エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.658
2018.05.18 更新
文:エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
5月3日付けプレスリリースで一報をお伝えしたが、Noctuaの次世代汎用120mm口径ファン「NF-A12x25」シリーズの出荷がようやく始まった。
どれほど「ようやく」かと言えば、実に4年以上の開発期間を費やしたという。もちろん始業から終業までの間、休むこと無くつきっきりという事はあるまいが、たびたび登場するNoctuaのプロフェッサーことJakob Dellinger氏ならやりかねない。
「NF-A12x25」シリーズ(Noctua) |
ちなみにもうすぐ「COMPUTEX TAIPEI 2018」が開催される(6月5日~9日)。今年もNoctuaはブースを構え、一貫して変更しないブラウン基調のディスプレイでわれわれ関係者や一般来場者を出迎える事だろう。(台湾の製造パートナーであるKolink Internationalとしての出展)当然エルミタも取材に入るワケだが、主要メーカーの場合、事前にブースに向かう日時が決まっている。それは予約制のようなもので、担当者は個別に時間を割き1年間の成果を”発表”する。
Noctuaの頭脳にして開発を担当するJakob Dellinger氏。オーストリアのオフィスにこもり、空冷に全精力を注ぐ日々 |
Noctuaの頭脳であるJakob氏は、開発中の製品を手にし、時にはメモ用紙にボールペンで何やら書き上げ「自分達は何をし、今何を考えているのか」について熱く語る。これを開催期間に組まれたスケジュール通り、各メディアに同一のトーンで繰り返し熱弁をふるうのかと思うと、1つの汎用120mm口径ファンの開発に、妥協することなく時間を掛ける事になんら違和感はない。Noctuaにとって、当たり前の仕事をしているに過ぎないのだ。
「NF-A12x25」シリーズのプロジェクトの立ち上げは、2012年まで遡る。そして紆余曲折を経た後、開発コードネーム「Next generation 120mm A-series Fan」のプロトタイプは、2015年開催の「COMPUTEX TAIPEI 2015」で初めて公に披露された。
当時のブースレポートを振り返ると、Jakob氏が手にするプロトタイプはいつ販売が開始されても不思議ではない、完成されたものに見えた。しかしここからが苦労の連続だった。
「COMPUTEX TAIPEI 2015」の時点、2015年末が販売開始目標に据えられていた |
「Next generation 120mm A-series Fan」最大の特徴は、エアフローの損失を極限まで減らすこと。具体的にはフレームとインペラ(ブレード)の隙間を従来の1.5mmから0.5mmに縮めれば、同一口径でも高い風量が得られるという考えだ。これは単なる理想ではなく、客観的具体的な数値で表されている。完成すれば、今後リリースされるNoctua製空冷クーラーに搭載できるため、効率的かつより高いレベルでの冷却能力が得られるようになる。
2015年に示された「Next generation 120mm A-series Fan」の優位性。詳細についてはブースレポートに詳しい |
しかし製造ラインにおける品質管理等の課題をクリアできた段階で、回転時に発生する”遠心力によるインペラの膨張”という壁が待ち受けていた。この難問は従来素材の特性によるもので、継続使用を断念。さらに開発期間を費やし超硬質素材「Sterrox LCP」を完成させる。硬質かつ軽量な新素材は、回転時の振動が軽減され、中心軸からぶれること無く精密に回転を続ける事に成功。ようやく量産体制に漕ぎつけた。
超硬質素材「Sterrox LCP」の開発でようやく「Next generation 120mm A-series Fan」が完成。製品名「NF-A12x25」が誕生する |
完成した「NF-A12x25」シリーズは、CPUクーラーの搭載に向くPWM対応の「NF-A12x25 PWM」をはじめ、3pin固定回転の標準モデル「NF-A12x25 FLX」、さらに超静音モデル「NF-A12x25 ULN」の3モデルをラインナップ。今後発売されるNoctuaがこだわり続ける空冷クーラーの多くに搭載される事になるだろう。