「エルミタ的速攻撮って出しレビュー」
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エルミタ的速攻撮って出しレビューVol.20 「RAVEN 2」(SST-RV02B-W)を徹底チェック
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「RAVEN 2」実際に組み込んでみる
●内部すっきりのケーブルマネジメント。しかし「ご利用はご計画的に」
近頃リリースされるケースでは、マザーボードトレイ背面ケーブル配線レイアウトが採用される事が多い。「RAVEN 2」でも随所に背面取り回し用ホールが用意されており、ケースのメインスペースをスマートに整頓する事ができる。さらに本来の目的である内部のエアフロー改善にも大きな効果が見込めるだろう。さらに微振動音の原因や逆に配線の邪魔になってしまう事があるプラスチック製のケーブルフック等は装備されておらず、若干の個人差はあるものの必要と思うユーザーが別途用意すれば良い。
またこのケースでは、タイラップやワイヤーでケーブルを束ねることができる穴も随所に用意されており、自作時にたいへん重宝した。これは想像でしかない事ながら、
自作経験が豊富な人物が設計したケースであるように思えてならない。
ケーブルマネジメントホールは、マザーボードトレイ各所に装備されている。仮組みの状態でケーブルの取り回しを決めておくことで、これらは有効に威力を発揮するが、ここを怠ると何度も配線をし直す事になる。分かってはいても、毎回どこかでミスをするのはご愛敬
このケース特有ではなく、このケーブルマネジメントを採用する全てのモデルに言える事だが、調子に乗ってマザーボードトレイ裏にケーブルをどんどん追いやると今度はサイドパネルが装着できなくなる事がある。経験済みの方も多いと想像するこの“押し込み過ぎ”だが、「RAVEN 2」でもそこは考慮に入れなければいけない。
特にハイエンド構成で、内部パーツが多くなればなるほどケーブルはそれに比例して煩雑になりがちとなるが、たとえばノイズ防止対策が施された直径の太い電源ケーブルなどは、縦に重なるように結束する事で、とたんにサイドパネルに干渉し、装着ができなくなる。「RAVEN 2」のマザーボードトレイとサイドパネルの隙間は実測値で約7mm。ちなみに今回使用した電源ユニットの24pinメインケーブルの直径は約10mmを超え、背面引き回しは物理的に不可能であった。せっかくのギミックは最大限有効に使いたい所だが
、「ご利用はご計画的に」
である。
マザーボードトレイ背面。ケーブルマネジメントホールはケース内部のエアフロー改善やファンへのケーブル巻き込み等の回避に重宝する。ただしサイドパネルとマザーボードトレイの隙間は実測値で約7mm。
●非着脱式電源ユニット搭載には注意が必要
「RAVEN 2」は大型筐体に分類される。内部容積が広くハイエンド構成でも楽々組み込むことができる。ただし1点注意が必要なのは、電源ユニットだ。現在ケーブル着脱式のモデルが多く、必要なケーブルだけを使用することでケーブルマネジメントには有利となるが、この
ケースで非着脱式電源を使用した場合余ったケーブルの行き場に少々苦労するかもしれない
。
これはボトム部の有効面積ほぼ全体が吸気ファンになっているためで、これを妨げる可能性が非常に高い。マザーボードトレイ裏に追いやる事も考えられるが、前述通りその隙間も限られており、お世辞にも現実的とは言えず、最良のエアフロー環境が構築できる事が最大のポイントとなるケーブル着脱式電源ユニットは、このケースでは大いにその威力が発揮される事になる。是非これを選びたい。
非着脱式電源ユニットの場合、余ったケーブルを束ねたとしてもその置き場に困る事になる。高エアフローと引き替えに、ボトム部すべての面積がファン排気部に当たり、せっかくの風量を落とすことになりかねない。「RAVEN 2」では着脱式を選ぶのがベストだろう
組み込み後の背面画像。各所に用意されたケーブルマネジメントホールやタイラップやワイヤーでケーブルを束ねることができる穴は非常に重宝し、この通りスッキリ。あとはSSDにケーブルを接続するのみ
●ケース内部の有効スペースを実測する
