エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1404
2024.03.19 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
「MUGEN6 Black Edition」のチェックが一段落したところで、シングルファン構成の「MUGEN6」の冷却性能も簡単にチェックしていこう。CPUはCore i7-14700(PL1/PL2=219W)を使用し、シングルファン仕様でヒートシンクがむき出しになるためサーモグラフィによるチェックも実施している。
Package Powerや動作クロックは「MUGEN6 Black Edition」から変化がないものの、ファンが1基なくなったことでCPU温度は「OCCT 12.1.15」実行時は平均約1℃、「Cinebench 2024」実行時は平均約2℃上昇している。それでも平均温度は80℃半ばに収まり、「MUGEN6」でも冷却性能が不足することはない。
ファンの回転数はやはり最高値の2,000rpm前後まで上昇しているが、ノイズレベルは「MUGEN6」から約2dBA低下し、いずれも38dBAにとどまる。ちなみに、「MUGEN6 Black Edition」からバックパネル側のファンを外した場合でもノイズレベルはほぼ同じだった。
続いてサーモグラフィの結果を確認していこう。なおアイドル時は起動してから10分間放置した際の温度を、高負荷時は「Cinebench 2024:30 minutes(Test Stability)」を実行して20分経過した際の温度を撮影している。
アイドル時のサーモグラフィ |
高負荷時のサーモグラフィ |
アイドル時、高負荷時とも周囲のヒートシンクより明らかにヒートパイプの温度が高く、ヒートパイプ内を熱が移動している事がわかる。さらにヒートシンク温度はソケットから遠くなるに連れて温度が低くなっていく順当な結果になった。
本来であればもう少し早く検証を行いたかったが、あいにく空きスケジュールがなく、今回は力技でねじ込んだ格好でのテストとなってしまった。そんな理由から、デュアルファン仕様「MUGEN6 Black Edition」に重きを置いた内容になっているが、そこはご了承いただきたい。
とは言え、共通ヒートシンクゆえにMUGEN6自体に秘められた冷却性能の根本的な部分は、十分に知ることができた。それは結果が示すように、過去検証を行った同価格帯の既存モデルに比べてもトップクラスの成績を残し、さらに最適化された静圧重視の冷却ファンによる高い静音性が際立つ。サイズS氏の事前情報によると、同社のテストでシングルファンとデュアルファンの性能差は最大で5℃だったらしい。検証環境や機材によるところはあるとは言え、この結果は両者を選択する上で大いに参考になるだろう。
S氏によると「MUGEN6」の金型は「虎徹MARK3」(2023年2月発売)や「FUMA3」(2023年8月発売)よりも早く出来上がっていたそうだ。ただしハンダの量やヒートパイプ、受熱ベースプレートの調整を行ったところ、満足のいく性能が出ない。そこで治具や工具の再設計や工程を分けての単純化、さらにヒートシンク自体の形状変更により、ようやく製品化ができる性能になったと言う。
にわかに空冷の人気が再燃している昨今、性能と売価を競う「タイトルマッチ」のような状況になっている。安価に高性能をチョイスする事は賢い選択で間違いない。ただし「とある製品よりこちらが上」の考えも認めつつ、一方で製品の個性や成り立ち、設計者の意図などを読み解き、自ら好みのモデルを選択する意思と直感で自作PCを楽しみたい。今回の検証でそんな事を思った。
協力:株式会社サイズ