エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.1489
2024.12.25 更新
文:撮影・編集部 松枝 清顕
全高173mmまでのCPUクーラー有効スペースを確保したZ10 DSだが、ここではオールインワン型水冷ユニットを搭載してみる。用意したのはのZALMAN「ALPHA2 A36 BLACK」で、以前ホワイトモデルを詳細検証済み。型番からも分かるようにラジエーターは360mmサイズで、これをトップパネルにマウントしようという試みだ。
まずポンプ一体型ウォーターブロックは全高57.3mm(縦横各73mm)で計測するまでもなく、搭載に問題はない。一方で360mmサイズラジエーターの実際は長さ397mm(幅120mm、厚さ27mm/+冷却ファン25mm)にもなる。
奥行き474mmとされるZ10 DSだが、フロントパネルの厚さがあるため、スチール製シャーシ部は実測で奥行き420mm。この開口部に397mmの冷却ファン+チューブ付きラジエーターを滑り込ませるにはややキツく、フロント内部側に固定されている上段120mmファンがぶつかってしまった。無理矢理押し込む事も考えたが(ちょっとできそう)、ここは一旦上段の120mmファンは取り外す事をオススメしたい。
フロント上段120mmファンが絶妙にぶつかることが判明。回避策は冷却ファンを一度取り外すことだ | 全高57.3mmのウォーターブロックは小振りで筐体内部のエアフローを妨げることがない |
ラジエーターはトップパネルのネジ穴(スリットタイプ)を使い固定。この組み合わせではラジエーター側全てのネジ穴が露出できたため、合計12本のネジでしっかりと固定した。作業後はマグネット着脱式のダストフィルターを装着しておこう。
グラフィックスカードの有効スペースは長さ395mmまで。そこにNVIDIA GeForce RTX 4070 Founders Editionを搭載してみた。全長は約243mmだけに、決して搭載の可否を見極めるためのチョイスではない事は明らか。そもそも395mmもある搭載スペースを目いっぱい使うグラフィックスカードは考えにくい。
なお既に解説したとおり、Z10 DSは標準で垂直設置用ブラケットが装着されているが、ライザーケーブルが別売りとあって、今回は一般的な水平マウントに変更。GeForce RTX 4070 Founders Editionは2スロットを占有するので、付属の拡張スロットブラケット5本で空きスペースを埋めた。
有効スペースの広さから、GeForce RTX 4070 Founders Editionが小さく見えるほど。重量級グラフィックスカードを使用する場合は付属の「VGA Support」を使おう |
グラフィックスカード搭載後の空きスペースは、フロントファンまでが約130mmといったところ。つまりメーカー公称値の395mmは、冷却ファンの25mm厚を含まない数値のようだ。ともあれスペースが十分であるだけに、作業における特筆すべき事項はない。ただし15.6型フルHDディスプレイに映像を出力するにあたり、Video CableとPower Cableを内部から背面に引き回さなければならない。ここはZ10 DS特有の作業になる。
15.6型フルHDディスプレイに映像を映すためには、2本のケーブル接続が必要。いずれも一部がカットされた拡張スロットブラケットを利用し、ケーブルを背面に引き回す |
15.6型フルHDディスプレイに接続されているVideo CableとPower Cableは、ボトムカバー天板のグロメット付きスルーホールから一部がカットされた拡張スロットブラケットを通し、バックパネル側からグラフィックスカードのHDMIコネクタにVideo Cable、マザーボードのUSBポートにPower Cableをそれぞれ接続。これで映像が15.6型フルHDディスプレイに表示されるというワケだ。
注意点として電源ユニットを搭載した状態では、2本のケーブルをボトムカバー天板スルーホールから出すことができない。また拡張スロットブラケットのカット部はコネクタの大きさが考慮されておらずあくまでケーブルの太さだけに、配線後にブラケットをネジ留めする必要がある。
改めて、2023年に開催されたCOMPUTEXの初披露時を振り返ろう。レポートを見ると、ほぼ製品版に見えた展示機だが、実際にはフロントパネルユニットが格子ではなく密閉型だったり、15.6型フルHDディスプレイもD-Subが廃止され、さらに各調整ボタンの種類や配置が違っている。給電方式もUSB Type-CではなくACアダプタ駆動にも見えるし、実は発売まで時間を要したのは思いの外、ああ見えて開発途上段階にあったのかもしれない。
晴れて国内市場では11月より販売がスタートしたワケだが、売価と”特別なギミック”から、そうそう爆発的に大ヒットしているというわけには行かないだろう。ともあれ、唯一無二の斬新なアイデアと遊び心は概ねポジティブに受け入れられている。製品化までやり遂げたZALMANの姿勢はもちろん「○」の判定で異論はない。
15.6型フルHDディスプレイの出来映えはジャッジの対象外だから、最後はPCケースとしての評価だ。試みとしては実にオモシロイだけに尖ったPCケースかと思いきや、実際は極めてオーソドックスな設計だった。
工作精度は一般的なミドルタワーPCケースで、ZALMANが得意とする廉価版PCケースの上位クラスである事は間違いない。ただしトップパネルに360mmサイズラジエーターを収納するには、あと50mm奥行きが欲しい。グラフィックスカードや電源ユニットの有効スペースは十分だけに、プラス50mmは完全にトップパネル用だが、それだけでもっと全体がゆったりとする。
市場想定売価の税込32,800円前後は決して安価ではない。だが普通にミドルタワーPCケースとモバイルディスプレイ分の価格と思えば、おおよそ計算内やや高めといった印象だろう。人によってはここが「×」かもしれないが、選択肢がない現在ではプレミアムな存在である事は考慮すべきだ。外付けにできる2-way仕様である事もお忘れなく。
提供:ZALMAN
株式会社アスク