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|「風神スリム」の細部をくまなくチェックする
このセッションでは「風神スリム」の細部に注目していきたい。120mm口径ファンがヒートシンク部分を覆い隠してしまうため、マザーボードに装着してしまうと、隅々をチェックすることはできない。今のうちに工作精度を含め、じっくり眺めておこう。
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薄型ヒートシンクに4本のヒートパイプを搭載させるため、放熱フィンは巧みにカットされている。ファン側から見ると隠れてしまうヒートシンクだが、背面からじっくり見ていくと、その美しい仕上がりは実にCooler Masterらしい |
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Cooler Masterが“ダイレクトコンタクト”と呼ぶヒートパイプダイレクトタッチ。アルミニウム製受熱ベース部には4本のヒートパイプが等間隔に整然と並ぶ |
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アルミニウム放熱フィンとヒートパイプの接合は、“軟ろう(soldering)”によるもの。CPUクーラーの冷却能力は、この接触具合に大きく左右されることは言うまでもない |
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|受熱ベースとダイレクトコンタクトヒートパイプ
冷却機器を専門としていた時代のCooler Masterは、CPUクーラーにヒートパイプをいち早く採用したメーカーのひとつで、自作市場をあっと驚かせた「GALILEO」(Socket 370/A用)というモデルを記憶している人もいるだろう。ちなみに「GALILEO」は2000年にリリースされている事から、10年以上も前から試行錯誤と改良が重ねられてきた。とは言え、ヒートパイプ自体はさほど進化しておらず、熱移動補助部材であるそれをCPUクーラーでいかに活用するかが最大の課題だった。
CPUクーラーにおける大きな節目となったCPUコア直接触式“ダイレクトタッチ”採用モデルが登場したのは2007年のこと(サントラスト「薙刀」)。以降、現在に至るまで高冷却を謳うモデルの必須ギミックとなっているワケだが、直接触と非接触の冷却性能差は「目覚ましいというほどのレベルではない」という意見も根強く、実際には発展途上の冷却方式という側面がある。CPUやGPUほどのスピードで進化するアイテムでは決してないCPUクーラーだが、今後どのように改良が重ねられていくのだろうか。
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受熱ベースにはCPU接触スペースとリテンション金具固定スペースで段差が付けられている。冷却に重要なCPU接触スペースは正方形に見えて実は38×37mm(実測値)で、1mmの違いがある |
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アルミニウム製受熱ベース部をよく見ると、放熱フィン側の面には高さ3mmの溝が付けられていた。効果のほどは知るよしも無いが、ヒートシンク形状にすることで、僅かでも放熱させようという心意気は十分伝わってくる。ちなみにベース部の最厚部は実測値で約10mmだった |
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|3種類の放熱フィンは合計56枚構成
アルミニウム製放熱フィンに注目すると、「風神スリム」は56枚で構成されていた。さらに限られたスペースで4本のヒートパイプを搭載させているため、カットされた3種類の放熱フィンが組み合わされている。
最も放熱面積が大きい「A」は38枚、張り出したヒートパイプ2本を避けるように山切りされた「B」は9枚、さらに一方に伸びるヒートパイプ2本のカーブに合わせた「C」は9枚だった。
これまで幾度となく触れてきたが、CPUクーラーの冷却能力は放熱面積が重要だ。ただしロープロファイル設計の「風神スリム」は、トップフロー型を採用する事で、CPUソケット周りのコンポーネントに物理的干渉を起こしやすく、むやみに放熱フィンを大きくする事ができない。複雑に曲げられたヒートパイプとソケット周りのスペースを上手に利用し、最大限の設計がなされているというワケだ。
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「風神スリム」を形成する放熱フィンは3種類の“アルミ板”で構成され、合計56枚でひとつのヒートシンクが完成する |
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ヒートシンクのみの高さは公称値44mm。スリム型PCケースの幅は100mm前後が多いため、マザーボードに装着できれば、多くのモデルに搭載できるだろう |
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|全高59mmを実現するための120mm口径薄型ファン
全高59mmを実現するには、ヒートシンクだけでなく搭載ファンもスリム化させなければならない。「風神スリム」では一般的な25mm厚ではなく、15mm厚の120mm口径ファンが搭載されている。
ファンの厚みが薄くなると、インペラ(羽)のカーブ(アール)はつけにくい。つまり風を掻(か)く力が弱いため、十分な風量を得るには羽枚数を増やし、さらに回転数を高速化しなければならない。
「風神スリム」のファンスペックは回転数500〜1,600rpm±10%(PWM)のワイドレンジ仕様。最大回転数が2,000rpmに届かないところは静音性を確保したかった設計者の想いが伝わる点だが、風量は最大58.4CFM±10%と意外にも多い。15mm厚でこの最大風量が確保できているのは、インペラ形状に秘密がある。
Cooler Masterがあまりアピールしてこなかったので、敢えて触れておくと、「風神スリム」で使用されているオリジナルファンは、13枚で構成され、さらに羽デザインは独特の“カーブとひねり”が加えられている。半透明の羽は、15mm厚の限られたスペースで風量を得るために独自のカーブを付けることで、より多くの風をつかみ、放熱フィン側へ押しだそうという設計がなされているワケだ。
ちなみに騒音値を数字上だけで確認しておくと公称値は8〜30dBAとされ、日常生活音では拾うことができない最小数値から、静音と呼べる及第値までの間、負荷状況によって自動的に可変する。
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高さ59mmに押さえ込むにはヒートシンク厚だけでなく、搭載ファンの厚さも重要。「風神スリム」では、一般的な25mm厚ではなく15mm厚を採用。インペラ形状はアール(カーブ)が稼ぎにくい点を補う独自のカーブが設けられ、羽枚数は13枚と多い |
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120mm口径ファンは近頃のCPUクーラーの大半が採用するワイヤークリップ式でヒートシンクに固定されている。ちなみにファンフレームはヒートシンク側の穴に引っ掛けるタイプである事から、リブ無しの120mm口径ファンなら25mm厚に換装することもできる |
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