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|DDR3 Black Dragonシリーズを試しみる
今回、GeILの協力により「DDR3のBlack Dragon」を借用することができたので、その性能をチェックしてみたい。
その前に、メモリの性能を引き出すためのチェックポイントを挙げておこう。DDR3では現在、チップセット側が規定する最大クロックは1333MHzであり、DDR3-1333/PC3-10600が、規格上の上限となる。これを超えるメモリはすべて、オーバークロック扱いとなる。よって、オーバークロック対応メモリを生かすには、マザーボード側でDDR-1333を超える設定が可能というのが前提条件となる。よほど安価なマザーボードでもない限り、メモリのオーバークロック設定は持っているが、どこまで細かい設定ができるかは、メーカーや製品ごとに異なる点には注意が必要だ。
そこで今回用意したのは、ASUSTeKのハイエンド・ゲーマー向けシリーズ「R.O.G」に属するマザーボード「Maximus III Extreme」だ。チップセットにIntel P55 Expressを採用し、LGA1156のCPUに対応するマザーボードとして、最上位となるモデルだ。
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「Maximus III Extreme」の実売価格は、4万2000円前後と高価だが、同社のハイエンドを冠する製品だけに、機能、スペック、品質、どれをとっても一級品となっている。 |
機材協力:
ASUSTeK Computer Inc.(http://www.asus.co.jp/) |
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このマザーボードの特徴として、まず挙げられるのが赤いPCI Express 2.0 x16スロットだろう。全部で5本用意され、5本すべてにグラフィックスカードを挿す場合は、すべてx8モードで動作させることができる。x16モードでは、最大で3スロットまでOKとなる。それほどグラフィックスカードを挿すことは稀だろうが、昨今では、このような製品が減ってきているため、3-way以上を目指すユーザーにとって、貴重な選択肢となる。
5本すべてをx8モードで動作可能にしているのは、大きなヒートシンクの下に存在している、PCI Expressブリッジ「nForce 200」によるものだ。ATI CrossFireXに加え、NVIDIA SLIをサポートしているため、ATI Radeonシリーズ、GeForceシリーズどちらでもマルチGPU構成を構築可能だ。ATI CorssFireXでは4-way、SLIは3-wayに対応している。
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赤い5本のPCI Expressスロットを備える |
大きなヒートシンクのP55 Expressチップセットがある |
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中央にあるヒートシンクの下にnForce 200がレイアウイトされている。ヒートパイプを装備しているため、nForce 200の熱は下の大きなヒートシンク、またはVRD側にあるヒートシンクで放熱される仕組みだ |
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さて肝心なメモリ回りだが、オーバークロックにより最大でDDR3-2200まで設定が可能だ。メモリ容量は最大で16GBまでとなる。またASUSならではの機能として、「GOボタン」(MemOK!ボタン)を備えている。従来ではMemOK!と呼ばれていたが、本マザーボードでは、GOボタンと名称が変わりつつ、動作は同じ。このボタンを押して起動することで、メモリ相性による起動不能を可能な限り回避してくれる。具体的には、タイミング設定幾つか試しながら自動的に起動を試みる機能であり、もしメモリ相性かな?と思ったら試すといいだろう。
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GO Buttonと書かれたボタンは、従来のMem OK!と同じ役目を果たしている。メモリ相性かな?と思ったら試してみよう |
メモリスロットは4本で、最大で4GB×4本=16GBまでサポートしている。16GB搭載する場合は、64bitOSを使いたいところ |
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さて実際にメモリのオーバークロックを行うには、BIOS画面より操作する必要があるのだが、方法はいろいろある。ポピュラーなのはそのまま、「DRAM Frequency」より、メモリクロックをダイレクトに設定する方法だ。
この方法では、基本的にベースクロックに対して4つの選択肢が提示され、その中から選ぶことになる。例えばCore i5-750を使用した場合、ベースクロックは133MHzとなるため、AUTO/DDR3-800/DDR3-1066/DDR3-1333を選択することが可能だ。
このままでは、最大でもDDR3-1333と、通常の設定しかできないのだが、ここからCPUのベースクロックを引き上げることで、メモリクロックも比例して上がっていく。しかし、この方法ではいちいちベースクロックを少しずつあげてメモリクロックの設定を探ることになるため、少々面倒だ。
そこで活用するのが「Memory Level UP」という項目だ。前述したCore i5-750を使用した場合、提示させる選択肢は、AUTO/1600/1800/1866/2000/2133/2200となり、最大でDDR3-2200まで設定が可能となる。例えば、ここでDDR3-1600を選択すると、CPUベースクロックと倍率が自動で設定される。DDR3-1600を選択した場合、ベースクロック160MHz、倍率17倍となりCPUクロックは2.72GHzとCPUもややオーバークロックされることになる。Core i5-750は比較的オーバークロック耐性が高いため、2.72GHzくらいは大抵の場合、問題なく動作するだろう。もちろん動作に不安がある場合は、より強力なCPUクーラーの装着しよう。
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Memory Level Upでは、このような選択肢が表示される |
Memory Level Upで、DDR3-1600を選択するとCPUのベースクロックと倍率が自動的に選択される |
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なお当然ながらオーバークロックとなるためメモリ以上にCPUの、いわゆるアタリ、ハズレがモノを言うことになる点だけは、覚えておきたい。また当然ながらオーバークロック設定に当たっては、自己責任となり、筆者および編集部、メーカーはその責任を一切負わないので、くれぐれも注意されたし。
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当然ながらメモリタイミングも細かく変更となっているが、通常は「AUTO」のままで問題ない。Memory Level Upなどを使ってメモリのオーバークロックをした場合、ここのタイミング設定も自動的に変更されるからだ |
