風が当たるように工夫するなど、自作ならではのアプローチで改善が狙えるはずだ。
そしてミドルユーザーのニーズを把握した、高水準の搭載機能には設計の妙を感じる。2.5ギガビットLANの高速ネットワークや利便性を高めるWi-Fi 6、さらにヒートシンク付きのM.2スロットといった機能が、バランスよく詰め込まれている。第12世代のCore i5やCore i3をベースに、OC不要かつシングルグラフィックスカード環境のミドルマシンを組むなら、この1枚が無視できない選択肢になってくれるだろう。
協力:GIGABYTE TECHNOLOGY