エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1231
2022.12.21 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
Northの冷却には、オールインワン型水冷ユニット「Lumen S28 RGB」(型番:FD-W-L1-S2802)を用意した。140mmファンを2基ラジエーターに装着する、280mmサイズラジエーターモデルだ。なお360mmサイズラジエーターの「Lumen S36 RGB」(型番:FD-W-L1-S3602)は、以前詳細検証をお届けしているので、是非ご一読頂きたい。
選択肢が少ない280mmサイズラジエーターの「Lumen S28 RGB」(型番:FD-W-L1-S2802)。フロント140mmファン2基の低速・大風量により、冷却能力を高めている |
このサイズのラジエーターがマウントできるのは、フロントパネル裏手のみ。標準装備のカタログモデル「Aspect 14 PWM」2基を外し、Lumen S28 RGB付属の冷却ファン「Aspect 14 RGB PWM」とラジエーターを前面にネジ留めを行う。冷却ファン単体と違い、ネジはフロントパネル側(外側)からドライバーが使えるため、比較的作業はしやすくなった。
Lumen S28 RGBは、ポンプをラジエーターに内蔵するため、ウォーターブロックは高さ43mm(φ67mm)に抑え込まれている。実測で170mmを超えるCPUクーラー有効スペースからすれば、周辺およびCPU上空のクリアランスはかなりの余裕ができている。今回のレビュー対象は左側面がメッシュ仕様のパネルだけに、魅せる要素は控え目ながら、魅せたくなるほどスッキリとした内部の様子は、どことなくスマートなFractalらしさが感じられる。
全ての配線が完了した状態。この後グラフィックスカードが追加されるものの、内部空間が広く確保できている事がお分かり頂けるだろう |
メッシュ仕様の左サイドパネルから見たイルミネーションの様子。強化ガラスとは違う趣きは決して悪くない |
グラフィックスカードの有効スペースは、フロント部に標準装備される140mmファン「Aspect 14 PWM」搭載時で長さ355mmまで。ちなみに「GeForce RTX 4090 Founders Edition」が長さ304mm、「Radeon RX 7900 XTX(リファレンス)」が長さ287mmだけに、ハイエンドクラス帯のグラフィックスカードにも十分対応できる。
今回は搭載検証用にMSI「GeForce RTX 2080 GAMING X TRIO」を使用。外形寸法は長さ327mm、幅140mm、厚さ55.6mm |
ただし本稿では既にフロントパネル部には280mmサイズラジエーターが搭載済み。ラジエーター厚は27mmなので、25mm厚のAspect 14 PWMより+2mm有効スペースが減って353mmという計算になる。
ブリッジレスの拡張スロット2段を使い、グラフィックスカードを固定したところ問題なく搭載は完了。数字上でも有効スペース353mmに対し、長さ327mmのグラフィックスカードで、空きは26mmになる。定規を使い、両者の隙間を正確に計測するにはややスペースが足りないが、目視でも十分にマージンが取れている事が分かる。これで良しとしよう。
Lumen S28 RGBのラジエーターに干渉する事無く、ハイエンドグラフィックスカードがマウント可能。収納力も及第点以上である事が確認できた |
やはり斬新なフロントパネルは、North最大のトピックだろう。素材こそウォールナットまたはオークだけに西洋的なイメージだが、デザインは「和」の要素を強く感じさせる。例えその印象がデザイナーの意図とは異なるものだとしても、これを嫌う人が好む人を上回ることは考えにくい。冒頭1枚目の集合画像を改めて見ると、和風モダンにデザインされたCharcoal BlackとChalk Whiteの筐体は、実に洗練されている。
フロントパネルデザインに目が行きがちだが、実は内部構造も見どころがあった。従来機種をベースにした、”何かのそれ”ではなく、ともすれば複雑になりすぎたきらいのあるFractal上位機種の構造に対し、やや軌道修正がなされたのかもしれない。その答えは次作以降の左サイドパネルを開くまで分からないが、シンプルであるべき所をシンプルにした点は好感が持てる。”現在主流のいいとこ取り”と言えば聞こえが悪いが、その主流のきっかけを作っているのは他ならぬFractalであり、ブラッシュアップされたNorthの内部設計が「これからのお手本のひとつ」になっていくだろう。
Fractal Designとは、確立されたCIを強く感じさせる唯一無二な存在。多くの自作PCパーツメーカーの中でも、一目置かれた存在である事は間違いない。2022年、Fractalの締めくくりは多くの自作派を惹きつけた。2023年もわれわれ自作派を驚かせ、楽しませてくれるはずだ。
協力:Fractal Design
株式会社アスク