今回使用したパーツは以下通り。これを組み込んだ状態で、ケース内部の有効スペースを実測してみたのが下の画像となる。
テスト使用パーツ構成
CPU
Intel Core i5-750(Lynnfield LGA1156)
マザーボード
GIGABYTE GA-P55-UD6 (Intel P55 Express)
グラフィックスカード
GIGABYTE GV-N275UD-896I x2(SLI構成)
メモリ
UMAX Cetus DCDDR3-4GB-1600OC
電源ユニット
SilverStone SST-ST1500(1500W)
CPUクーラー
リテールクーラー(トップフロータイプ)
HDD
Seageta 500GB 7200rpm(SATA接続) x3
光学ドライブ
LG DVDスーパーマルチドライブ(PATA)
SSD
OCZ Vertex Series OCZSSD2-1VTX120G
ケース内部有効スペース計測
@横幅(最大値)
440mm
ドライブベイからリア部まで
A横幅
360mm
ドライブベイから電源ユニットまで
B縦幅
310mm
拡張スロット端から180mmファン部まで
C縦幅
330mm
120mmファン部から180mmファン部まで
今回はLynnfieldにP55 Expressというイマドキの組み合わせに、GeForce GTX275のSLI構成で組み込みを行った。見慣れない90度マザーボードレイアウトに当初違和感を覚えたが、なかなか説得力のあるものである事が分かる。
そのひとつに内部有効スペースが挙げられ、この構成でもまだまだ空間の余裕が感じられる。
この余裕こそが、内部エアフローには大きくプラスに働くことは言うまでもなく
、組み込みのし易さにも繋がっている。ちなみに今回用いたグラフィックスカードGIGABYTE「
GV-N275UD-896I
」のボード長は公称値266mmで、180mmボトムファンまでの距離は44mmの余裕がある。なお先に発売されたリファレンス仕様のRadeon HD5870は約280mmなので、ボトムファンまでは30mmとなり、十分対応する事が分かる。
さらに電源ユニット搭載スペースだが、こちらも330mmをフルに活用できるため、かなり長い奥行きサイズのモデルを余裕で搭載させる事ができる。今回使用した「SST-ST1500」は奥行き220mmのヘビークラスだが、ご覧のようにまだかなりの空きスペースがある事が分かるだろう。
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「RAVEN 2」理想的なエアフローレイアウトは恐らくクラス最強
●風速計を用いてエアフローを数値でチェックする
ここからは簡易風速計を用いて、ケース内部で起こる実際のエアフロー構造をチェックしてみたい。この特殊とも言える90度マザーボードレイアウト最大の恩恵である内部エアフローレイアウトは、想像通りにその役割を果たしているのか非常に興味深いものだ。
なお今回のテストに用いた簡易風速計は、以前レビューにも登場した主にスポーツやレジャー等で使用する、どこでも手に入るタイプのものを用意した。これはいわゆる取引証明目的では使用ができない風速計で、あくまで計測箇所の風量の違いを知るためだけの物である。数値は0.0m/sec〜計測が可能で、本体内蔵されているプロペラが回転し、その速度を測ろうというものだ。その意図をご理解頂いた上で、数値を参考にして頂きたい。
風量計を用いた内部エアフロー計測
180mmボトムファン
吸気部
0.2m/sec
180mmボトムファン
排気部
M:2.5m/sec L:1.6m/sec
メモリ部
ボトム面
M:1.0m/sec L:0.6m/sec
120mmトップファン
吸気部
0.4m/sec
120mmトップファン
排気部
2.7m/sec
●90度マザーボードレイアウトはグラフィックスカードとメモリには効果大
何度も言うように、「RAVEN 2」はその90度マザーボードレイアウト採用によるエアフローレイアウトが最大のポイントだ。実際に内部の風の流れを確認すると、180mmボトムファンは回転をM(1,000rpm)で動作させると風切り音が出るものの、うるさく感じる事はない。L(700rpm)に至っては静音ファンと十分に言えるレベルとなっている。また風量に関しては、吸気は微量ながら、排気はMで2.5m/secとなり、ケース内部に十分な外気を取り入れることが出来ている。