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今回は、一般的なDDR3-1333設定と、Black Dragonの最高クロックである、DDR3-1600設定をし、どのくらいパフォーマンスが変わるかをチェックしてみた。
|早速テスト開始 - GeIL Black Dragonシリーズを試す -
テストに用意した機材は、前述したものを含めて以下のとおり。
【テスト使用機材】
CPU:Intel Core i7-750/2.66GHz
Memory:GeIL Black Dragon GB34GB1600C9DC(2GB×2枚、DDR3-1600/CL9)
Mother:ASUS Maximus III Extreme (Intel P55 Express)
VGA:ASUS EAH5850/2DIS/1GD5
OS:Windows 7 Ultimate 64bit |
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今回、ビデオカードには、同じASUS製の「EAH5850/2DIS/1GD5」を使用した。GPUに「ATI Radeon HD 5850」を搭載し、GDDR5メモリを1GB搭載するハイエンドグラフィックスカードだ。現在、本製品は終息し後継となる「
EAH5850 DirectCU/2DIS/1GD5」が流通している |
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Black Dragonの品質の高さは、残念ながら短時間のテストで証明することは難しいため、ここでは一般的なベンチマークを使って、DDR3-1333とDDR3-1600にて、どのくらい差が出るのかをチェックしてみたい。
テストにあたっては、DDR3-1600時は、マザーボードの“Memory Level Up機能”を使って設定を行った。それぞれの設定は下記のとおり。
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DDR 1333 |
DDR 1600 |
Clock |
1333MHz |
1600MHz |
CL |
7 |
9 |
tRCD |
7 |
9 |
tRP |
7 |
9 |
tRAS |
24 |
24 |
tRFC |
60 |
73 |
CPU Base Clock |
133MHz |
160MHz |
CPU Clock |
2.66GHz |
2.72GHz |
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まずは定番の「3DMark06」の“CPU TEST”から見ていこう。
「3DMark06」のCPUテストでは、解像度が640×480ドットに固定され、グラフィックスカードによる性能差を極力排除している。そのため純粋にCPU性能(スレッド処理)に重点が置かれているのだが、このとき、メモリパフォーマンスも影響する。このテストで見えてくるのは、AIキャラクタが多数登場するような昨今のリアルタイムシュミレーションゲームで、どれだけパフォーマンスアップが望めるか、という点だ。
その差は“CPU Score”でおよそ3%、フレームレート比較となる“CPU TEST1/TEST2”でも3%程度の差がついた。CPUクロックが2.66GHzと2.72GHzとなるため、その差は2%ほど。つまり残り1%をメモリのオーバークロックにより引き出したことになる。
3DMark06 CPU Score |
DDR1600 |
4324 |
DDR1333 |
4182 |
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3DMark06 CPU TEST1/TEST2 |
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DDR1333 |
DDR1600 |
CPU TEST1 |
1.371 |
1.417 |
CPU TEST2 |
2.041 |
2.111 |
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続いて「3DMark Vantage」でのCPUスコアを見ていこう。
「3DMark Vantage」のCPUテストでは、CPUの並列処理に、より重点が置かれている。また、物理エンジンとしてPhysXが使われており、CPUにより物理演算もシュミレートされる点が、「3DMark06」と大きく異なっている。
ただし、NIVIDA製のグラフィックスカードでは、PhysXによるアクセラレートが掛かってしまい、メモリパフォーマンスを見るには向かないため、今回はATI Radeon HD 5850を使用した次第。
その結果だが、DDR3-1333とDDR3-1600の差は、2%ほどとなりCPUクロックの差とほぼ同一。“CPU TEST1”も2%ほどだが、“CPU TEST2”では3%の差が現れ、メモリオーバークロックの恩恵が出ている。
3DMark Vantage CPU Score |
DDR1600 |
12706 |
DDR1333 |
12421 |
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3DMark Vantage TEST1/TEST2 |
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DDR1333 |
DDR1600 |
CPU TEST1 |
1757.72 |
1792.87 |
CPU TEST2 |
15.49 |
15.99 |
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続いて、メモリの転送帯域を見てみよう。
ベンチマークに使用したのは、「Sandra 2010」の“Memory Bandwidth Benchmark”だ。
DDR3-1333の帯域は、17GB/secだが、DDR3-1600では19.7GB/secとなり、14%ほど高速化しているのが分かる。メモリクロックの差は17%ほどなので、まずまずといった所だろう。
もう一つベンチマークを実行してみた。同じく「Sandara 2010」の“Memory Latancy Benchmark”だ。
こちらは、メモリアクセスサイクルが、どのくらいで終わるかを計測するもので、数値が小さいほどレテンシ(遅延)がなく、高速ということになる。その結果は、DDR3-1333が76ns、DDR3-1600が67nsとなり、12%の高速化を果たしている。
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型番:GB34GB1600C9DC
製品名:PC3 12800 2x2GB CL9
容量:4GB(2GB×2枚セット)
規格:PC3 12800 1600MHz
レイテンシ:CL9
電圧:1.6V
メモリ基板:8層
実勢価格(2010年4月現在)
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税込14,000円前後 |
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