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|「風神スリム」テストセッション
次に騒音値とファン回転数を見ていこう。両者は表裏一体の関係にある事から、テスト結果を見た上で解説しよう。
■騒音値テスト
■ファン回転数テスト
まず騒音値だが、室内騒音値29.8dBA環境で、アイドル時34.4dBA、高負荷時36.5dBA(上昇値2.1dBA)となった。メーカー公表値はあくまで無響音室や計算値での数値となるため、目安程度にしかならない事は言うまでもない。実際に聞こえる動作音は、アイドル時は極めて静かであり、高負荷時でも耳障りに聞こえる事はなかった。
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「風神スリム」に搭載される120mm口径15mm厚ファンはなかなかの実力者 |
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ただし今回のテストでは、室内温度が低く(14.9℃)、さらにCPUもTDP100W以下である事から、ファン回転数の上昇もアイドル時の705rpmから高負荷時の1,192rpm(上昇値487rpm)と低めに推移しており、公称値の最大1,600rpmには408rpmの余力が残されている。この分が騒音値にどのように影響するかがポイントになるだろう。本稿では定格動作が基本になるため、5回のテスト中、1,200rpmを超す事は一度もなかった。そこで試しに4.5GHz程度までオーバークロックし、ファンの動作をチェックしてみたが、1,300rpm台程度でこれ以上回転数は上昇しない。PWMはCPU温度が安定していれば、それだけファンの回転が抑えられる。これを素直に考えれば「風神スリム」の冷却能力により、高い回転数を必要とせずに冷却できるという事になるだろう。
ちなみに搭載ファンは特殊なブレード形状が功を奏し、15mm厚でありながら、なかなか力強く風を押し出してくれる。これまでブレードギミックは“見かけ倒し”が多かったが、このモデルはなかなかの実力者だった。
なお現時点発売時期は未定ながら、「風神スリム」搭載ファンの単体発売が予定されているという。選択肢の少ない15mm厚とあって、注目の製品になる可能性は高い。
■ポイント別温度計測
(1) |
(2) |
(3) |
(4) |
(5) |
(6) |
19.2℃ |
20.8℃ |
18.4℃ |
18.6℃ |
23.8℃ |
23.2℃ |
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テストセッションの最後は、ヒートシンクのポイント別温度計測をみていこう。計測は「OCCT 4.1.0」高負荷状態で、非接触型デジタル温度計を使用している。
計測ポイント6カ所中、最大温度は(5)の23.8℃、次にCPUに接触する受熱ベースの上部(6)の23.2℃となった。高負荷状態でもCPU温度は平均値40℃台後半であることから、飛び抜けて高い値は計測されず、冷却ファン接触面の(1)〜(4)は平均値19.2℃だった。計測した室内温度が低かった点はある程度考慮しなければならないが、ロープロファイル設計のCPUクーラーとしては良好な数値といえるだろう。
|ロープロファイル設計を思わせないテスト結果は秀逸
ロープロファイルサイズCPUクーラーの存在意義は、もちろん小型PCケースの需要に応える点にある。搭載スペースに余裕があるミドルタワー以上のPCケースに、わざわざこれを選択する人はいないだろう。つまり一般的CPUクーラーと違い、高冷却を求めるよりも、“このケースに入るサイズのCPUクーラーがほしい”という要求が優先されるのではないだろうか。
これまで選択肢の限られた小型CPUクーラーは、“入ればいいが本望”という側面があった。しかしMicroATX以下のスモールフォームファクタは、一頃に比べ高性能化が進み、現在は“Mini-ITXはVIAしか無い”という時代ではない。ATXフォームファクタと同等のPCを簡単に組むことができるようになり、その選択肢は多い。
需要の高まりにつれ、小型PCケース向けのCPUクーラーもそれなりに高性能が要求される今、やみくもに高回転ファンを載せた力任せの冷却では飽き足らず、ヒートパイプを巧みに搭載させ、いかに効率よくCPUの熱を下げるかが課題となっている。
「風神スリム」もその流れを汲んだ、小型高性能CPUクーラーに仕上げられていた。ロープロファイルサイズを思わせないテスト結果は秀逸で、検証に使用したCore i5-2500Kでは、まったく不安が無かった。
ただしひとつ付け加えると、ケース内部のエアフローが劣るスモールフォームファクタでは、CPUクーラー周りの温度により、冷却能力に影響が出てしまうはずだ。外気温が上がる夏場では、どのような挙動をみせるのだろうか。機会があれば是非もう一度テストをしてみたいと思う。
【静音性】 4.5ポイント
今回のテスト機材構成では、十分に静音性は保たれた。ファン回転数も公称値最大1,600rpmに達すること無く、静かに冷却を続ける。特殊な形状をしたファンブレードも大きな風切り音も出さず、力強い風をヒートシンクに送り込む。検証では満点に近いジャッジながら、最大回転数に達するような使い方や外気温上昇時などの挙動は未知数という事で、4.5ポイントとした。
【冷却性能】 4.5ポイント
CPUコア平均値で最大46.5℃は十分な冷却能力があると見ていい。「風神スリム」の冷却設計は、CPUからの熱を放熱フィンに“素早く”移動させ、薄型設計により蓄積容量が少ない分、静圧の高いファンにより“素早く”冷却させる。冷却はこれら基本となる一連の作業を、いかに“素早く”行うかに尽きる。これを忠実に守るからこそ「風神スリム」はロープロファイル設計ながら、クラス上位の冷却能力を実現しているワケだ。さらに「風神スリム」では、ヒートシンクデザインもさること、それ以上に搭載ファンがいい。恐らく「風神スリム」は、15mm厚120mm口径のファンが最も良い仕事をしているのではないかと思う。
【取り付け易さ】 5.0ポイント
取り付け方法は文句なしで満点。今回はIntel系でのテストだったが、AMD系でも作業工程は簡素化されており、作業に迷う事はないだろう。装着感もバックプレートによるネジ留め式であることから、非常にガッチリしており、剛性も高い。
【コストパフォーマンス】 4.5ポイント
ロープロファイルサイズのCPUクーラーとして見た場合、同一コンセプトの製品では3,000円台前半で売られているモデルも存在することから、メーカーが定める市場想定売価の税込4,000円はギリギリ妥当。ただしCooler Masterらしい工作精度と、冷却性能を考えれば、これ以上を望んではいけない。一般的なCPUクーラーに比べてターゲットが絞られるだけに、大量生産によるコストダウンはあまり期待できない事を考慮したい。 |
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Cooler Master 「風神スリム」総合評価 |
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機材協力:Cooler Master
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