また、3基の180mmボトムファンはそれぞれ各セクション向けに風を送り込み、いずれもロスが少ない印象を強く持つことができた。ハードディスクセクションは縦搭載HDDレイアウトのおかげで3台共に直接風が感じられ、CPUセクションでは特にメモリ部の冷却に有効である事が判った。なおCPUクーラーへの恩恵だが、実際にボトムファンの効果は風量で感じることはできなかった。これは直下にメモリヒートシンクが風を遮っている事と、トップフロータイプのCPUクーラーからくる排気の影響が挙げられる。今回は都合上サイドフロータイプのCPUクーラーテストは行わなかったが、上下方向にCPUクーラーをレイアウトすれば、さらに
ストレートなエアフロー環境が構築できる事だろう
。
筆者絶賛のメモリヒートシンク部へのエアフロー構造。櫛状のヒートスプレッダが搭載されたメモリモジュールには非常に理想的な形で180mmボトムファンからの風を受けることができていた。ケース選びはメモリ選びにも通じる事が分かるだろう
一方グラフィックスカードもこの恩恵を受けている。ファンに対して垂直となる拡張カード類は少々大げさに言えば理論上整流効果をもたらし、グラフィックスカード冷却ファン吸気部まで外気を送り込む事ができる。製造プロセスの改善により消費電力はこれ以上に上がらない事を祈るばかりだが、このエアフローを採用する限り、まだまだ余裕があるように感じる。機会があれば是非グラフィックスカードの温度変化等もテストしたい。
●マイナス点も指摘。実際にやってみなければ解らないこと
90度マザーボード搭載レイアウトと称される「RAVEN 2」の“看板機構”には思わぬ事件が起きた。このレイアウトを採用する事で、電源ケーブル、モニタケーブル、入力デバイスのケーブルなど全てがトップ面に挿す事になる。これを採用する事のメリットは、通常リアに挿すケーブルが無いため、設置する場合に壁ギリギリまで本体を押し込むことが出来る(ただし、電源ユニットの吸気部は残す必要アリ)。奥行きの長いPCケースなだけに、これは重宝するのだが、グラフィックスカード出力でDVI→D-Sub 15ピンのアナログ出力変換アダプタを装着するとトップカバーが閉まらなくなってしまった。無理にテンションをかければどうにかなるかもしれないが、実用の範囲からは逸脱する。今やデジタル環境が大多数になり、ここは割り切りとされている部分なのかもしれない。
「RAVEN 2」の90度マザーボード搭載レイアウトで思わぬ自体に。若干極端な画像とはいえ、DVI→D-Sub 15ピン変換アダプタを装着すると高さが増す分、トップパネルが装着できなくなってしまった 。時代は完全にデジタル時代と痛感
次は「RAVEN 2」を販売する秋葉原のPCパーツショップにお邪魔し、ユーザー反応等を聞いてみることにする。さらにSilverStoneのケース担当で、「RAVEN 2」開発チームのTony Ou氏に「RAVEN 2」にまつわるポイントを直接尋ねてみる事にしよう。なかなか興味深いお話を伺うことができた。
<次のページに続く>
「RAVEN 2」とは?
基本スペックチェック/誕生までを振り返る/SilverStoneの自信作「RAVEN 2」登場
細部を徹底チェック
エクステリアチェック/内部ディテールチェック/内部ディテールチェック(ドライブベイ編)/強力なエアフロー機構をチェックする
組込を試みる
実際に組み込んでみる/風速計を用いてエアフローを数値でチェックする
聞いてみる
秋葉原PCパーツショップに聞く/SilverStone開発チーム担当者インタビュー
今回テストに使用した主なパーツ
Intel Core i5-750
GIGABYTE GA-P55-UD6
GIGABYTE GV-N275UD-896I
UMAX Cetus DCDDR3-4GB-1600OC
SilverStone SST-ST1500
OCZ Vertex Series SATA II 2.5" SSD
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